MOONSTONE
懐かしい夢を見た。
小学校6年生の卒業式の夢を見た。
卒業式が終わり僕と星は学校中を周りながら、思い出話しに花を咲かせていた。
その頃からだろうか。
星のあの言葉が口癖になっていた。
「俺は晃しか信じれないんだよな。」
「僕も。星しか信じて無いよ?だって僕達、親友じゃん!」
そう言うと星は満面の笑顔で僕の頭を撫でた。
今思えばあの言葉の本当の意味はなんだったんだ?
親友だから信じれる…。そんな単純な言葉じゃ無かったのか?
「夜空。おい。起きろ」
「ん…。?」
目を開けると昨日の服装とは全く違う白玉がいた。
大きめのGジャンを羽織って中には黒のキャミソールのワンピースを着ていた。
「白玉?おはよ…。昨日と服装違うみたいだけど着替えたんだ。」
「もう。顔を隠す必要は無いからな。夜空の服も持ってきたぞ。いつまでも制服のままだと不便でしょ。妾はリビングに行っておるから。」
そう言って白玉は出て行った。
屋上で自殺したから学ラン着たまんまだったな。
と言うか、顔を隠す必要が無い?
何でだろう?
まぁ、深い意味は無いのかな。
そう思い白玉の持ってきた服に着替えた。
ブカブカのスカジャンに、白いTシャツ、ダメージの効いたスキニーデニムだった。
僕の好みの服装だった。
着替え終わったので僕は一階のリビングに向かった。
リビングに行くとコーヒーの匂いがした。
ここに住んでいる3人が揃ってソファーに座っていた。
「おはよう。夜空。」
百合がコーヒーを飲みながら挨拶してきた。
「おはよー百合。空蛾と闇もおはよう。」
「あぁ。俺が寝てる間に百合が紹介してたんだったな。おはよ。」
「おはよう。夜空。」
闇の怪我は良くなっていたみたいで顔色も戻っていた。
空蛾も軽く挨拶してくれた。
闇の印象はすごく怖い人だと思っていたけど、昨日とは違って柔らかい雰囲気を、纏っていた。
「夜空、お前コーヒー飲めるか?飲めるならコーヒー淹れっけど。」
闇がコーヒーポットを持ち、コーヒーを淹れようとしていた。
「僕、コーヒー飲めないだよね…。コーヒー苦いから。」
そう言うと闇はコーヒーカップにコーヒーを注ぎ、その中にミルクと砂糖をたっぷり入れた。
「ほい。カフェオレなら飲めるか?」
「え!。あ、かりがと!」
僕は差し出されたコーヒーカップを受け取った。
「闇、口悪いけど良い奴なんだよ。な、闇」
そう言って百合は闇の頭を乱暴に撫でていた。
「てめぇ百合!うるさいって言うか…頭撫でるな!」
「こう見えて、2人は意外に仲良いのよ。」
空蛾はその光景を微笑みながら見ていた。
あまり笑わない印象だった空蛾だけど、笑ったりするんだな。
「3人ともあとどのぐらい日にちが残ってるの?」
そう尋ねると、アイスミルクを飲んでいた白玉が口を開いた。
「百合は残り30日。闇は39日で、空蛾は40日だな。3人とも既に小瓶の半分程の欠片を集めている。」
「皆んなバラバラなんだな…。」
「さて、夜空。行くぞ。」
そう言って白玉は僕に中身の無い小瓶を渡した。
空蛾が持っていた小瓶と同じ物だった。
僕も早く欠片を集めないと。
その為に来たんだから。
僕はカフェオレを飲み干し、ソファーから立ち上がった。
「ご馳走でした!それじゃあ行ってきます。」
「気抜くんじゃねーぞ。」
「ありがとう!」
闇の助言を聞いて、僕と白玉はリビングを出た。
ーリビングでは
「優しいねー闇君は。」
「うるせぇ。」
「ねぇ。2人もあたしと同じ疑問持ってるんでしょ。」
空蛾は2人をジッと見つめた。
闇は煙草を咥え火をつけ、フゥッと一息ついた。
「白玉が四六時中、夜空と一緒にいる事だろ?」
「監視って言っていたが、俺等の時は、名付け屋に一緒に行って、ある程度ここのルールを教えて、あんまり俺等の前に現れなかったよなな。」
「そうね。あたし達の周りをずっとは居なかった。そして、ここの住宅に一緒に暮らす事も無かったわね。」
空蛾と闇は謎に思っていた。
百合は顎に手を当てながら小さく呟いた。
「もしかして…。特別扱いしているのも、夜空の側を離れないのも…。あの人という謎の人物と関係しているのか?」
リビングでは白玉と夜空の関係について話していた。
夜空side
白玉は外に出ると僕にガラスの地球儀を渡した。
「これは?」
「これは星の欠片を持っている化け物の居場所を教えてくれる欠片探知機みたいなものだ。」
その地球儀から一筋の光が左方向に向かって光っていた。
太陽が出ていない灰色の空の暗さのおかげでよく光が見える。
「この光について行けば、星の欠片を飲み込んだ化け物が居るのか…。」
「そうだ。」
「早く行こう白玉!」
僕は光の指す方向に走り出した。
すると、光が途絶え、あの化け物が居た。
僕と白玉は化け物に気づかれないように物陰に隠れた。
「いいか。夜空、良く聞け。この化け物達はお前が1人で戦って欠片を集めないといけないんだ。」
「白玉の力を借りずにって事だね。」
「そうじゃないと意味ないからだ。」
「意味がない?」
「お前が星を助けたいと言う強い思いが無いと、欠片を取り戻す事が出来ない。それとお前の鎌の力もお前の意志が強ければ強いほど本来の鎌としての力が発動する。思いが強いほど、鎌もそれに答えて力を出すんだ。」
「意志の強さ…。」
「妾はただ見守る事しか出来ないんだ。」
白玉は悲しそうに呟いた。
僕は軽く白玉の頭を撫でた。
「大丈夫だよ白玉。まだどうやって戦ったらいいか分からないけど…」
「化け物の中に取り込まれた欠片を取り除けばいい。人間で言う心臓の場所に欠片はある。」
「分かった。実戦あるのみだな.…。」
僕は目を閉じ、自分の鎌を出した。
息を整え、僕は化け物が後ろを向いた瞬間に飛び出した。
頭落とせば動かなくなるはず!
