愛する人の為

空蛾side


ベットで横になりながら欠片の入った小瓶を見つめた。

きらきらと輝やく欠片は、やけにあたしの目についた。

「恭弥(キョウヤ)…。」

小瓶を握り締めて目をつぶった。

あたしの家庭は普通の幸せな家庭じゃなかった。

父は仕事人間で家にはまったく帰って来なかったし、そんな父を母は不満に思っていた。

あたしの事より、父の事を愛していた母は、父が帰って来ないストレスをあたしにぶつけていた。

暴力を振るわれ、食事もまともに与えてくれなかった。

そんな生活が嫌だった。

高校3年生、普通なら楽しいスクールライフを送っているだろう。

だけど、あたしはそんな感じじゃなかった。

学校であたしは誰とも関わろうとしなかった。

人に興味がなく、周りもあたしの事を怖がっていたし、授業もサボっていたから余計に人と話すきっかけが無かった。

そんなあたしを気にかけてくれた人が1人いた。

「おーい!斉藤真維(サトウマイ)!飯食ってるか?」

頭を軽く出席簿で叩かれた。

振り向くと担任の櫻井恭弥(サクライキョウヤ)が立っていた。

歳は31歳。オレンジが混ざった茶の髪は寝癖でぼさぼさ。色素の薄い茶色の瞳はいつも眠たそうな顔をしていてラフな格好がとてもよく似合っていた。

「いつも同じ事質問して飽きない?」

「生徒の体調を気にかけるのは当たり前の事だろ?顔色悪いけど平気か?」

あたしの顔を覗き込んできた。

先生はいつもあたしの体調を心配していた。

「大丈夫だよ。それより顔近いから離れてよね。」

そう言って先生の体を押した。

「おっと!お前がまぁ…大丈夫って言うなら良いけど何かあったら相談しろよ?」

「分かったよ。」

そう言うと先生は満足そうな笑みを浮かべて教室に入っていった。

先生はクラスでも人気だった。

とくに女子から。

教室で人間観察をしていると先生に群がっている女子の目はハートになっていた。

「先生ー!彼女居るのー?」

「彼女?しばらく居ないなぁ。」

「じゃあ私、彼女候補に立候補する!!」

「私も私も!」

「ガキには興味ないよー」

先生は軽々と生徒をあしらっていた。

年下には興味無いんだろうな。

別に興味ないけど。

捲れていた袖の中から母に殴られた痣が見えた。

母に殴られる毎日、父に会っても顔を一瞬見て仕事で出掛けて行く。

母の暴力が嫌になり一度警察に行こうとした時があった。

だが、その途中に母に見つかり家に連れ戻され部屋に1週間閉じ込められた。

それがきっかけで、警察に相談するのはやめた。

学校が終わり、あたしは家に帰りたく無いと思い誰もいない教室に残っていた。

家に帰れば、また母に暴言を吐かれ殴られる。

一回だけ、母に一人暮らしをしたいと言った事があったけどそれが母の逆鱗に触れたらしい。

「アンタも私を1人にするの!?許さないわよ。アンタは私の物なんだからそんな事を言うのは許さない。なんで?アナタも私の事を苦しめたいわけ!?」

そう言って母はあたしの頬を叩いた。

母は一体何がしたいのだろうか。

あたしが家に居るのも気に入らない、家を出るのも気に入らない。

「あたしって生きてる意味あんのかな。」

ガラガラッ!!

