宣戦布告
慌ただしい夜が開けて、数時間後。皇国の大使たちと向かいあって座っていた白虎はガタリと音を立てて立ち上がった。イル、ノースたちもそれにつづく。
「ーーそれでは、交渉は決裂ーーということで」
白虎が言った瞬間、部屋の中でこれまで押さえ込まれていた殺気が膨れ上がった。
皇国軍が一斉に剣を、槍を白虎たちに向ける。
一緒即発。火花が散れば火薬に引火してこの場所は一瞬で血の海と化す。だがーー
「ーーまさか、宣戦布告するからといって、今すぐ私たちに攻撃を仕掛けるなんて野蛮なことはしませんよね? ……もし、万が一、そうした愚かな行為をするのならーー」
獰猛極まる肉食獣の目がギラリと光った。
「こちらも相応の対応をとることを忘れぬよう」
「ぐっ……!」
皇国軍の兵士、大使はたじろぐ。今手を出せない悔しさを歯を食いしばり、武器を握って耐える。
「……24時間以内の、出国を求める。過ぎれば、貴国の人民の安全と人権は保証しない」
「了承しました」
白虎とその一同は部屋の入り口へツカツカと歩いていき、振り返って一礼。ノースが先に部屋を出て扉を開ける。
「ではーー」
瞬間その場の全員の足元で床が膨れ上がった。閃光。轟音。爆発音が鼓膜を破るより速く解き放たれた魔力が、破片が、鉄が皇国も王国も関係なく全員の身体に突き刺さり、肉を喰い破って弱小な命を嘲笑う。足が、腕が、頭が千切れて全てが圧倒的な暴力と深紅に塗り潰された。
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