そう思い僕は鎌を頭に向かって振りかざした。
すると化け物は振り返り僕の鎌の歯を右手で止め、左手僕の上着の首元を掴みを左にある建物に向かって投げ飛ばした。
「夜空!!?」
空中で身動きが出来ないまま投げ飛ばされた。
ガシャーン!!!ッ
「ガハッ!!!」
窓ガラスに叩きつけられ、その勢いでガラスは割れ、破片がいくつか体に刺さり、背中を強く打った。
「ヒャハハハヒヒッヒ!!!!」
化け物のが僕に向かって来た。
僕は咄嗟に近くにあった小さい木の椅子を投げつけ素早く鎌を構えた。
とっさに僕は再び鎌を振りかざした。
化け物の右腕を斬り落とせた。
狭い部屋の中じゃ、この大きな鎌を振り回しにくいな。
広い場所に出た方がこっちもやりやすい。
化け物の動きが鈍くなっていたのを僕は見逃さなかった。
これなら、蹴りをくらわしたら外に出れそうだな。
この建物全体が木で出来ているので少し強い衝撃を与えれば壊れそうだ。
僕は扉の近くにいた化け物のに前蹴りをくらわした。
化け物は蹴った勢いに負け吹っ飛ばされた。
その衝撃のおかげで玄関が壊れ外に出れた。
「夜空!油断するな!奴らは蘇生能力が高い!」
白玉が大声で叫んだ。
すると斬り落としたはずの右腕は蘇生し、腕が元通りになっていた。
「マジかよ!?」
「いいか?夜空!こいつ等の戦いは長期戦になればこっちが不利だ! 早めに勝負をつけないと厄介だぞ。」
「ゆっくりはしてられないか…。」
化け物の動きが速くなり振りかざされた攻撃を何とか避けた。
「ッ!?」
鋭い爪の攻撃を避けたつもりだったが、左の脇腹に当たっていた。
激痛と血がドクドクと流れる感覚がした。
あちこちから血が流れているせいか、視界が少しボヤける。
痛い、痛い痛い。
本当に僕はコイツを倒すことが出来るのか?
そう思った途端、化け物の存在が大きく見えた。
突然の恐怖が体を纏い、僕の足がカタカタと揺れるのが分かった。
繰り出される攻撃を防ぐのに必死だった。
キンキンキンッ!
化け物の爪と僕の鎌が当たる音が町に響く。
「夜空!何をびびっておる!お前の覚悟はそんなものか!」
僕は白玉の言葉にハッと我に返った。
僕は…。
「晃!」
僕の名前を呼ぶ星が頭の中に出てきた。
そうだ…僕は星を…星を取り戻す為に来たんだ。
覚悟出来てるって言っておきながら全然出来ていなかった。
僕はこんな所で挫けている場合じゃないんだ。
「お前なんかに負けてたまるかよ!!」
僕は大声を出し、化け物に向かって走った。
鎌に巻き付いていた薔薇の棘が化け物に巻き付いた。
「キュイインキー!!」
化け物が叫び声を上げた。
化け物の動きを棘が封じていた。
僕はチャンスだと思い鎌を振るい化け物の頭を切り落とした。
化け物の左胸が光り欠片がヒュンッと僕の元に来た。
欠片が無くなった化け物は灰になり消えていった。
手を差しべると欠片が僕の手のひらに移動してきた。
小さな月の形をしていた。
「大丈夫?夜空。夜空?どうしたの?」
僕は白玉の声が聞こえていなかった。
暖かい…。
涙が自然と流れてしまった。
悲しいとか辛いとかそう言う感情とかじゃ無く…。
「わからない…。わからないけどこの欠片は星だ…。」
僕はその欠片を優しく包みしゃがみ込んだ。
そして涙が止まらなかった。
すると頭に激痛が走り、頭の中にビジョンが流れ込んできた。
小学6年生ぐらいの男の子3人が顔と体に無数の傷があり、ナイフを持っている男の子に怯えていた。
顔が見えない…。何だよこの記憶は…。
「ごめんなさい。ごめんなさい。もうこんな事しないから!俺等が悪かったから許してください!」
「許してください?ふざけるなよ。お前等の汚い考え方のせいで、ーーーはあんな事になったんだよ。」
そう言って真ん中に居た男の子の顔を殴り、蹴りを入れた。
「こんな…やめてくれよ!」
「もう…やめてください…。」
残りの2人が泣いてナイフを持った男の子に泣いて縋りついた。
だが、そんな事はこの男の子には何一つ響いていなかった。
「お前等がまたしないとも限らないだろ?だったら体にまた、 ーーーに、二度と近づかない様に体に刻み込んでやる。」
そう言って男の子はナイフを振りかざした。
何だよ…これは…。一体なんなんだ。
「夜空?夜空!!」
そこで僕の意識が無くなりその場に倒れた。
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