第27話 郷に入っては

 チャラ男と一緒に教室にたどり着くと、八街がいつものように小説を読んでいた。


 俺たちが入ってきた音でドアに目線をやったのか、先に挨拶をしてきた。


「あら、ごきげんよう。本日は少し遅かったですのね」

「おっはよー、八街ちゃん」

「よう。コイツから色々聞いていてな、そんで遅れた」

「あら、そうですのね」

「あははー……見事に無視されてるねオレ」


 がっくりと肩を落とすチャラ男をよそに、俺は自席に荷物を置く。すると、チャラ男から質問が飛んできた。


「番長さんっていっつもクソ早い時間に来るんスか?」

「これくらい普通だろう。予習復習は欠かせないしな」

「ほんと、外見と違ってクソ真面目っスね」

「外見通りじゃ女子高ここで生きられないのは分かるだろうが」

「番長君の言う通りですわ。そもそも名門校に貴方のようなや、やんきー?という人種が居ることが間違いなのですよ?」


 八街はヤンキーという言い慣れない言葉に少しつまづいたのか、顔を少し赤らめる。


「ほれみろ。つまり、ここに居たいのなら慎ましく勉強しながら過ごすこった。間違ってもナンパなんぞしたら即刻追い出されるぞ。つーか俺が追い出す」

「怖いこと言わないでくださいよー!わかりました!勉強すればいいんでしょ勉強すれば!」


 半ばやけになりつつも、持ち込んでいた英語の教科書を広げ勉強を始めたチャラ男。俺は聞きたいことがあったので声をかける。


「そういや、お前英語話せるらしいが得意科目なのか?」

「あくまで話せるだけっスよ。文法とかはメチャクチャだし通じればOK的な?」

「それじゃあ他人に教えられないな」

「そーなんスよ」


 短い会話を終えると、教室には二人がシャーペンを走らせる音と小説や教科書をめくる音しかしなくなった。


 その静寂が破られたのは、次に登校してくる生徒、すなわち東だった。


「おっはよー!ってなにこの状況……」


 彼女の感想は最もな物だった。


 番長とチャラ男は隣にいるお嬢様にも目をくれず、一心不乱に机に向かっている。


 もし彼らが外見通りの人間だったらこうはいかないだろう。はっきりいって異常な光景である。


「あら、ごきげんよう東さん」

「よう」

「おはよっス」

「あ、うん…おはよう皆」


「やっとオレ……女子に返答してもらえた……」

「多分含まれていないぞお前」

「どぼじてそんなこというのおおお!!!」


 嬉し泣きしたと思ったら悔し泣きし始めたチャラ男を見て、東は認識を改めたようで、


「なんか、楽しそうな人だね。この前の人達みたいな人かなって思ってたけど……勉強してるし違うよね」

「まぁ危害は加えないだろう。加えたら追放処分にするってさっき決まったしな」


 こうして東とチャラ男の(一方的な)確執は無くなり、4人の仲は少しずつ前進し始めたのだった

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