教室のドアが開く音が聞こえ振り返ると先生が驚いた顔をしてこっちを見ていた。

「斉藤?お前こんな時間まで何してんだ?下校時間過ぎてるぞ。」

「帰りたくないから。先生こそ忘れ物?」

「そうそう、今日集めた日本史のノート持ってくの忘れてな。斉藤…腕のその痣どうした?」

あたしは捲っていた袖を慌てて下ろした。

「なんでもないよ。」

「なんでも無いわけないだろ。見せろ。」

先生が怒っているのが分かった。

先生は滅多に怒らないので、言う事聞いといた方が良さそうだな…。

そう思いあたしは観念して腕の袖を捲り、先生に腕を見せた。

先生はあたしの腕を優しく掴み、泣きそうな顔をしていた。

「ちょっ…何で…。先生がそんな顔すんのよ」

「気付いてやれなくてごめんな…。」

「先生は何も悪くないじゃない…。」

あたしはそんな先生を見て泣きそうになった。

「それ、暴力振るわれてるよな?」

あたしはコクリと頷いた。

「お母さんか?」

「うん…。」

「いつからだ?」

「中1くらいから…。」

「5年間我慢してたんだな…。お前が何か悩みを抱えているのは分かったてた。だから斉藤が自分から話してくれるのを待ってた。よし、お前の家行くぞ。」

先生は突然あたしの家に行く宣言をした。

「はぁ!?」

「ほら、早くカバン持って校門の所で待ってろ。車回してくるから。」

「ちょっちょっと!!」

あたしの返事を聞かずに先生は出て行った。

「何なのよ一体…。」

あたしはカバンを持ち教室を出て校門で先生を待った。

先生が乗っている車が校門に到着し、あたしは助手席に乗りあたしの家に向かった。

「何であたしの家に行くのよ。」

「お前が我慢する事はないんだよ。そのうち斉藤の心が壊れちまう気がしてな。お母さんと話しをする必要があると思ってな。」

「何でそこまでしてくれるのよ…。」

そう言うと先生は苦笑いをしながら、学生の頃暴力を振るわれていたと言った。

「先生も?」

「あぁ。俺は親父に暴力振るわれててな、母親は見て見ぬふりをして、親父が居ない時は優しかったんだ。近所の人が警察に通報してくれて親父が捕まって、暴力は無くなった。だからお前の事放っておけないんだよな。」

先生も、あたしと同じ経験をしていたのか。

だからあたしを助けようとしてくれてる。

偽善者ぶっているのかと思っていたけど、そんなんじゃなかったみたいだ。

あたしの家に着き、先生がインターホンを鳴らした。

あたしが不安な顔をしていたのか、先生は「大丈夫だ。」と言ってくれた。

「どちら様ですか…ってあら担任の…。」

「櫻井です。突然の訪問してしまい申し訳ありません。真維さんの事でお話ししたいのですが、よろしいですか?」

先生がそう言うと母親はあたしの方を見て嫌な顔をし、渋々家にあげた。

ソファーに先生とあたしが隣同士ですわり、母は向かい側に座った。

「それで?お話しってなんですか。うちの真維が学校で何か問題を起こしましたか?」

母は太々しい態度で先生に話しかけた。

先生は、母の態度は気にしてない様子で堂々としていた。

先生は単刀直入に母親に質問をした。

「お母さん、真維さんに暴力を振るってますよね?」

「あたしが娘に暴力を?するわけないじゃないですか。何を根拠にそんな事言うのよ。警察呼ぶわよ!?」

母親の逆鱗に触れたらしく机を強く叩きつけた。

だが、そんな母を見て先生は何一つ動揺していなかった。

「真維さんの腕の痣を見ました。そして痩せ細っている体を見たら明らかに栄養が足りてない証拠です。お母さん、ろくに食事与えていませんよね?」

「そんなのであたしが暴力振るってる証拠にならないでしょ!?この子が嘘ついてるだけじゃない。食事もちゃんと与えてます!!変な言いがかりやめてくださるかしら。」

あたしを悪者にしようとしてくる母の姿はもはや悪魔としか思えなかった。

「部屋を見ても、掃除やご飯を作った形跡も無い。むしろ荒れている。証拠と言うなら真維さんの体についている傷だ。警察を呼んでも構いません。ですけど、捕まるのはお母さんの方だと思いますよ?」

