第四章 full moonの計画案
従者
「星!!どういう事だよ!!お前…死んでなかったのか!?」
星が生きていたって事なのか?
目の前に居るのは確かに星で。
だけど星じゃない…。
「俺か?死んだよ?」
「え?」
「まぁ…。あれだよ。俺であって俺じゃないのさ。」
「意味わかんねぇ…。」
「お前じゃ分かんないよなぁ?晃。」
クククッと楽しく笑う星は不気味だった。
「麦!!お前…。生きてたんだな…。」
そう言って闇は、麦って呼ばれる女の子の元へ足を踏み出した。
パァァァァンッ!
銃弾が放たれる音がした。
女の子は銃を取り出して闇の足元近くに銃弾を撃っていた。
「麦?」
「にゃははは!!そぉだよ?麦だよー。ていうか…?そこから動かない方がいいよー?お兄ちゃん。」
狂った様に笑い出す女の子。
「麦…?どうしたんだよ!?」
「どうもしてないよぉー?この麦も麦だし。あっちの世界の麦も麦なんだよぉー。」
「お前の仕業か。」
そう言って闇はガイの方を見る。
「仕業って酷いなぁ。ボクはボクの目的の為に利用させて貰ってんの。この4人は僕の従者(サーヴァント)だからね。」
サーヴァント?
「まさか…!?4人を従者にしたって…。お前、禁忌を犯したな。」
「アイツに勝つ為なら禁忌でもなんでも犯すさ。」
アイツだの、禁忌だの、訳の分からない話が飛んでいる。
「よそ見してんなよぉ。晃!!」
そう言って星は鎌を振りかざしてきた。
僕は攻撃を防いだ。
「あははは!!戦いはこうじゃないとつまらねぇよなぁ!?」
「ッ!!星!!」
僕は星の繰り出される攻撃を防ぐ事しか出来なかったら。
何度も何度も繰り返される攻撃。
それは殺意しか無かった。
「夜空!!一旦離れな!!」
空蛾の叫び声がし、言われた通りに離れる。
空蛾の手から無数のクリスタルが出され、星の元に飛んで行った。
ボォォォォォォォッ!!!
星の周りが炎で覆われクリスタルを溶かした。
「おいおい、いきなり攻撃とは。乱暴だな真維?」
そう言ってジッポーの火を操り煙草に火をつけた。
「恭弥…。」
空蛾の瞳には沢山の涙が溜まっていた。
「久しぶりだな。髪切っちゃったのか。短いのも似合うな。」
「恭弥…。コイツに唆されたの?だから…そっち側にいるの?」
「…。」
「ねぇ!!なんで黙ってるの?答えてよ恭弥。」
「俺は…。」
「和希。お前もこっちに来ちまったみたいだな。」
恭弥と呼ばれた男性の声を遮る様に話し声が後ろから聞こえた。
振り返ると百合の目の前に百合より身長が低い男性が現れた。
瞬間移動でもしたのか!?
いつの間に来たんだよ!!?
「裕二…。お前、何やってんだよ。」
百合が睨みを効かせていた。
「何って?俺は確かめてるんだぜ?」
「確かめるって…。」
そう言うと裕二と呼ばれた人は体に纏っている緑色のオーラを放ち、百合の側を離れた。
星から冷たい冷気を感じて星の方を見ると、周りには氷が沢山できていた。
「星…どうしちゃったんだよ…!?」
「頭お花畑かお前は?この状況見たら俺と晃達が敵対してるって分かるだろ?俺はガイの従者だ。ガイに攻撃をするなら俺達はガイを死守する。それが従者の役目だ。たとえ、それが大切な人であっても殺すだけだ。」
「何だよ…。僕達は敵同士って事かよ。」
きっと残りの3人もここにいる空蛾や闇、百合の大切な人で。
そんな大切な人達と戦わなきゃいけないって事なのか?
全部…全部、コイツの所為じゃないか。
「ガイ…!!お前だけは絶対許さねぇ!!!」
怒りで我を失った僕の棘がガイの方に向かって攻撃していた。
「コイツさえ居なくなれば麦は解放されるんだ!!」
闇も鎖を出し攻撃をする。
それを援護するように百合の霧が星達4人を包み、幻覚を見せる。
そして空蛾は手のひらを床につけクリスタルを地面から出し、一直線にガイに向かって攻撃する。
ガイは不敵な笑みを浮かべ指を鳴らした。
すると百合の霧を裕二の緑のオーラが稲妻のように霧の隙間を払い除け、闇の鎖を弾く様に麦が出した銃と銃弾が飛び交い、空蛾のクリスタルを溶かした炎の火の粉が舞い落ち、無数の棘を星の氷の結晶が凍らせた。
「敵対してるのは本当みたいだな…。」
百合は苦笑いをしながら頭を掻いた。
銃弾が建物や壁に当たり一斉に僕ら目掛けて弾き飛ばされた。
「皆!!妾の後ろに集まれ!!」
白玉の掛け声で僕と3人は白玉の後ろに集まった。
白玉は鎌を大きく振りかざし、竜巻を起こして銃弾を弾き飛ばした。
その銃弾はガイの方向に風と共に飛ばした。
するとガイは時空に歪みを作りそこから小さな王冠が飾られルビーの宝石が沢山付いている杖を出した。
その杖を地面にトンッ、と、軽く地面を叩くと竜巻を一瞬で消した。
「何だと!?」
「青藍の従者は弱いなぁ。こんなのに名前(力)を継承するなんてなぁ。つまんねぇから消すか。」
「星…。間に合わなかったの?」
白玉は悲しそうに呟いた。
間に合わなかった?
