追憶①

晃side

朝になりリビングに降りると、3人は家には居なかった。

「昨日の事がやっぱり気になるよな…。」

僕の記憶が、どこか一部欠けているって事か?

3人の話を所々しか聞いていないけど、多分そう言う事だろう。

白玉も僕自身が思い出さなきゃいけないって言っていたし。

とにかく、今は集めれるだけを欠片を集めないと。

僕はガラスの地球儀を手に持ち外に出た。

体の傷は寝ている間に治っていた。

空蛾の言っていた通りだな…。

普通の人間より治癒能力が高くなっているんだ。

この刻印のおかげなのか?

僕はふとある事に気付いた。

あれ?白玉がいない?

珍しく白玉の姿もなかった。

今日は、この世界に来て初めての1人行動だな。

僕は地球儀から出る一筋の光を頼りに化け物を探す。

欠片を集めると頭の中に流れてくる記憶と何か関係しているんだろうか。

光が消え前方に目をやると、化け物が3体歩いていた。

一気に3個の欠片が集まる!

僕は鎌を出し1番後ろにいる化け物の首を刎ねた。

「ギュイイイイイイン!!!」

化け物の叫び声が町中に響き渡る。

そして、僕は化け物が振り返る前に素早くもう一体の化け物の背後を奪い、鎌を大きく振る。

巻き付いていた薔薇の棘が化け物に向かって行き、化け物の体に巻き付いた。

化け物の動きが鈍くなったのを確認し、壁に向かって走り勢いに任せて体を浮かし回転しながら化け物の頭を落とした。

「ギュイイイイイイイン!!!」

「はぁ…はぁはぁ。」

最後の一体の攻撃が、腕や頬を擦り血が流れる感覚がした。

荒れた息を整える為に地面に座り込んだ。

すると化け物は棘を鋭い爪で引きちぎり、僕の方に向かって来た。

化け物の攻撃を地面を転がりながら避けた。

どうやら、棘を出し過ぎると体力をかなり吸われるらしい。

視界がぼやけ頭がボーッとして化け物の姿が見えにくくなった。

「ギュイイイイイイイン!!!」

「ッ!」

化け物が右手を振りかざして来た。

攻撃を避ける事が出来ず、もろに右腕に直撃した。

鋭い痛みが全身に響き渡る。

ボーッとしていた頭が痛みのおかげで、スッキリとした。

浮いている欠片を化け物に取り込まれる前に素早く回収し小瓶の中に入れ、一旦距離を取るために後ろに下がった。

ズキンッズキンッ!!

頭に鋭い痛みが響いた。

痛ってぇ!!

むちゃくちゃ痛てぇ!!

とりあえず…あの記憶みたいなのが流れて来ないな…。

流れてくる前に早く化け物倒さないと…。

僕は集中するために目を閉じて鎌を構えた。

空気が冷たくなるのを感じる。

目を開けると、僕の周りに沢山の棘が舞っていた。

僕の意思でこの棘を操れるのか?

試しにやってみるか…。

僕は心の中で、「化け物の動きを止めろ」っと強く念じた。

すると、周りで舞っていた棘が一斉に化け物の方に伸びて化け物の体に巻き付き動きを拘束していた。

「おおお!出来た!」

これで、僕の意志で好きに棘を動かさせる事が分かった。

それだけ分かれば、化け物との戦い方を考えられるし、やりやすい。

僕は化け物の目掛けて走り出し大きく鎌を振りかぶった。

「ギャアアアアアイ!!!!」

化け物のから欠片が取り出され消えて行った。

「はぁぁ…。疲れた…。」

飛んで来た欠片をキャッチし、地面に座り込んだ。

キラキラと輝く月の形をした欠片を小瓶に入れる。

ズキンッズキンッズキンッ!!!