「何ですって!?」

「児童相談所に相談させていただきます。これ以上真維さんが暴力を振るわれるのは我慢なりませんから。」

「な!!?」

先生はあたしを見て優しく微笑んだ。

「真維さんの事、愛しているなら変わってください。真維さんにはお母さんの愛が必要です。」

「先生…。」

「帰ってください…。」

そう言った母親はどこか弱々しかった。

こんな姿は見た事が無かった。

あたしは先生を玄関まで送った。

「先生…今日はありがとう。」

「大した事じゃねぇよ。それと…。何があるか分からないから連絡先交換しとこうぜ。」

「分かった。だけど連絡先交換してまずくない?」

「お前は口堅そうだから大丈夫だろ。」

「まぁね。わざわざ周りに言う事じゃないしね。」

「そう言うとこサラッとしてるよな。」

先生はケラケラと笑いスマホを取り出し連絡先を交換した。

「何かあったらすぐ連絡しろよ?分かったな?」

「分かったよ。ありがとね、先生。」

「じゃあまた明日な。」

そう言って先生は車を走らせた。

あたしは先生の車を小さくなるまで見つめていた。

ドクンドクンと胸が高鳴る音がした。

あれ?何であたし先生にときめいてんのよ…。

その日の夜、母は何もしてこないで、何年振りかに手料理を作ってくれた。

会話は無いけど、母が少しだけ変わった気がした。

もしかしたら前のお母さんに戻ってくれるかもと期待した。

だけどその期待は叶わなかった。

あたしはお風呂から上がりベットに横になった。

今日の出来事を思い出していた。

先生には感謝しかないな…。これでお母さんが変わってくることを祈ろ…。

いつの間にかあたしは眠りについていた。

ガサゴソッ

物音が聞こえる…。

ゆっくり目を開けてるとそこには母親が立っていた。

手にはバットが握られていた。

あたしはびっくりして体を起こすと、母がゆっくり振り返り、あたしの事を睨みつけていた。

「ちょっ…お母さん?何してるの?」

「アンタなんか産まなきゃ良かったわ。皆んな死ねばいいのよ。アンタが死んだら私は楽になれるわ…。ねぇお母さんの為に死んでくれるわよね?」

変わる気なんて全然無くって、むしろ母は、あたしをゴミを見るような目で見ていた。

あぁ…お母さんはあたしの事を愛した事が無いんだ。

本当に死んで欲しいと思っているのだ。

母がバットであたしの右腕を殴った。

「いった…!!」

右腕に激痛が走った。

痛い、痛い。

怖い、怖い。

本当に殺される!

あたしは何とか部屋を出て、叫んで追いかけてくる母から逃げた。

家を出て近くの公園に逃げ込んだ。

どうしよう、どうしよう!!

誰か…誰か…。

そう思いスマホを開いた。

そこには登録したばかりの担任の名前があった。

「先生…。先生…。」

あたしは通話ボタンを押し、スマホを耳に当てた。

先生…お願い!電話に出て!

