青藍とガイ②


ある日、雫が2人の少年を連れてきた。

白髪のサラサラヘアーに紫色の猫目で色白の少年。

綺麗な緑色の髪を立たせていて淡い緑色の猫目で血色のない肌の少年。

2人の少年は手を繋いで白髪の少年は緑色の髪の少年を庇う様に立っていた。

「姫!!誰だよそいつら!!」

ガイが物凄い勢いで雫に近寄った。

2人の少年の右胸には赤い薔薇のタトゥーがあった。

「雫。コイツらもしかして新しい従者か?」

「えぇ。そうなの、この子達は人だった魂なの。」

「人間だったのか。またどうして人の子供を従者にしたんだ。」

「姫!!ボク以外に従者を作ったって事?なんで?ボクが要らなくなったの?」

ガイは雫の肩に触れた。

「貴方を要らなかくなった事は一度も無いわ。」

「じゃあ…何でだよ…。ボクだけで良いじゃ無いか…。」

ガイは小さく震えていた。

まるで母親に縋る子供の様に。

「理由があるんだろ。ちゃんとガイに話さないと納得しないぞ。」

俺は雫を見つめた。

「この子達は兄弟の魂で親に殺された子なの。この子達の願いは一緒に居たい事だった。現世ではこの子達は別々の場所で殺された

だから私の所でこの子達を一緒に居させてあげたいの。」

雫が2人の少年の頭を撫でた。

正直、ガイと出会って変わった。

それは良い意味でだ。

雫は誰に対しても情など湧かなかった。

淡々と狼を殺し審判をしていた。

感情など無かった残酷な姫だった。

そんな雫をガイが変えたんだ。

ガイと出会い人を愛する事、そして愛されると言う喜びを知った。

「そうか…。」

俺は良い変化だと思った。

だけどガイは納得していなかった。

「分からないよ…!!姫にはボクだけ居ればいいんだ。こんな奴らに!!」

そう言ってガイは緑色の髪の少年の胸ぐらを掴んだ。

「おい!!ガイ!!」

俺はガイを引き離そうとした。

「テメェ!!翡翠(ひすい)に触んな!!」

白髪の少年は赤色の剣をガイに向けた。

「やめなさいガイ、真珠(しんじゅ)!!」

そう言ってガイと真珠に赤い棘が巻き付きいた。

「姫!!」

「ガイ。私に逆らう気?」

冷酷な目でガイを見下ろした。

「!!」

「おいおい…。2人とも落ち着けよ。この子等が驚いてんだろ。ごめんな?大丈夫か?」

俺は翡翠と真珠と呼ばれる少年に近寄り腰を下ろした。

「あ、僕は大丈夫だけど…真珠も落ち着いて!」

「わ、悪い…翡翠。」

「ほら、雫もガイを離してやれ。悪気は無いんだから。」

俺がそう言うと雫は棘をしまった。

「ボクだけの姫だったのに…。何だよそれ…。」

「ガイ…落ち着いて。」

雫がガイに手を伸ばそうとした。

パシンッ!!!

ガイは雫の手を払い除けた。

「ガ、ガイ…?」

「姫は…ボクは姫しか要らないのに、要らないのにどうして?どうしてどうしてどうして…。」

ガイの様子が可笑しい。

ブツブツと同じ言葉を繰り返している。

「おい。ガイ、しっかりしろ。」

俺はガイの肩を叩いた。

「あ、あ青藍。」

「お前…顔色悪いぞ、あっちで休んでろ。」

「あ、う、うん。」

俺は別室にガイを誘導した。

ガイは雫に依存をしてる。

だから雫がガイ以外に従者を作るとはおもわなかった。

雫もガイの態度を見て呆然としていた。

「雫。」

「青藍…。」

「翡翠と真珠、ちょっと外に居てくねぇか?雫とちょっとお話したいんだ。」

俺は2人に外に出る様にお願いした。

翡翠と真珠は頷いて外に出てくれた。

「雫、座れよ。」

「え、えぇ。」

雫をソファーに座らせ俺も雫の隣に腰を下ろした。

「どうしてガイはあんなに怒ったのかしら…。ガイなら分かってくれると思ったのに…。」

俺は煙草を取り出し口に咥え火を付けた。

「ガイは雫を取られたと思ったんじゃないの?翡翠と真珠が来るまではずっと2人だったろ。」

「私は愛した者同士を一緒に居させてあげたかったの。愛しているのに側に居られないなんて残酷な事よ。ガイと出会うまではそんな事を思わなかった。」

雫の瞳から涙が流れていた。

ガイが雫に感情を教えた。

何をするのも感情が無かった姫が1人の狼と出会い愛を知り愛する事、愛される事の喜びを知った。

「ガイは優しいから翡翠と真珠の事も分かってくれると思った。あの2人はお互いを大切に思っていて死後の世界では一緒に居させてあげたかった。現世では死んでしまったけど魂の姿になってもお互いの事を探してた。私はそれを見て胸が苦しくなったの。」

「自分とガイを重ねたのか。」

「私とガイが魂だけになってお互い離れ離れになったら…。私もあの子達の様にガイを探すわ。愛しているから側に居たい。」

雫はガイを愛している。

たとえ肉体が死に魂だけになったとして2人の魂が離れ離れになってもお互いを求め彷徨いまた愛し合う事を望んでいる。

「ガイを愛しているんだな。」

「愛しているわ。狂おしい程に。」

「ガイなら分かってくれるさ。お前の事を愛してるんだからな。見てたら分かるよ。」

そう言って俺は雫の頭を撫でた。

「そうかしら。私の考えを分かってくれるかな…。」

「大丈夫だよ。」

俺達の光景をガイが見ていた事に俺は気付いて居なかった。

その日からガイの心が音を立てて壊れ始めた。

翡翠と真珠を連れて来てから2人は喧嘩ばかりしていた。

雫は自分の考えをガイに話した。

2人をどうして連れて来たのか。

ガイは理由なんてどうでも良く連れて来た事を怒っていた。

雫が翡翠と真珠を俺の所にしばらく置いといて欲しいと言ってきた。

ガイとの話し合いが終わるまで2人をガイに近寄らせない様にした。

俺はいつも通りに渡り他人の仕事をし帰路に着いていた。

「ピチャピチャ。」

何かを踏み付けているような音がした。

何だ?

俺は音のした方に足を向けた。

するとそこには座り込んでいるガイが居た。

俺はガイの名前を呼ぼうとした。

「ガ…ッ!?」

嫌な匂いが鼻に届く。

ガイの周りは血の海になっていて3人の無惨な死体。

両手に心臓を持って居た。

魂の中に現世での名前が心臓の代わりになっている。

雫が現世だった頃の名前を魂に付け、人の形に戻し名を掛けて罪を償わせていた。

「ガイ!!お前まさか名前を喰ったのか!」

俺はガイの肩を乱暴に掴み振り返らせた。

「あれぇ?青藍じゃないかぁ?あはは。」

血塗れの口を歪ませた。

ガイが犯した最初の禁忌だった。

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