ごめんなさいの食卓②

空が暗くなり僕達は青藍の屋敷に向かっていた。

裏路地を出た後、3体の化け物と鉢合わせをした。

なので合計5体の化け物の相手をしたから体が疲れていた。

「つ、疲れた…。」

「お疲れ様、夜空。小瓶の中身もだいぶ溜まって来たじゃないか。」

「うん!中々良い感じだよね。」

「さ、屋敷に着いたぞ、今日は早く休め。」

「そうさてもらうー。」

「おーい!夜空ー、白玉お疲れ様。」

門の前には手を振る百合と闇が立っていた。

「あれ!!百合と闇!!久々だな!!」

「2人の帰り待ってたんだぜ。」

闇がニヤリと笑った。

「待ってた?何んで?」

「まぁまぁ、早く入ろう。」

百合に背中を押されながら屋敷の中に入った。

そのままリビングに通されるとテーブルの上には沢山のご馳走が並んでいた。

ハンバーグにエビフライ、グラタンやサラダと言ったパーティメニューだ。

「すごい!ご馳走だね!!!」

「お帰りなさい2人とも。」

エプロン姿の空蛾が唐揚げを持って現れた。

「全部コイツが作ったんだぜ?」

「え!!空蛾が?すごいね!!」

「えぇ。料理は得意なの。」

この世界に来て初めてのご馳走だった。

「ほらほら。突っ立てないで座る。」

百合に椅子を引かれ僕は椅子に座った。

皆んなも椅子に座た。

「今日は何かのパーティ?」

僕が尋ねると闇が応えた。

「俺達さ、お前や白玉に酷い事言っちゃっただろ?それのお詫びのパーティなんだ。」

「ごめんなさい。あたし達、夜空が悪者みたいな言い方しちゃったから。」

「3日前、たまたま俺達は白玉と夜空が部屋で話しているのを聞いたんだ。」

「「!!?」」

僕と白玉は驚いた。

「悪かった。一方的に白玉に八つ当たりしてた。夜空もごめんな。」

百合と闇、空蛾が頭を下げた。

「え!!?僕は全然気にしていないから頭上げてよ!!」

「妾も気にしていない。話をしなかった妾が悪い。」

「と、とりあえず空蛾の作ったご飯を食べようよ!美味しそうー!!」

3人ともホッとした様子だった。

「それじゃあ、改めてよろしくな夜空。」

そう言って闇はグラスを持った。

2人もグラスを持ち、僕と白玉がグラスを持つのを待っていた。

僕と白玉は顔を見合わせグラスを持った。

「よろしくね皆んな!!」

「「「乾杯!!!」」」

そう言って皆んなとグラスを合わせた。

ご飯を食べながら他愛の無い話で盛り上がった。

白玉がガイの話をちゃんと皆んなに伝えた。

3人共、真面目な顔をして話を聞いていた。

「そうか…助ける為にはもう1人の麦を殺さないといけないのか…。」

闇は俯きながら呟いた。

「…。あたしは殺すわ。」

「「!!?」」

僕と闇は空蛾の方を見た。

「あたしは恭弥を…苦しめてしまった。」

「恭弥さん?って人と空蛾は…。」

「恋人同士だった。」

空蛾とあの恭弥と呼ばれていた人は恋人同士だったのか。

すると闇が「歳離れすぎて無い?」と言った。

空蛾は静かに語り出した。

「あたしと恭弥は先生と生徒の関係で恋人同士になったの。卒業してから一緒に住む約束をしてた。だけど…恭弥は他の先生にあたしとの関係がバレちゃって嫌がらせを受けてた。あたしに話さないで1人で抱え込ませてしまったの…。」

「恋人を失ったって事か。」

百合がそう言って空蛾に尋ねた。

「あたしが恭弥を苦しめてしまった元凶なの。ガイのせいで恭弥は自殺をさせられた。けど…あたしにも責任はあると思うの。だからあたしは…恭弥を殺した恭弥を殺すわ。あの人を救いたい。」

「空蛾…。」

空蛾は好きな人の為に死後の世界に来たんだ。

2人の話も聞いて良いだろうか…。

「2人の事も聞いてもいい?」

僕がそう言うと闇が話し出した。

「俺は妹、麦のメンタルケアをしてあげれなかったんだ。」

「メンタルケア?」

「麦は俺のファンに酷い嫌がらせを受けていたんだ。鼠の死骸とか、剃刀の刃が入った封筒、SNSの書き込みで精神的に不安定だったんだ。」

本当にこういう嫌がらせがあるんだ…。

「陰湿だなぁ…。」

百合が苦笑いをした。

「麦からこの事を聞くのが遅すぎたんだ。もっと早く気付いていればよかったんだ。麦の心を殺してしまうきっかけを作ったのも俺なんだ。もう1人の麦も俺の大事な妹だ。だから俺は麦をこんなん風にした責任を兄としてとる必要がある。俺も麦を殺すよ、取り戻す為に。」

「闇…。」

「んで、百合お前は?」

闇は百合を見つめた。

百合は重たい口をゆっくりと開いた。

「親友を助けに来たんだよ。俺はな…。友達の裕二とMADAについて調べていた。」

「え!?MADAを!?」

「警察が何で…調べてたの?」

僕と空蛾は百合に質問をした。

「落ち着けよ。ここ最近、若者の自殺者が増加していたんだよ。その自殺者のほとんどが謎のサイトやメールを開いた状態で死んでいたんだ。」

「それがMADAだったのか?」

闇の問いに百合は静かに頷いた。

「その通りだ。俺と裕二は警視直軸(ちょくぞく)の任務で調べていた。裕二がMADAのサイトを作った人物に辿り着いた。」

「!!?」

僕の胸が重たく脈を打つのが分かった。

額からは嫌な汗が流れる。

顔の色が段々と白くなるのが分かる。

スッ。

不意に僕の手に手が触れる感触がした。

「?」

驚いて見ると、白玉が僕の手を握っていた。

「しら…たま?」

「大丈夫だ夜空。」

白玉の言葉で胸が軽くなった。

「その人物ってのは分かったのか?」

「いや、裕二だけが知っている状態だ。俺に伝える前に自殺しちまったからな。」

「白玉の話を聞くと、もしかしてだけど…その裕二さんは口封じの為に自殺をさせたんじゃない?」

「俺もそう思う。」

「MADAのサイトを作ったのは…瀬名星…。星なんだ…。」

「「「!!!?」」」

3人は僕の放った言葉に驚き一斉に僕の方を見た。

「え…ま、マジ?」

「マジだよ。」

「ど、どうして?」

「もう1人の星がガイと一緒に作っていたんだ。」

「…そうか。全ての元凶はガイって事が分かった。話してくれてありがとな。」

百合はそう言って僕の頭を撫でて、席を立った。

「さてっと、俺はちょっと出掛けてくるよ。」

「欠片集めか?」

「そうだよ。それじゃあ4人共、お休み。」

「気をつけて百合!!」

「あんまり無理すんなよ。」

「何か事があったらあたし達に言ってね。」

闇と空蛾は百合の事を心配していた。

僕も百合の事は心配していた。

百合は僕達よりも大人だからあまり多くの事を語らない。

今は違う。

僕達の距離は大分縮まった気がしたからこそ、悩みを共有したいと思っていた。

「ありがとな。無理しないようにするよ。」

百合はリビングを出て行った。

「今日はありがとう空蛾!!闇も!!」

「べ、別に礼を言われる事はしてねぇよ!!」

「全然良いよ。白玉も本当にごめんね。」

「妾は気にしてないぞ。」

白玉と空蛾の話している姿はとても微笑ましく見えた。

闇もそう思っている感じだった。

「俺も今日は寝るわ、おやすみ。」

闇はそう言って部屋に入って行った。

「あたしも寝るね。2人ともお休み。」

「お休み!!」

空蛾も部屋に入って行った。

僕達も部屋に戻った。

白玉にベットを貸し、僕はソファーに横になった。

「今日は楽しかったな…。」

「夜空が楽しそうで妾は嬉しかったぞ。」

「ありがとう白玉。」

「お休み夜空。」

「お休み白玉。」

そう言うと白玉は静かに寝息を立てた。

僕も目を瞑った。

この世界に来て初めて胸が暖かいまま眠りの世界に入った。

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