プルルル…プルルル…プルルル…プルルッ

「もしもし…?」

先生の声が耳に響いた。

「先生!!」

あたしはホッとして大声を上げてしまった。

「斉藤?どうした。」

「お母さんに殺される…!助けて!」

「分かった。お前、今、何処に居る?すぐに行くから教えてくれ。」

「近くの公園…に居る…。」

「分かった。そこ動くなよ。俺が来る前に警察に連絡入れとけ。すぐ行く!」

そう言って電話が切れた。

先生が来てくれる…良かった。

あたしは先生に言われた通り警察に連絡しようとした。

その時、母が奇声を上げながらバットを振ってきた。

あたしは何とか避けたが、足を躓いてしまい、その場で転んでしまった。

そして母はあたしの上に跨り、頬を殴って来た。

「やめて、やめてよ!痛いよ!お母さん…。」

「アンタが言う事聞かないからでしょ。大人しくしなさいよ。私の事、楽にしてよ。アンタなんか居なくても誰も困らないわよ。」

あたしは今までだったら我慢できた言葉だったが、今日は駄目だった。

涙が溢れ出てしまった。

もう抵抗する気力無かった。

すると母の手を後ろから掴み、あたしから引き剥がし、あたしを庇うような体勢で母の前に立った。

「先生…!」

「大丈夫かって…。大丈夫じゃないよな。もう大丈夫だから。」

そう言って先生は母を睨み付けた。

「お母さん。こんな事して良いと思ってないよな?アンタのした事は犯罪だ。これ以上、一緒には居させれない。」

「はぁぁ?アンタには関係ないだろうが!!」

「関係ある。これ以上下手な事しない方がいいぜ?」

先生がそう言うと先生が呼んだだろう警察官が母を捕らえた。

母は暴れていたがパトカーに乗せられて先生は警察官に事情を説明していた。

あたしも事情聴取を受けた。

あたしの腕を見てもらう為に病院に連れて行って貰った。

勿論、先生はずっとあたしに付き添ってくれた。

病院に着き、腕を見てもらうとヒビが入っていた。

そして栄養失調と診断され、しばらく入院する事になった。

先生が父に連絡をしてくれたらしく、父はすぐに来てくれた。

父は先生に頭を下げ、泣きながらあたしに謝って来た。

父はあたしと一緒に暮らす為に仕事をしていたと。

母の異常なあたしへの態度を見て何度か離婚を申し出たが母が暴れて話しにならなかったらしい。

父に抱き締められ、あたしは泣きながら父に抱き着いた。

「お父さんっお父さん!!」

「真維、ごめんな。ごめんな、こんなお父さんで、もう大丈夫だからな。お母さんと離婚して一緒に2人で頑張ろう。」

父はあたしの事を愛してくれていた。

あたしの事を愛してくれる人がいた。

そんな光景を先生は微笑みながら見ていた。

入院の間、先生はお見舞いに毎日来てくれた。

連絡も取っていた。

今日はいい天気だとか、面白いのがあったとか、日常の報告をしてくれた。

あたしは段々と先生に惹かれていった。

入院最終日の夕方、先生はいつも通りにお見舞いに来ていた。

「斉藤、これ2週間分の日本史のプリントな。」

「ありがとう。先生。毎回お見舞い来てくれてありがとね。」

「お前の顔見たかったし、お礼言われる事じゃないよ。」

そんな言葉にあたしはドキドキした。

先生からしたら大した言葉じゃないのだろう。

こんな言葉を本気にしちゃ駄目だ。

あたしは自分に言い聞かせていた。

「先生。そんな事言っていーの?あたしは勘違いしないけど、他の子なら勘違いしちゃうよー?」

あたしは冗談ぽく先生に言った。

すると、先生は笑い飛ばす訳でも無く、真面目な顔をしていた。

「冗談じゃないって言ったらどうする?」

「はぇ?」

「軽い感じでそんな事言わねーよ。お前だから言ってんだよ。」

頭の中が真っ白になった。

何を言ってるんだ?

それじゃあ、まるで先生はあたしに会いたくてお見舞いに来てるっ事?

「先生…はあたしの事…を…。えっと…?」

「ん…。まぁそう言う事…。」

先生は顔を赤らめながら顔を掻いていた。

「あたしの事好きなの?」

「お前は気持ち悪いと思うかも知れないけど…。斉藤の事好きだよ。生徒としてじゃなくて、女の子として好きなんだ。」

「先生…。あたしも先生の事好き…。」

「その…嫌じゃなかったら抱き締めてもいいか?」

「うん。」

そう言うと先生は優しくあたしを抱き締めた。

あたしと先生はこの日から付き合う事になった。

それからは学校では喋らないようにして、たまに先生の家でご飯を食べたり、泊まったりしていた。

極力、周りにばれないようにした。

2人の時は名前で呼び合っていた。

「真維。卒業したら一緒に住もうか。」

「うん!住みたい!恭弥と一緒に住みたい!」

あたしは恭弥に抱き付いた。

学校を卒業したら一緒に住もうと約束していた。

もうちょっとで一緒に住める。

あたしは幸せの絶頂だった。

だけどその幸せが音を立てて壊れ始めた。

それはある日のホームルームの事。

担任である恭弥では無く、副担任が入って来て、暗い雰囲気がクラス中に広まった。

「突然だが、昨日櫻井先生が亡くなった。」

え?何…を言っているの…。

恭弥が死んだ?

意味が分からない…。

副担任はスラスラと話を進めていた。

恭弥は部屋のドアノブにタオルを引っ掛け、そのタオルを首に巻いて死んでいたと。

夕方、先生のお通夜が行われるらしく、学校が終わり、皆んなでお通夜が行われている会場に向かった。

そこには沢山の泣いている人たちと、笑顔の恭弥の写真が飾られていた。

本当に恭弥が死んでしまったの?

信じられない…。信じない。

あたしは会場を出て、恭弥の家に向かった。

恭弥に貰った合鍵を使い部屋に入った。

「恭弥!!恭弥…?寝てるんでしょ?ねぇ…。返事してよ!」

あたしは部屋中を探した。

だけど恭弥は何処にも居ない。

あたしは泣き崩れた。

どれだけ泣いたか分からないほど時間が経っていた。

泣きすぎていたい瞼を開けると、テーブルには沢山の封筒が置いてあった。

その封筒を開けて見てみると、あたしと恭弥が写っている写真が沢山入っていた。

それと一通の手紙が入っていた。

手紙を見ると、どうやら教育指導の先生が恭弥に、あたし達の関係をバラされたく無かったら金を寄越せ、俺の言う事を聞け。

脅しの内容だった。

「な、なにこれ…!!」

恭弥は嫌がらせ受けてたって事?