何が間に合わなかった?
ガイは今まで笑っていたのにゴミを見るような目で白玉を見た。
そして赤色の無数の弓矢を出して僕らに目掛けて振りかざしてきた。
白玉は風を起こすが弓矢は降り注いでくる。
やばい!!?
そう思って目を閉じると…。
あれ…痛くない?
目を開けると弓矢が動きを止めていた。
まるでそこだけ時間が止まっているかのようだった。
「やれやれ。お前は相変わらずだな。ガイ。」
振り返るとそこにいたのは…。
「っ!?てめぇ…。」
「俺のお気に入りに手出したんだ。それなりの覚悟出来てんだろう?」
「名付け屋の!?」
そこにはサファの宝石が沢山付いているクイーンが持っていそうな杖に跨り空を浮いている青藍の姿があった。
杖から降り、僕達の前に立った。
「とりあえずこの弓矢はお前等に返すわ。」
そう言って弓矢をガイ達の方向に向け、倍の数にして飛ばした。
「させるかよ!!」
星は弓矢を凍らせようと手の平を前に向けた。
他の3人もガイを守ろうとしている。
「邪魔だなぁ。お前等動くな。」
杖をトンッ、と地面に叩き付けると、青色の鎖が4人の足元から飛び出し体を拘束した。
「ッ!?何だよこれ!!全然動けねぇ!!」
「拘束魔法ってやつ?」
「どうなってるの!?」
「くっ!!」
「4人同時に喋るとうるさいなぁ。喋るな。」
指を鳴らすと4人の口を閉じらせた。
魔法で喋らなくさせたのか?
「ッチ!!青藍!!」
ガイは返された弓矢を防ぎ切れず頬と右腕に擦り傷が出来き、血が流れていた。
つ、強い!?
名付け屋めちゃくちゃ強くないか!?
「な、なな。めっちゃ強くね!?」
「俺だからねー♪。白玉もよくやったね。」
そう言って白玉の頭を撫でた。
「っ!やめろ!」
白玉は恥ずかしそうして青藍の手を払い除けた。
「青藍!!貴様…!!」
ガイは青藍と白玉の事を睨みつけていた。
「一丁前に従者4人付けといて弱いだろ。禁忌を犯してんだ。それなりの代償払ったんだろ?その杖もアイツから奪ったみたいだけど使いこなせてねぇだろ。」
「本当にムカつく男だ。今日は顔見せに来ただけだ。勝負はついてねぇよ!?」
「はいはい。とりあえず帰れ。」
そう言って青藍は杖を掲げ時空に扉を作り、5人の体を浮かせ強制退室させた。
パタン!!!!
「皆んな怪我はないかって…無さそうだな…。」
僕達は心にポッカリ穴が空いた状態だった。
「まさか…星が…こんなに早く従者になっていたなんて…。」
白玉が小声でボソッと呟いた。
もしかして…白玉は星の事をよく知っているのか?
「白玉。星の事…本当はよく知ってるの?」
白玉は僕の問いかけに驚いた。
どうやら核心についてしまったみたいだ。
「それは…。」
「教えてよ白玉。記憶もだいぶ戻ったんだ。」
「「「戻ったの!!!?」」」
3人が驚きながら僕の元に駆け寄った。
「嘘でしょ!!?こんな早く!!!?」
「もっと遅いかと思ったけど…。」
「どんだけ早いんだよ!?それで!?」
闇は僕の肩を乱暴に揺らす。
「今日、欠片3個集めたらだいぶ思い出し…って!!揺らすな!!」
「わ、悪い…。」
「ちょっと闇。アンタ興奮しすぎ、鼻息荒くなってるよ。」
「プッ!変態親父って呼ぼっと。」
百合が闇を見てケラケラッと笑っていた。
「百合!!てめぇぶっ殺すぞ!!」
「落ちつきなよ変態親父。」
「空蛾!!お前も百合に便乗すんな!!」
「あはははは!!3人とも落ちつけよ!!」
皆んなの張り詰めていた空気が和らいだ気がした。
「お前等。家壊れちまったからしばらく俺の家に来い。」
「え?名付け屋に住むの?」
「違う、あれと別に仮住まいがある。またガイの野郎が来るかもしんねぇしな。」
「ガイって奴と青藍は知り合いなの?」
空蛾が青藍に尋ねた。
「アイツとは腐れ縁だな。昔から俺に突っかかってくんだよな。まぁそんな話は置いといて行くぞー。」
そう言って青藍は杖に跨り宙に浮いた。
「魔法使いか!!」
「魔法使いだろ。」
冷静な白玉のツッコミを受けた。
僕達は青藍の後についていった。
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