白玉と星①

しばらく歩いていると目の前に古びた洋館が立っていた。

大きな庭に青薔薇が咲き誇っていてこの世界には似合わない景色だった。

「「お帰りなさい青藍様。」」

門の前で青藍と同じ髪色で赤と青色のオッドアイ、メイド服を着た猫が2匹が二本足で立っていた。

「「「ね、猫が喋った!!?」」」

僕と闇、空蛾が揃って口にした。

「驚いたな。本当にファンタジーの世界だな。」

百合は猫の視線に合わせるようにしゃがみ、ジィーッと見つめていた。

「「お待ちしておりました。皆様のお部屋はご用意させて頂きました。ご案内いたします。」」

「え!?へ、部屋?」

「俺の屋敷に居ればガイも迂闊(うかつ)に手出せないからな。しばらくはここにいた方が安全だぜ。」

「なるほど…!!」

「今日は休んどけ。明日から頑張ればいいからな。じゃあ俺はちょっとこれから出かけて来るから面倒頼むな。」

青藍は猫のメイド達に伝えて屋敷を出て行った。

僕達の部屋に案内され各自今日は休む事にした。

部屋は8.5畳の程の広さで、赤い絨毯が床に引かれていて、フカフカの高級ベットと青い宝石が散りばめられた深紅の壁、お金持ちが住んでいそうな部屋だった。

「すごい部屋だな…。」

僕はベットに腰を掛けるとドアがノックされた。

コンコン

「はーい。」

僕はドアに向かいドアノブを捻った。

そこに居たのはティーポットと2人分のティーカップに瓶入り角砂糖、それとすみれの花が添えてあり、トレイを持っている白玉の姿があった。

「お茶にしないか。」

「いいね。お茶しようか白玉。」

僕は白玉を部屋に招いた。

白玉は机にセットを置き、ティーポットを手に取りカップに紅茶を注ぎ、すみれの花を紅茶の上に浮かばせた。

「どうぞ。」

「ありがとう。すごいすみれの紅茶?綺麗な薄い紫色だ。」

白玉は僕の隣に腰掛け紅茶を口に運んだ。

「さっき。星と妾が関係あるのかって聞いたな。」

白玉はじっと僕を見つめてきた。

「もしかしてだけど…。星と白玉は知り合いだったの?」

「星と妾はお前が居た現世の世界で出会っているんだ。」

「え!!?」

僕は飲んでいた紅茶を吹き出しそうになった。

「妾は現世で死んでこっちの世界に来た。」

「白玉もMADAに選ばれたの?」

「MADAに呑み込まれた魂だった。」

「呑み込まれたって…?」

白玉は紅茶のおかわりを入れ、再び紅茶を口に運んだ。

「今から3年前の話だ。」

白玉は静かに語り出した。


白玉side


猫だった妾は雨に濡れ、食べ物もロクに食べれていなく立つ事さえ出来ずに道に倒れていた。

寒い…。

お腹すいた…。

眠たい…。

瞼が重たくなり目を開ける事が出来なかった。

このまま死ぬんだろうか…。

そんな事を思っていた。

すると体がフワッと浮き柔らかな感触がした。

重たい瞳を開けると、男の子が傘を差しながら妾を抱き締めていた。

「こんなに冷たくなってる…。俺の家に連れて行かないと!」

そう言うと少年は走り出した。

その少年は小学6年の瀬名星だった。

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