だけど、そんな事一言も言ってくれなかった。

いや…ちがう。

言ってくれなかったじゃなくて、言えなかったんだ。

あたしは恭弥の置いてあったスマホを開きスマホの中を見た。

そこには嫌がらせのメールや脅しのメールが沢山送られていた。

「恭弥は1人で耐えてたんだ…。なのに、あたしは何も知らないで…。」

するとあるサイトが目に入った。

「MADA…?まーだ?」

そこには自殺方法と死後の行き方が書かれていた。

「恭弥…。死にたかったの?」

するとあたしの周りに白い霧が集まっていた。

「な、何!?どうなってんの!?」

霧の量が多くなりあたしを包んだ。

すると目の前には恭弥の部屋では無かった。

目の前にはスラム街の街並みが広がっていて灰色の空に浮かぶ沢山の家、鼻につくガスの匂い。

「ここは一体…どこなのよ…。」

状況が判断できていなかった。

コツコツと誰かが歩いてくる足音が聞こえた。

足音があたしの後ろで止まり、恐る恐る振り返るとフードを被った小さな女の子が立っていた。

「あの…。ここは一体…どこ?」

「死後の世界だ。」

「死後の世界!!?」

「お前はMADAに選ばれた者だ。」

「一体なんなのよ…。選ばれたとか死後の世界だとか…。説明してくんないと分かんないのよ。」

死後の世界だとか選ばられた者?

「お前は愛する人を自殺に追い込んだ物に殺意が湧いただろう?それがMADAに選ばれたと言う事だ。そしてこの世界はお前の愛する人が死ぬきっかけを与えた人物がいる。」

「それって!?恭弥は望んで自殺をしたんじゃないって事なの!!!?。」

あたしは女の子の腕を掴んだ。

「教えて!恭弥を死に追いあった奴を教えて!」

「それはこの世界にいる。お前はまず、欠片を集めなければならない。」

「欠片…。」

「今は一時的にこの世界を開いた。もう時間がない。お前がこの世界に来てから話す。」

女の子がそう言うとさっきの白い霧があたしを包んだ。

「んっ…?」

目を覚ますと恭弥の部屋に戻って来ていた。

分かんない事ばかりだったけど、恭弥はの死は仕組まれたって事は分かった。

ならあたしは死後の世界に行き、そいつの正体を知る必要がある。

あたしはらもう一度、MADAのサイトに目を通した。

そして、あたしは満月の夜に、自殺をする事を決意した。

満月の夜の日、あたしは自分の部屋にある鏡の前に立った。

あたしは胸下まであった髪をハサミでバッサリ切った。

これはあたしなりの決意の表しだった。

「恭弥…。」

そして、あたしは買っておいた睡眠薬の入った瓶を持ち、中に入っていた錠剤を全て飲んだ。

ベットに横になると、強烈な睡魔があたしを襲った。

瞼が重くなり、目を閉じると、そこは死後の世界と呼んでいいのだろうか、恭弥が死んだ日に見た世界に居た。

「良かった…!来られたんだ!」

「よく来たな。待っていたぞ。」

目の前にあの女の子と猫が立っていた。

「教えてくれるんだよね。恭弥を死に追いあった人の事、そして欠片の事を。」

「あぁ。その前に名付け屋に行くぞ。」

「名付け屋?」

「この世界で生きる為に必要な事だ。」

そう言って、女の子は歩き出し、あたしはその後を追った。

名付け屋の男の子、青藍と2人っきりで話す事になった。

ここに来た経由について聞かれたので話した。

「そうか。お前の初恋だったのだな。愛する人の為に死ねるってのは本当の愛だと思うぜ?お前の愛で救ってやれ。お前の事、俺は気に入ったぞ?」

何故だろう…。初めて会った人なのに心に響く

あたしは目からポロポロと涙が流れた。

「空蛾。今日からお前の名前は空蛾だ。」

こうして、あたしは空蛾と言う名前を貰った。

白玉から、欠片を集めなければ恭弥を助ける事が出来る事、そして、恭弥を死に追いやった人の正体は、もう1人、この世界に来て、先にこの世界に来ていた人物、4人が揃った時に話すと。

そして、鎌の出し方、あたしの能力はクリスタルを出せる事、欠片をこの小瓶に貯める事。

あたしは先に来ていた人達と会った。

話してみると、2人ともどうやら同一人物の人が関係していると。

そして、夜空が来て、4人揃ったのに、白玉はは話さない。

傷だらけの夜空が闇に担がれて、自分の部屋で寝ている間、あたしと闇、それに百合と白玉4人で、話し合いをすることにした。

そして、闇の怒りが頂点に足し、白玉につかかっていた。

ようやく聞けたのは、夜空の記憶が戻ってから話すと言い出した。

夜空が関係していると思った。

夜空がリビングに来て、闇が白玉の胸ぐらを掴んでいるのを止めに入り、記憶の話を聞いていた。

だけど、本人も訳が分からない状態だった。

そして、それぞれリビングを出ていた。

他の3人は夜空に対して疑惑の目でみるようになってしまった。

あたしは恭弥を助けたい…。

その為ならなんだってする。

たとえ…それが殺す事になったとしても.…。

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