追憶②

僕が目を開けるとそこには小学校の頃の僕が沢山の機械に繋がれて病室のベッドで寝ていた。

「え!?どうして…僕が2人いるんだ?」

病室にある鏡を見ると、写っている自分の体が透けていた。

もしかして…ここからの記憶が欠けている部分なのか?

僕自身も階段から落ちた後の記憶は無い。

母親と父親が心配そうに僕を見ていた。

「父さん、母さん。」

2人を呼んだが聞こえていないみたいだ。

ガラガラッ!

勢いよく病室のドアが開いた。

「晃!!」

汗だくの星が僕をすり抜け寝ている僕の元に向かって行った。

どうやら僕の姿は見えていないらしい。

「晃は目覚めるのかおばさん!!」

「今は眠っているだけだから大丈夫よ。だけど…。」

母が口籠る。

「だけど…?」

「一時的に記憶喪失になっている可能性があるって…。頭を強く打っていて、右足の骨折と、指の骨折が酷くて…。しばらく入院する事になったのよ。」

「そんな…。」

包帯が巻かれ腫れた僕の頬に顔に星は震えながら触れていた。

「なんで晃がこんな目に合わないといけないんだ…。晃は何も悪く無いのに…。」

「星君…。」

母が星の肩を優しく撫でていた。

「アイツのせいだ…。」

星が小声でボソッと呟いた。

アイツ?

星は誰が僕を突き落としたか知っているのか?

「おばさん。またお見舞いに来るよ。晃が目を覚ましたらすぐ教えて。」

「分かったわ。わざわざありがとう星君。」

星はそう言って病室を出て行った。

僕は星が気になり後をついて行った。

ついて行くと星はスマホを操作しながら誰かに電話をかけていた。

「お前等だろ。晃突き落としたの。」

相手は誰だ?

「しらばっくれんなよ。お前らがやったって分かってんだよ。体育館に来いよ。来なかったら分かってるよな?」

星がこんなに怒っている所を初めて見た。

星は自分の家に向かい、キッチンから果物ナイフを取り出しポケットに入れ家を出た。

「星…、お前何する気だよ。」

「ぶっ殺す。アイツら殺してやる。」

僕は止めようと手を伸ばしても星の体をすり抜けてしまう。

僕の声も聞こえていない。

星の行動を止める事が出来ない。

今の星は本当に殺しかねない。

学校に着くとあの3人組が顔色を真っ青にしながら立っていた。

「よぉ。ちゃんと来たんだな。」

「お、俺達…。まさかあんなに大事になるとは思ってなかったんだよ!!」

「ちょっと怪我すればいいって…思って…。」

「わ、悪かったと思ってる…!!!だから…」

「許してくれって?」

星の放った言葉でシーンッと静まり返った。

空気がどんどん重くなるのが分かる。

星はポケットからナイフを取り出し3人に向けた。

「大事になると思わなかったから?単なる事故だから許してって?お前等、頭沸いてんじゃねぇの?怪我させようとしてる時点でおかしい事してるって分かるだろ。」

「お、おい、星…。それ…ナイフ!?」

「お、おおれはコイツがやれって言うから!!!俺は止めたんだ!」

「僕だって!!」

「はぁぁ!?お前等だってやって…ウッ!!」

3人で言い合いをしてる間に入り、1人を殴った。

その手は止まる事なく、殴り続けていた。

周りの2人は止めようとしても星の変わり果てた姿に驚き動けないでいた。

「星!!やめろ!!」

僕の声は当然聞こえていない。

「ごめんなさい!!ごめんなさい!!」

「もうしませんから!!許してください!!晃ばっかり褒められて羨ましかったんだよ!!」

2人は土下座をした。

星は殴るのをやめて、片方の男の子の頭を掴み頭を地面に叩きつけた。

「グッ!!うっ…。」

星は真顔で何回も叩きつけた。

「ヒィッ!!!」

逃げ出そうとした男の子を星はナイフで右の脹脛を切った。

「ッ!?」

脹脛から血が流れ、腰が抜けていた。

カタカタと震えている男の子に星はナイフを頬に当てた。

「お前だけ逃げるって仲間に対して酷いなぁ。」

「殺さないで…お願いします…!!」

男の子は泣きながら訴えるが星は顔色一つ変えない。

「殺しはしないさ。そうだなぁ…お前さ自分で小指の骨折れ。そしたらお前の事殴らないよ。」

「え?」

「さっさと決めろ。晃に手出したんだ。それなりの責任取ってもらう。」

「自分で折れないよ…。折った事ないよ…!!」

「はぁぁぁぁ。」

星は頭を掻きながらダルそうに息を吐く。

「こうやるんだよっ!」

そう言って男の子の右手の小指をいきよいよく反対方向に曲げた。

「ヴッ!?痛い!痛い痛い!!」

男の子は右手を支えながら地面を転がっていた。

「いいか。今回はこのぐらいにしといてやる。もう二度晃に手を出すな。目を合わせるな。この事、誰かに言ったら…わかるよな?」

男の子は頭を何度も縦に振った。

「後の2人にも言っとけ。」

「星…。」

僕はただ星の背中を見つめる事しか出来なかった。

星は僕の為にやってくれた事だ。

だけど…。

これはやり過ぎだ。

「アハハハハ!!お前面白いな?」

「誰だ?お前。」

星の前に1人の男が立っていた。

「いやいや。馬鹿にしたわけじゃないぜ?お前みたいに頭イカれてる奴は好きって事。」

そう言って笑いながら星の髪を撫でる。

その男は腰まである灰色の髪、前髪は長く左目しか見えていない。

猫みたいな黄色の瞳で、病弱な肌の色に沢山の縫い目があり、口のピアスは耳と繋がっていて、顔にも沢山のピアスがある。

身長がめちゃくちゃ大きい。

「イカれてなんかない。晃に怪我させた事を後悔させたかっただけだ。」

「ふぅん。」

「何だよ。」

「いやー。別つに?また会いにくるわ。それまでにちゃんと育ってるかなぁー。楽しみだなぁ。」

「何、訳わかんない事言ってんだよ。てゆうか何者?」

男は不気味な笑み浮かべ「君の理解者になれる者かな?」っと呟いた。

「全然答えになってないじゃん。」

「まだ君は子供だからね。分からなくてもいいさ。またね。」

そう言って男は黒い扉を出し、姿を消した。

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