頭にさっきとは比べ物にならない痛みが頭全体を走る。

「うっ!おえっ…。」

頭の痛みに耐えれなく、吐いてしまった。

水しか飲んでいないので吐く物が水分しかない。

するとふっと目の前が暗くなり、意識が飛んだ。

あれは…僕と星が小学校のグラウンドでサッカー部の活動をしている所だ…。

星のパスを僕が受け取り、シュートを決めた所だった。

「お!!柳瀬!流石だな!!」

「やったな!晃!ナイスシュート!」

「星のパスがあったからだよ!」

僕と星はハイタッチをした。

その光景を妬ましく思っている男の子達が見ていた。

「アイツ、調子乗ってるよな」

「先生に褒められてるからって調子乗り過ぎだよな。」

「アイツ、星以外にあんまり笑わないから生意気だよな。」

どうやら僕の事を嫌っている子達が居たらしい。

悪口を言われている事に僕は気付いていなかった。

だけど、星だげが、悪口を言っている子達を睨んでいたんだ。

そんな事すらこの時の僕は気付いていなかった。

修学旅行の班決めの時、僕の所に真っ先に星は来た。

「晃!!一緒に組もうぜ!!」

「いいよ!」

すると、同じクラスのサッカー部の3人組が僕達の所に歩いて来た。

「星達の班に入れてくれよ!!」

「は?他にも班あるだろ。」

星が睨みつけながら威嚇していた。

僕は何で星が睨んでいるのか分からなかった。

「他の班はもう人数埋まってんだよー。頼むよ!晃!いいだろ?。」

3人組の人が僕の方を見た。

「別にいいよ僕は。星は?」

「晃がいいならいいけど…。」

「ありがとな晃!あとは女子だな…。おーい!」

僕がそう言うと勝手に女子を呼び、着々と話が進んでしまっていた。

来た女の子達は星のファンの子達で、すごく喜んでいた。

僕は何でもいいけど、星はあからさまに嫌がっていた。

その日夜、僕は星の部屋を訪れた。

「晃!!どうした?」

「大した用事じゃないんだけど…。いい?。」

「いいよ!あ!ちょっと待ってろ!お茶持ってくる!」

星は満面の笑顔でお茶を取りに行った。

僕は星の持ってきてくれたお茶を飲んだ。

「それで!用事って何だ?」

「修学旅行の班決め時さ…。星が嫌そうにしてたのに、僕がいいよって言って班に入れちゃったから…。」

「晃のせいじゃねぇよ!気にすんな!あの3人組が好きじゃないだけだからさ。」

「え!!?そうだったんだ…。ごめん…。」

僕がそう言うと星はオロオロし出した。

「えっ!?ちょっ!晃は悪くねぇじゃん!」

「だけど…。」

「俺は晃さえ居ればなんだっていいからさ。気にすんな。それにさー、晃は気使ってアイツら入れてやったんだろ?なら別に気にしてないから。」

「う、うん…。ありがとな星。」

星はいつも僕の意見を聞いてそれに合わせてくれていた。

星の優しさに僕は甘え過ぎていたんだ。

修学旅行当日。

僕と星は一緒に登校し、教室でバスが来るまで待機していた。

「楽しみだな晃!後でおやつ交換しようぜ!」

「どうせお前チョコレートばっかだろ?」

「ぐ!?何で分かった?!!」

「何年の仲だと思ってんだよ…。いいよ。」

「やった!!」

「おーい!!バスが到着したぞ!校門に向かうから、班順に並べー。」

担任の先生がクラスの皆んなを廊下に誘導し修学旅行の班順に廊下に並べた。

僕達の班は1番最後に並んだ。

他愛のない話をしながら歩いていると後ろからすごい勢いで背中を蹴られた感触がした。

体が宙に浮き階段から勢いよく落ちた。

体が言う事を聞かず、段差を転がり頭を強く床に打ち付けた。

「晃!!?おい!?」

星の声が遠くで聞こえる。

指が変な方向に向いている感覚がする。

体も重く右足が異常に痛い。

僕の意識が無くなる途中、あの3人組がこちらを見て笑っていた。

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