第25話 噂話
俺は頼まれていたノートの束を運び終わり、教室へと戻るところだった。
前扉を開け、教室に入ると何やら騒がしかった女子達は一斉に声を潜め、ひそひそと話し始めた。
俺が入ってきた途端にコレだ。俺に関係する噂でも流れてるのだろう。
席につき、机に突っ伏してうちひしがれてるチャラ男をよそに八街に今の状況を訪ねる。
「なんかあったのか?」
「いえ?そこの下郎が話しかけて来たのでバッサリと切っただけですわ」
「?そうか……」
それで何故こうなったのかは分からないが、これ以上詮索するのはよしておこう。
そろそろ授業も始まる頃だし。
――――――――
その日の授業が全て終わり、帰り支度をしている時だった。
突っ伏しているチャラ男の様子をチラチラと伺いながら、東が俺のところにやって来る。
この前コイツみたいな奴らに絡まれたせいで怖いのだろう。
「ねぇ番長、一緒に帰らない?」
東の声がした途端だった。
なんと ちゃらお が おきあがり なかまになりたそうに こちらをみている!
一緒に連れてけということだろう。
東はそれにびっくりしたのか、俺の背中に隠れてしまった。
「はいはーい、オレも一緒に帰っていい?」
「いいぜ。んじゃ二人で帰るか」
彼女の反応を無視して一緒に帰りたいと提案するチャラ男。俺は仕方なくそれを飲むことにした。
無論、東と奴を一緒にすることは出来ないので俺と二人で帰ることになるのだが。
「え?二人?ってチョタンマ、引っ張るなって!」
人数が少なくなったのを疑問に思うチャラ男の腕をひっつかみ、引きずるように後ろ扉へ向かう。
「番長、また明日」
「おう。また明日な」
小さく手をふる東と八街に返事をして、俺は左手にチャラ男、右手に鞄という出で立ちで教室を出た。
そのまま廊下を歩き、下り階段に差し掛かる所で手を離す。
チャラ男はたたらを踏んで体制を立て直し、恨むような目付きで睨んできた。
「一緒に帰りたいって言ったのはお前だろ?」
「かわいい女の子と一緒に帰りたいって意味なんだけど!?」
「誰とって指定無かっただろうがよ、さっさと帰るぞ」
「そ、そんなー」
――――――――
校門を出て、俺はチャラ男の後ろをついて歩いていた。
「番長さん?そう見られていると歩きづらいんですがね」
「案内してくれりゃ引きずってやるが?」
「普通に歩きます!是非そうさせて下さい!」
先程よりも張りきって歩き出すチャラ男をよそに、俺は考え事をしていた。
まずはコイツの家を特定しようとしていた為、一緒に帰ることができて好都合だった。
何故家を特定するか?それはなにかしらやらかした時にカチコミに行く為である。
会話もなく、奴がたどり着いた先は――
俺の住むアパートだった。
奴は驚いている俺をよそに、自分の部屋へと歩みを進める。
そして足を止めたのは、俺の住んでいる203号室の隣、204号室だった。
奴は俺が隣に住んでいることが分かると、その顔を真っ青にした。
俺は青ざめた奴に向かって、一言だけ告げてドアを閉じた。
「これからよろしくな。お隣さん」
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