第五章 赤薔薇の姫
小さな絵本
百合side
裕二の口からとんでもない言葉が出た。
ガイを潰す?
「ちょっと待て。お前ガイの従者だろ?逆らえないんじゃないのか?」
「他の3人はそうらしいんだけど…。こっちの俺も何か本来の俺と変わんないみたいなんだよね。」
ハハハッと軽く笑った。
確かに裕二の話を聞いていて、可笑しい様子は無かった。
何か疑っていた自分が馬鹿馬鹿しく思えた。
「お前と話してると変に気を張ってたのが馬鹿馬鹿しく思えたわ…。」
「俺に気を払う必要ないって。お前を殺したいとも思っていないよ。俺はお前とガイを潰してぇだけなんだからな。」
「潰したいってのは分かった。それで?具体的な案はあるんだろうな?」
「それなんだけど…。ガイの持っている杖を奪う。」
「あぁ…。あの赤い宝石の杖か…、それがガイと関係あるのか?」
俺が尋ねと裕二は地面に何か書き出した。
見てみるとどうやらガイの体を描いたらしい。
だが…裕二はまったく絵心が無いのだ。
「お前…相変わらず絵が下手だな…。」
「う、うるせぇ!!絵の話はするな!!あのな…説明するぞ。」
そう言われて裕二はガイの両足と両腕、首や頬、脇腹に丸の印を書いて行った。
何の意味があるんだ?
「この印の所に糸で塗った様な縫い目があるんだ。」
「縫い目…?そんなのあるのか?」
「あるよ。和希達の居た場所からは見にくいと思うな。この縫い目は俺が調べた所、どうやら禁忌を犯した代償らしいんだ。」
「禁忌の代償…か…。青藍が言っていた事か。それはどう言う事だ?」
裕二はゆっくりと説明を始めた。
「この世界の住人は魔法の様なモノを使えるだろ?元々ガイは人間の姿をしていなかったんだよ。」
「つまり…何ならかの方法で人間の姿になったと…?」
「そう言う事だ。」
「はぁぁぁぁ…。訳が分からん…と言うか、お前何処からそう言う情報を手に入れたんだよ。」
俺がそう言うと裕二は一冊の小さな本をポケットから出した。
「絵本…か?」
「そうだ。俺はこれを見て情報を得たんだ…いッヅ!?」
そう言うと裕二は頭を押さえて居た。
「おいおい!!大丈夫かよ…?」
俺は裕二に近寄った。
「だい…大丈夫だ。ガイのお呼び出しだよ。」
「呼び出し?ここで俺と会った事はバレては無いのか?」
「そこまでの能力はアイツには無いよ。それよりこの本はお前に渡しとくから読んどいてくれ…」
青い顔をした裕二は俺に絵本を渡した。
「そろそろ…行くわ…。また3日後ここで会おう。」
そう言って裕二は立ち上がり、裕二の影の中から沢山の手が出て来た。
そのまま裕二の足に纏わり付き影の中に引き摺り込んで消えて行った。
「大丈夫かよ…アイツ。それにこの絵本は?」
絵本を見ると題名の部分が汚れていて読めない状態だった。
赤い髪のお姫様と傷だらけの狼の絵が載っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます