白玉と星③

星?どうしたの?

怪我をしたの?

妾を抱き締める手が震えていた。

「俺…自分自身が怖いんだ…。晃を怪我させた奴等を殴った日から…。気が付いたら知らない人を殴ってた。そんな事がもう何回もあるんだ…。今日も人を殴ったみたいで…怖くて逃げて来た…。」

星の目からポロポロと涙が溢れていた。

妾は涙が止まるように願いながら涙を舐めた。

「ありがとな白玉…。」

星の後ろに大きな男が立っていた。

星に近づこうとする男に妾は来るなと言った。

「シャアアア!」

「白玉?どうした?」

「ヤァ…あの日以来だなぁ。」

「ッ!?お前、あの日の…。」

月明かりに照らされた男は不気味の笑みを浮かべた。

「お前暴れてるんだって?いい感じになってるなぁ。」

「お前が俺に何かしたんだろ!!!」

星は妾を地面に置き、男に殴り掛かろうとした。

男は星の攻撃を避け、頭を掴み地面に強く叩き付けた。

「眠ってろ。もう1人のお前に用があんだよ。」

「ニャァ!!」

妾は男の足元に噛み付いた。

「この猫邪魔だなぁ。」

そう言って男は妾を蹴飛ばした。

体は宙に浮き、近くにあった木に思いっきり体が当たった。

痛い…、痛い。

すると星がゆっくりと起き上がり。

「お前のおかげで起きれたわ。って叩きつける事ないだろ。」

そう言いながら鼻血を拭いた。

星?

「仕方ないじゃん?ボクが君に植え付けた種が星の意識を全部飲み込んで無いんだもん。」

「コイツが寝てる間に俺が出て来て、夜中に家を出て目に付いた奴を手当たり次第に殴ったりして遊んでるからまだ良いけどね。」

「んー。ちょっと量が足りなかったかなぁ?じゃあこれ飲んで。」

そう言って男は赤色の液体が入った小瓶を取り出し星に渡した。

妾はそれが何なのか分からなかったが、星に飲ませちゃいけないと思い星の元に走った。

「何?この赤いの。」

「種の栄養剤だよ?ボクの魔力を込めたドリンク、味はチェリー味だよ?」

「ふーん。これでアイツはもう出て来なくなんの?」

「あとこれを4本飲んだらもう1人の星は死ぬよ♪。」

だめ!!

星を死なせる訳にはいかない!

妾は星の足に噛み付いた。

お願いだから…優しい星を…。

星の心を壊さないでくれ!!!

だけど星は冷たい目で妾を見て妾の脇腹に蹴りを入れた。

口から血が吐き出て妾はその場から動けなくなった。

「酷いなぁ星♪可愛がってた猫にこんな事するなんて。」

「もう1人の俺が可愛がってんだろ?今の俺には関係無いだろ。で?そのドリンク一気に4本飲んだら駄目なの?」

「んー。星の体はまだ成長中だから一気に飲んじゃうと体が耐えらなくて死んじゃうと思うだよねぇ。だから歳を重ねると共に渡すよ♪」

「死ぬのは困るなぁ、まずは一本目。」

そう言って星は小瓶のドリンクを飲み干した。

「意外に美味いじゃん。体に変化は無いみたいだけど。」

「そりゃあ今の星には無いよ。本物の星の心を喰ってるんだから。」

「心を喰う?」

「そういえば、ボクの名前を言ってなかったね。ボクはガイだよ♪またの名は名の喰いの死神なんだよね♪」

名を喰う…だって?

「あ?名前食べんの?名前って食べられんの?」

「そ♪ボクは死後の世界の住人だからね。」

「死後の世界の住人?」

「星はさ、天国と地獄の存在を知ってる?」

倒れている妾の前で2人が訳の分からない会話をしている。

死後の世界?

天国と地獄?

この男は現実では存在しない者って事?

そんな奴がどうして星に会いに来た?

会いに来る理由があるって事?

「んーまぁ…あんまり詳しく知らねぇけど…。」

「死後の世界はね…天国と地獄の狭間の世界。ボクは星をボクの従者にしたくて来たんだ。」

「はぁ?従者?それ俺に得ねぇじゃん。お前の命令聞かないといけない感じじゃん。」

「フフフッ♪それが星の願望と同じだったらどうする?」

「!!?」

「ボクはね…この世界を壊したいんだよ。」

この世界を壊す?

何を言っているんだ?

世界を壊す事なんて出来ないだろ…。

「ボクはね。ルールとか縛りが嫌いなんだよね。ここの世界では法律?みたいなものがあるじゃん?人を殺しちゃ駄目とかさ。大事な人を傷付けられたり、殺されたとしてもやり返しちゃイケナイなんてそれこそ縛りだろ?殴りたい時に殴る。殺したい時に殺す。

愛したい時に愛したい。自由の世界にしたい。」

自分がおかしい事を言ってるのが分からないのか?

「アンタと俺の考えが同じって事ね。そういう事ならいいぜ。ガイの従者になってやっても。」

「本当!?嬉しいな♪あ、まだ従者には出来ないんだよね。従者にするにはあの杖がないと出来ないんだよね。」

「杖?」

「そ♪その杖を手に入れたらボクの計画がやっと出来るんだ♪それまでちょっと待ってね。」

駄目だ。

こんな奴を星に近付けさちゃ駄目!!

妾が星の事守らないと!!

妾は力を振り絞ってガイの足を引っ掻いた。

「シャアアア!」

「さっきからこの猫なぁに。ウザイんだけど。お前死んどけ。」

そう言ってガイは妾を掴み、自分の手を獣の手に変化させ妾の心臓を抉り出した。

妾の小さな心臓がガイの手のひらで脈を打っていた。

そして心臓を握り潰した。

ガイの笑い声が耳に響く。

こんな奴に殺されて憎い。

こんな奴が星の心を殺そうとしている。

憎い…憎い…憎い!!!

妾はガイを睨み付けていた。

「おっ怖っ。」

ガイは睨まれても大した事無い感じだった。

妾を見つめた星の目は悲しそうだった。

星…。

妾の意識はそこで亡くなった。

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