MY HERO①

星side


晃は俺にとって大事な存在だ。

言葉では表せない感情を抱いている。

友達として好きだ。

家族として好きだ。

俺と晃の性格は全然似てないし、かなり違う。

晃は基本大人しい。

俺は良く喋る方だけど晃は多くは語らない。

かと言って暗くは無いし友達もいない訳では無い。

運動神経は結構良くて俺は良く張り合っていた。

同じサッカーチームに入り良いコンビネーションを組めていた。

小学5年の頃に俺は同じクラスの女子に告白された。

俺はその子の事を好きでは無かったのでお断りした。

だけどその女の子を好きな男子がこの光景を見ていらしく次の日にその男子が俺に虐められたと嘘の情報をクラスに流していた。

「瀬名君が虐めって…。」

「人は見かけによらないよなー。」

クラスの奴がそんな話をしている。

俺と晃はクラスが違ったので俺の側に晃は居なかった。

俺と仲良くしていた男子や女子は庇いもしなかった。

目を合わせないようにして噂を流した方に加担して居る。

何だよコイツら…。

手の平返しもいい所だろ…。

ガラガラ!!!

教室のドアを乱暴に開かれる音が響いた。

ドアに目を向けると晃が立っていた。

「晃!?」

俺の声を無視してスタスタと噂を流した男子に向かって行った。

「な、何んだよ!!お前隣のクラスの奴だろ!?」

「お前だよな?嘘の噂流してんの。」

「はぁ!?」

晃は男子の胸ぐらを掴んだ。

「嘘つくなよ。」

「つ、ついてねぇよ!!」

「星はそんな奴じゃ無いんだよ!!お前が星の事妬んで流したんだろ?分かってんだよそんな事は。」

「晃…。」

晃だけが俺の事を信じてくれた。

クラスの奴は誰1人俺の声に耳を傾け無かった。

「な、何んだよ…お前は…!!俺は悪くねぇよ!!」

男子がそう言うと晃は男子の顔を殴った。

「キャァァァ!!!」

「おいおい…ヤバイよこれ!!」

女子は悲鳴をあげ、他の男子は見る見る顔色が青くなって行った。

俺は慌てて晃に近付き肩を掴んだ。

「おい!晃!!」

「離せよ星!!こう言う奴は分からせねぇと駄目なんだよ!!」

そう言って晃は殴り続けた。

「ちょっと!!柳瀬君!!やめなさい!!!」

誰かが呼んだ先生が晃を止めに入って来た。

晃と男子は先生に連れられ教室を出て行った。

「お、おい瀬名…!!」

「何だよ。」

「わ、悪かった!!俺…アイツの嘘を信じちゃって…。柳瀬に殴られて正解だわ!!」

「私もごめんね…。」

クラスの奴等が俺に謝って来た。

ゾクゾクッ

鳥肌が立った。

数分前までは俺の事を変な目で見て来たのに今は違う。

自分の事を善人ぶってる目をしていた。

気持ちが悪い。

何なんだこれ…。

ここの奴等はクラスの連中の事を好きでも嫌いでも無い。

八方美人の集まりだ。

自分がいかに安全な場所に居れるかだけを考えているんだ。

誰かに味方したり裏切ったりするのを簡単に出来る奴等だ。

自分が仲間外れにならないように必死だ。

結局の所、俺の味方は居なかった。

俺はクラスの連中を見る目が一気に変わった。

晃も俺の事を信じてくれないと思った。

俺は校門で晃を待った。

「しょーう!!」

振り返るとおばさんと晃が歩いて来ていた。

晃の右手は包帯が巻かれていた。

「星君!!もしかして晃の事待ってた?」

「何だよー星。暗い顔してどうした?」

おばさんは俺を見て晃に耳元で囁いた。

「私、車回らして来るから2人で待っててね。」

「ほーい!!」

おばさんは車を取りに行った。

おばさんは気を利かせて俺と晃を2人きりにしてくれたんだな…。

「悪い晃!!俺の為にあんな事させちゃって…。」

俺がそう言うと晃はキョトンとした。

「何で?星は悪く無いじゃん!!悪いのはアイツだろ?星は気にし過ぎなんだよ。俺には気を使うなよ親友だろ?」

そう言って晃は笑った。

俺は泣いてしまった。

「ちょっ!?星…どうした?ごめん…心配させちゃったかな…。」

晃は俺に近寄り背中をさすった。

「わ、悪い…。お、俺…お前にも信じてもらえないかと思って…。」

晃は俺の事を信じてくれていた。

もう俺は晃しか信じられない…。

晃以外は信じられない。

「馬鹿だなぁ…。僕はいつだって星の味方だよ。だから安心してよ。」

晃の言葉はいつだって優しい。

今度は俺が晃を守りたい。

俺は強くそう思った。

だけど俺のその思いが俺を狂わせた。

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