白玉と星②
少年の家に着きタオルで優しく体を拭かれ、ミルクを用意してくれた。
ミルクの匂いが鼻に届く。
だけど飲む気力が無くミルクの入ったお皿を見つめる事しか出来なかった。
すると少年はハッとし、リビングからスプーンを持って来て妾を抱き上げゆっくり口元に運んだ。
空っぽのお腹の中にミルクが流れていくのが分かる。
「美味いか?ゆっくりでいいからな。飲み終わったらお風呂入れてやるよ、汚れてるしな。」
少年の目は優しかった。
だけど、どこか悲しげでもあった。
少年は妾をお風呂に入れドライヤーでゆっくり体を乾かしてくれた。
それがとても気持ちよく思わず声が出た。
「ニャァ」
「そっかそっか!気持ちいいか!!良かった良かった。」
人に優しくされた事が生まれてから一度も無かった。
ガチャッ
「星?帰ってたの…って!その子猫どうしたの?」
母親らしき人がドアから顔を出していた。
この子…星って名前なのか。
「倒れてたから連れてきた!」
「連れてきたって…ここ、ペット禁止なのよ?」
「だけど、あのままほっといたらこの子死んでたよ。」
そう言って星は妾の頭を撫でた。
星に触られるととても安心する。
「ニャァ」
「そうね…。この子も星に懐いているみたいだし。しばらくは家に置いときましょう。」
「ありがとう母さん!!」
「でもそんなに長く置いとけないわよ?管理人さんにも内緒にしとかないといけないのだから。」
「うん!!」
こうしてしばらく星の家にお世話になる事になった。
星とは常に一緒に居た。
星の両親と、妹にとても可愛がられた。
妾はとっても幸せで、ずっと星と居たいと思った。
「お前、色が白いから白玉(しらたま)って名前はどうだ?可愛いだろ?」
「ニャァ!!」
「そっか!気に入ったか白玉。」
名前なんてなんでも良かった。
ただ、星が名前を考えて妾に付けてくれた事が嬉しかった。
妾が星の家に来て1週間がたった頃。
「白玉。明日は神主さんの所に行こうか。」
「ニャァ?」
「晃が入院してから毎日神社に行ってお参りしてるんだ。そしたら神主さんと仲良くなって白玉の話をしたら飼ってくれるって言ってくれたんだ。」
晃の話は星から聞いていた。
頭を打って記憶喪失な事、星の事も忘れてしまった事を。
だけど星と離れたくない。
会えなくなるのは嫌だ。
「ニャァ…」
「大丈夫だよ。毎日、白玉に会いに行くから。晃の事も紹介出来るしな。」
星に抱き締められながら眠った。
次の日神社に連れられ、神主に引き渡された。
とても優しそうなお爺さんでとても良くしてくれた。
「白玉!晃連れて来たぞ!」
手を引かれていた少年が晃と言うのだろう。
星より大人っぽく、包帯が色んな所に巻かれていた。
怪我がまだよくなっていないのだろう。
「星君。この子が白玉ちゃん?」
「君はやめろよ!そうそう!白玉おいで。」
星がしゃがみ手招きをする。
妾は星の元に近寄り手に擦り寄った。
星な妾を抱き上げ、晃に近付けた。
「可愛い…。真っ白だ!!撫でてもいい?」
「いいよ!!晃に白玉見せたかったんだよ。」
晃は優しく妾の頭を撫でた。
「ニャァ。」
「人懐っこい猫なんだね。」
「だろ?」
「ニャァ。」
晃も星も優しい手をしていて妾はとても好きだった。
だけど、この頃から星の心が壊れ出した。
「白玉…。」
神社のお賽銭箱の隣りで寝ていると星が話しかけてきた。
夜中なのに星は1人で出歩いていたのか?
「ニャァ。」
「白玉…おいで。」
そう言って星は妾を手招きした。
星の手は血で赤く染まっていた。
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