2人だけの兄妹②

お兄ちゃんのファンから嫌がらせを受ける様になった。

SNSの書き込み、ポストに鼠の死骸を入れられたり、ある時は剃刀の刃が入って居た。

いつしか外に出るのが怖かった。

仕事と学校以外は外に出なかった。

お母さんには相談をしていたけど、お兄ちゃんには言わなかった。

迷惑をかけたく無かった。

部屋に閉じこもってベットに横になった。

だけど、家に居ても、何処に居ても嫌な事ばかり考えてしまう。

麦が何をしたって言うの?

悪い事、何もして無い。

ただ、歌う事が好きだっただけなのに。

[ 流花の妹だからって調子乗るなよ!! ]

「お兄ちゃんの所為だ…。」

全部、全部全部!!!

お兄ちゃんが悪いんだ!!!

「お兄ちゃんの妹じゃ無ければ良かった。」

その言葉を出した途端、ハッと我に帰った。

「何で…こんな事思いたく無いのに…。お兄ちゃんの事大好きなのに…。」

目からは涙が溢れ出た。

「どうしたら良いの…。」

「だったら変えようよ♪」

「え?」

振り返ると赤い色の杖に跨って部屋の中で浮いている男の人が居た。

男の人の周りには黒い羽が舞っていた。

「あ、あの…誰ですか?」

「ボク?ボクは名の喰いガイだよ♪そして君を助けに来たんだ。」

そう言って麦の頬に触れて来た。

ズキンッ!!

頭に鋭い痛みが走った。

「いた…い!!何したの!?」

「禁忌の種を植えたんだよ♪」

「禁忌?」

「君はボクのモノになるんだ♪」

そう言ってガイと名乗った男は姿を消した。

ボクのモノってどういう事?

分からない。

その日から頭の頭痛が続いた。

痛み止めを飲んでも全然効かない…。

頭が痛い…。

横になろう。

ベットに近寄り腰掛けた。

プルルッ!!プルルッ!!

「!?」

スマホを見るとお兄ちゃんからの着信であった。

明るい声を出せる準備をして通話ボタンを押した。

「お兄ちゃん?どうしたのー?」

「麦。母さんから聞いた。」

「え?なにを?」

「俺のファンが麦に嫌がらせしてた事。ごめんな。お前が嫌な目にあってるのに俺…なんも…。」

お兄ちゃんは麦の事を考えてくれてた。

なのに…お兄ちゃんの事を。

目から涙が零れ落ちた。

「お兄ちゃんは何も悪くないじゃない…。あたしはお兄ちゃんに心配かけたくなかったの…。お兄ちゃんはあたしのために無茶するの分かってたから。」

「麦。今日から俺の家に来い。」

「え?」

「母さんとは話をつけてある。俺が側に居た方がいい。

嫌がらせの対処もすぐ出来るし。分かったな?今日迎えに行くからな。荷物まとめとけよ。」

本当にお兄ちゃんは横暴だな…。

だけどそんなお兄ちゃんに救われて来たんだ。

「え!?今日って…。お兄ちゃんは本当に強引なんだから…。ありがとうお兄ちゃん。あたしお兄ちゃんの妹で良かった。」

「そうか。俺もお前の兄貴で良かったよ。じゃあ迎えに行くから準備しとけよ。」

「うん!分かった!」

電話を切りクローゼットを開き荷造りを始めた。

お兄ちゃんが守ってくれる!!

麦にはお兄ちゃんが居る。

お兄ちゃんとの生活に心を躍らせながら準備をした。

ズキンッズキンッズキンッ!!!

「ヴ!!」

強烈な頭痛に襲われ吐き気を感じ急いでトイレに駆け込んだ。

「ヴェ……。」

トイレで吐いているとまた、黒い羽が舞い落ちた。

「お前はお呼びじゃないんだよ。あははは!麦はお休み?これからは麦の体よ。」

意識はそこで無くなった。

周りを見ると歪な家が灰色の空に浮いていて、スラム街の様な廃れた街並み。

現実世界では無さそうだった。

もう1人の自分はお兄ちゃんを恨んでいた。

意識を戻したのはガイ達と奇襲を掛けたあの日。

もう1人の自分はお兄ちゃんを殺そうとしていた。

駄目!!

お兄ちゃんを殺させない!!

必死で抗った。

これは麦の罪。

ガイの命令で白玉と言う女の子を探して居た。

そしてお兄ちゃんと鉢合わせ、もう1人の麦が銃を取り出し銃弾を放った。

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