MY HERO③

晃の記憶が戻ったのはあの事故から3ヶ月後だった。

記憶喪失だった頃の記憶は無くなり前の晃が戻った。

修学旅行行く前に晃が足を滑らせて軽い脳震盪を起こしたので晃は行けなかったと言う事にした。

俺も心配だから行くのを辞めたと言ったら晃は…。

「僕の事は気にしないで行けば良かったのに。でも…心配してくれてありがとな。」

晃は笑ってそう言った。

もう1人の俺は晃の前には出なかった。

毎日俺が寝た後に出て来て夜の街を徘徊し不良とかを殴って遊んでいる。

夜の神社で白玉を抱き締めていた時、あの男が俺ほ前に現れた。

「ヤァ…あの日以来だなぁ。」

「ッ!?お前、あの日の…。」

月明かりに照らされた男は不気味の笑みを浮かべた。

「お前暴れてるんだって?いい感じになってるなぁ。」

「お前が俺に何かしたんだろ!!!」

白玉を地面に置き、男に殴り掛かろうとした。

男は俺の攻撃を避け、頭を掴み地面に強く叩き付けた。

「眠ってろ。もう1人のお前に用があんだよ。」

俺は意識を失った。

目を開けると白玉が無残な姿で倒れていた。

「嘘だろ…。俺が…俺が白玉を殺したのか…。」

冷たくなった白玉は何度名前を呼んでも返事は無い。

ガイと名乗った男はこの世界を壊したいと言っていた。

記憶が曖昧だが死後の世界の話をしていた。

そしてガイの従者になると言っていた。

あの男が世界を変える力があるとするとなら…。

ガイはもう1人の俺の事を気に入っている。

俺はそれを利用してやる…。

その日から俺の計画が始まった。

中学2年の頃にMADAのサイトを作れと命令されもう1人の俺に成りすましていた。

この頃から時々もう1人の俺に成りすましている事がある。

ガイはそれに気付いていない。

ガイが赤い杖を出し杖の事を熱く語っていた。

聞いていると世界の仕組みを変えれるらしい。

あの杖をガイから奪えば…。

ガイの存在を無くして晃を落としたアイツ等を消してこの世界の仕組みをリセットさせる。

もう少しの我慢だ…。

もう少しで俺の望みが叶う。

高校一年になり俺は晃と同じクラスになった。

部活も一緒で俺の生活は充実していた。

ガイがとんでもない事を言い出した。

この時も俺はもう1人の俺に成りすましていた。

「星ー♪次の満月に決行するよ。」

「何を?」

「死後の世界に行く事だよ♪前にも説明したよね?」

「あぁ。」

「宜しくね♪」

そう言ってガイは消えた。

MADAのサイトを作っている時にガイが死後の世界の生き方を俺に教えてくれた。

つまり俺は3日後に自殺をしないといけない。

晃と過ごせるのは後3日しかない。

だけど死後の世界に行けば俺の願いが叶う。

本当は怖い。

未知な世界に飛び込む事が。

その代償が。

あっという間に3日後当日になった。

俺は晃の部屋でベットに転がりゲームをしていた。

いつも通りの生活を送っていた。

晃がお風呂に入りに行った。

今日で晃と過ごせるのは最後…。

もし…俺が本当に死ぬんでしまうかもしれない。

何か残しておきたいな。

俺が生きていた証を。

俺は晃のスマホを取り出し動画を撮った。

[ あーっあっと。よし、晃が風呂入ってる間に動画撮らせてもらうな。晃は俺にとってかけがえの無い存在だ。いつも晃には迷惑しかかけてなくて…そんなどうしようもない俺といつも一緒に居てくれた。本当に感謝しているんだ。

だからこそ、俺は…この世界を壊したい。]

廊下から足音が聞こえた。

俺は動画を撮り終え素早くスマホを元にあった場所に戻した。

晃が髪を拭きながら戻って来た。

俺がスマホを触った事は気付いていないようだった。

「なぁ、晃」

「何?」

「お前さ、俺が…いや。ずっと俺の味方で居てくれるか?」

晃の顔を見たら話したくなった。

俺が今から死ぬ事を。

その言葉を俺は飲み込み違う質問をした。

「何言ってんだよ。僕はいつも星の味方じゃないか。それは小学校の頃からそうだったろ?小学5年の頃のさ、お前がクラスの子を虐めてるって嘘の噂流された時も、僕は星がそんな事しない奴だって信じてたからお前の側離れなかったし。」

「あぁー。お前しか味方になってくれなくてな。あの時は嬉しかったな。」

俺は本当に嬉しかったんだ。

晃は俺にとっての救世主だったんだ。

「星、なんかあった?」

こう言う時の晃は感が鋭い。

「何もないよ。何で?」

「え?なんとなくだよ。星はさ、すぐ1人で考え込むからさ。なんかあったら言えよ?」

「ありがとな…。」

晃は俺の事をいつも気に掛けてくれた。

それが何よりも嬉しかった。

俺は自分の部屋に戻った。

ズキンッズキンッズキンッズキンッズキンッ!!

頭に強烈な痛みが走った。

もう1人の俺が変われと言っている。

「変わっ…てやるよ。」

「ははは!!随分素直だなぁ?」

「俺はお前等を絶対止めてやるからな!!」

俺はその言葉を放った瞬間に意識が無くなった。

目を開けるとそこは灰色の世界に覆われたスラム街の街並みが見えた。

「しょーう!!ようこそ。」

目の前には首輪をした男2人と女の子1人。

ガイがその3人を鎖で繋いでいた。

俺以外の従者達か?

だけど俺の視線は第3者から見た視線だった。

「なぁ。この右のハートは何?」

もう1人の俺がダルそうにガイに質問をした。

「本当の星の欠片だよ♪」

「そう言う事ね。」

「さ♪ボク達の住処に行くよー。」

もう1人の俺はガイ達の後に付いて行った。

俺は欠片になったって事か?

しばらくは様子を見た方が良さそうだな…。

何日か経った頃、ガイが俺達を集合させある場所に向かった。

そこには古びた住宅地が建っていて5人の男女が居た。

もう1人の俺がその中に居る男を見て興奮していた。

その相手とは晃だった。

晃が何で此処に居るんだよ!?

まさか…MADAのサイトを見て此処に来たのか!?

自殺をして。

何で、何で俺なんかの為に。

もう1人の俺はお前を殺す気だぞ!?

案の定もう1人の俺は晃に攻撃を始めた。

やめろ…やめてくれ!!

晃に酷い事を言うな!!

もう…やめてくれ…。

青藍と呼ばれた男にもう1人の俺を含め3人は拘束された。

そしてガイの呼び掛けで俺達が住んでいる廃ビルに戻った。

晃がこの世界に来た以上、もう1人の俺には晃を殺させない。

俺は抗い続けた。

雨のが降る中で俺達は見回りの任務を受け歩いていた。

目の前に晃と女の子が見えた。

もう1人の俺が暴走を始めた。

俺は止めるのに必死だったが止める事が出来た。

晃を目の前にしたら俺の思いが溢れ落ちた。

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