第26話 チャラ男の来歴
翌日、俺はいつものように起きていつものように朝食を食べ、いつものように6時半に家を出ると、いつもとは違い、チャラ男の住む隣のドアを数回叩く。
学校にいる間、なにもさせないようにするためには登校から一緒に行動し、監視するのが一番の方法だ。
驚くことに、チャラ男はその見た目とは裏腹にこの時間に起きていたらしい。
「はいはーい、ってうわ番長さんじゃないスか。何の用スか?」
「学校行くぞ。40秒で支度しな」
へ、へいっ!と慌てて着替えに部屋へと戻る背中を見て、俺は数を数え始めた。
57秒。チャラ男が出てくるまでにかかった時間だ。冗談で40秒と言ったがこれはなかなか好成績だろう。
息を切らせてドアから出てきたチャラ男の息が整うまで待ち、俺たち二人は歩き始めた。
道すがら、疑問に思っていたことを聞いてみる。
「そういや、結構早くに起きてたんだな」
「時差ボケが抜けないんスよ。おとといこっちに来たもんでして」
「そうか。向こうじゃ結構良いところの生まれだったんだろ?それが何でこんなボロアパートに住むことになったんだ?」
「それはっスね……話せば長くなるんスけど……」
奴の話を要約するとこうだった。
向こうの国で領主として生まれたコイツは、その権力を使って遊び歩いていたらしい。
犯罪行為こそしていないが、連絡をせず半年間旅行がてら国を飛び回るなんてザラで、その行いを見咎めた両親から半ば強制的にその身分が通用しない国、つまり日本に送られたということだ。
「……で、結局持ち合わせもほとんど無かったんであそこに住むことになったんですよ……」
「自業自得だろ……。つーか旅行の間はどうしてたんだよ」
「決まってるじゃないスか。女の子の家にお邪魔してたんスよ」
「……ひどすぎて何も言えねぇ……」
言葉をなくした俺をよそに、チャラ男はあるお願いをしてきた。
「そういうことで、オレ女の子と話してないと死ぬ病気なんスよ!学校で女子としゃべる位は許可してくれますよね!?」
「どういう訳でそうなるんだよ。東と八街以外なら話しても良いぜ」
「なんでその二人はダメなんスか!?あ、もしかして番長さんの彼じ――」
その言葉が出る前に、反射的に怒気を向けていた。
「それ以上言ってみろ。アスファルトにめり込ませてやるぞ」
「わ、分かりました!サーセン!先いってます!」
そう告げてそそくさと走り去っていくチャラ男。俺はその背中を見て一人反省していた。
地雷ワードが聞こえると瞬間的にキレる癖、治さないとな。
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