2人だけの兄妹①
闇side
手鏡を頼りに俺は麦の元に向かっていた。
パァン!!!
「ッ…。」
静かな街に銃弾の発砲音が響き渡った。
頬から生暖かいモノが頬を伝う感覚がした。
「久しぶりだねお兄ちゃん。」
銃口を向けながら一歩ずつ俺に近付いて来る。
「久しぶりだな…麦、痩せたな。」
唇の色が青色になっていて顔も窶(やつ)れていた。
「もう1人の麦が邪魔して来るの。馬鹿みたい。」
「麦…。楽にしてやるからな。」
そう言って俺は鎌を取り出した。
「ヤル気?お兄ちゃん。」
「麦を殺したお前を俺は殺すよ。」
「あははは!!いーね!!殺し合おうよ!!」
麦はマントを広げて沢山の銃を出して来た。
出された銃は麦の周りを浮いていて、手に持っている銃で周りの銃を操れるみたいだ。
麦が引き金を弾き、周りの銃からも銃弾が放たれた。
俺は鎌に巻き付いていた鎖を操り銃弾を弾かせた。
麦は銃を入れ替え、新たに銃弾を放った。
それを避けつつ麦の背後ろうとしたが、麦の周りに浮いている銃が俺の方を向き銃弾を放った。
俺は鎌の刃で銃弾を弾いた。
「楽しいね!お兄ちゃん!!麦、楽しいよ!!!」
笑いながら何度も何度も銃弾を放った。
銃弾と鎖がぶつかり合う。
どれくらい時間が経っただろう。
お互い体には擦り傷が出来て血を流していた。
「ッ!!」
麦が右胸を押さえながら倒れ込んだ。
「麦!?」
俺は麦に近寄り抱き起した。
「はぁ、はぁ…はぁ。」
顔色はさらに悪くなっていた。
「大丈夫か?」
「はぁ…はぁ…。お兄…ちゃん。」
いつもの麦に戻っていた。
麦はそう言って俺に抱き着いて来た。
「麦は…お兄ちゃんの思うような妹じゃないの。麦は…。お兄ちゃんの事を…。」
「麦?」
「麦はお兄ちゃんの事を憎んでしまったから。」
「!?」
麦は俺の服を掴む手に力を入れ、ゆっくりと話し出した。
麦side
麦はお兄ちゃんの事が凄く好きだった。
何処に行くのにもお兄ちゃんの跡をついて行って、好きな食べ物も好きな色も何でも真似をした。
お兄ちゃんはカッコ良くて、麦が困っていたらすぐに助けに来てくれた。
麦の家庭は母子家庭で、お母さんは夜遅くまで麦達の為に働いていた。
だから夜はいつもお兄ちゃんと2人で過ごしていた。
お兄ちゃんが側に居てくれたから麦は寂しいって思わなかった。
お兄ちゃんが小学5年生の頃からお母さんの影響でベースを弾き始めていた。
麦も歌う事が好きでお風呂に入りながらとか、学校の帰り道でも歌って居た。
お兄ちゃんが引くベースに音楽を流しながら麦が歌って。
麦にとって特別な時間だった。
お兄ちゃんが19歳の頃にBLACKと言うバンドを立ち上げ、ライブハウスでライブをしていた。
演奏を聞いている人は少なかったけど麦は毎回聴きに行っていた。
ボーカル以外は上手いのにボーカルの人が下手だった。
その人がメンバーから抜け、お兄ちゃんが麦をBLACKに入れてくれた。
お兄ちゃんの為に麦は歌った。
そこから有名になるのに時間は掛からなかった。
TV出演にCDの発売、ライブ活動。
世間でBLACKを知らない人が居なかった。
だけど、有名になったのは麦の歌唱力だってお兄ちゃん以外のメンバーが言い出した。
お兄ちゃんだけが地道に練習して居た。
麦に対してご機嫌を取る様な態度をして来た。
麦を見る目がお金を見る様な感じに思えた。
いつからか歌う事が嫌になってしまった。
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