青藍とガイ①
映像が終わりモニターが消えていた。
あれはガイの好きな女の子の話だった。
人の名前を食べないと生きられないが、食べる事を拒否し群れから外され傷つけられ
いつも怯えて生きる意味さえわからなかったそんなガイがどうして名前を食べ始め、何がきっかけで狂気に狂ってしまったのか…
何故、人を自殺に追いやる殺意に目覚めてしまったのか…姫に愛と言う忠誠を誓ったガイはここから幸せになれるはずだったのではないか。
そんな事を考えていると新しいモニターが現れた。
「え!?またモニターが…?」
「よぉ。俺の声が聞こえるか。」
僕の頭の中に青藍が語り掛けて来た。
「せ、青藍!?」
「聞こえてるみたいだな。ここからは俺とガイの事をこのモニターに流す。」
「ガイの事を…?」
「あぁ。俺とガイの関係が拗れてしまった話を。」
そしてモニターに映像が流れ始めモニターから青藍の声がナビゲーターになっていた。
青藍side
俺の仕事は元々渡り他人(わたりびと)だった。
渡り他人とは、審判を受けた魂を天国や地獄に送る人の事だ。
この世界は俺と雫(しずく)2人で管理をしていた。
雫は死後の世界の姫君であり審判人で狼と戦っていた。
そんな彼女は何処かで自分を愛してくれる存在を求めていた。
姫は誰かを愛する事も愛される事も知らなかった。
ある日、俺は屋敷で本を読んでいた。
すると雫が嬉しそうに1人の男を連れ来た。
「青藍!!服を用意して頂戴。」
「は?そいつ誰?」
「私の従者よ。名前はガイって言うのよ。」
布一枚を体に巻き付けている男が立っていた。
これが俺とガイの出会いだった。
とりあえず俺は服を用意しガイに渡した。
だが、ガイは一向に服を着ようとしない。
俺は雫に尋ねた。
「おい雫。」
「何よ。」
「コイツ服の着方が分からねぇみたいだけど。」
「あ!」
俺の問いに雫はハッとした。
「そうよ。ガイは元々狼だったから分からないのは当然よね。」
「はぁ!?お前、狼を従者にしたのかよ!?」
俺は雫の言葉に驚き大声を出した。
するとガイが雫の前に立った。
「姫に大声を出すな。」
鋭い目付きで俺を睨む。
「ガイ。青藍は驚いただけよ、だから心配しないで。」
そう言って雫はガイの頬を撫でた。
ガイは雫に触られ気持ち良さそうにしていた。
なるほど、雫がガイを気に入ったのか。
「分かったよ。服の着方を教えてやるからこっちに来い。雫は座って待ってろ。」
「宜しくね青藍。」
「了解。ガイこっちに来い。」
俺はガイを手招きし、別室に案内した。
そして服の着方をガイに教えた。
「こうやって服を着るんだ。分かったな?」
黒いコートとワイシャツをバシッと着こなすガイ。
「ありがとう青藍。」
ガイは軽く微笑んだ。
「雫に見せてやれ。」
「うん!!姫に見せてくる。」
そう言ってガイは部屋を出て足速に雫の元に向かった。
「姫、青藍が着せてくれたんだ…どうかな?」
雫は頬を赤らめていた。
「おい、見惚れてないで何か言ってやれよ。」
「あ、え!!えっと…すごい似合ってるわガイ。」
「!!姫…ありがとう!!」
雫とガイの関係はとても初々しかった。
まるで初恋のような甘酸っぱい関係だった。
それから雫とガイは常に一緒に居た。
ガイに雫の髪と同じ色の鎌を渡し戦い方を教えて、一緒に狼を倒していた。
ガイは俺にも懐いていて渡り他人の仕事にも付いて来たり、酒を一緒に飲む中だった。
雫とガイは愛を深めていた。
2人の幸せそうな顔を見るのが嬉しかった。
穏やかな時間が流れていた。
こんな時間が続けば良いと思っていた。
だけど俺は気付いていなかった
静かに壊れ始めていた事を…。
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