第10話 ねえ、それって

   ※


 目覚めるとすぐ近くに彼女の顔があって、僕はボーっとしながら彼女の頬に手を添えた。


 僕の顔を覗き込んでいた彼女は、優しげに微笑んで僕の手を受け入れる。


「夢を見ていたんだ」


 懐かしさに、胸がいっぱいに満たされる。


 カーテンの隙間から、朝の柔らかく温かな光が部屋の中に差し込んでいる。


 仄かに漂うコーヒーの香りは、きっと彼女が湧かしてくれたものだろう。


 あの子は元気だろうか。


 ふと、そんな考えが頭をよぎった。


「どんな夢?」


 彼女は僕のお腹に馬乗りになって、興味津々な様子で訊ねた。


「昔の夢だよ」


 そう答えると、彼女は悪戯っ子のような笑みを浮かべる。


「ねえ、それって――」


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