第17話 僕も混ぜてくれないか

 番長の正体が皆にバレてから数日後、私は朝早く登校して明里と二人で話してました。

 最近は生徒会長が明里の事をつけ回しているのでこうやって二人で話す機会があまり有りません。


 メッセージでのやり取りは毎日のようにしてるけど、それじゃ足りずこうして手を繋いだり、明里の肩に頭を預けたりしてイチャイチャしたい。


 会長は朝早くに来ないため、こうやって朝一にしか会う時間がないので最近は寝坊しないように早起きして来ています。

 代わりに授業中寝ちゃうので、明里は仕方ないですわね、というような顔をして言いました。


「そんなに眠いのであれば、わたくしの膝を使いなさい」


 ぽんぽん、と太ももを叩きながらそう言う彼女はどんどん赤くなっていく。たぶん言ったあとで大胆なことを提案してしまったと思ったんだろう。


 もちろんそんなことをしている所を誰かに見られたら私たちの関係はバレる。けれど、そんなこと気にしている場合じゃない。そんなお誘い、断れるわけないんだから。


 私が来たと同時にどこかへ行ってしまった番長のイスに横向きで座って明里の太ももに頭を預ける。


 腰が宙ぶらりんになっているのでこのまま寝ることは出来ないけれど、イチャイチャできるのでこれはこれでよかった。


「ねぇ明里」

「なにかしら栗栖?」

「おっぱいで顔が見えない」

「……もう少し上品な言い方は出来ないのかしら……」


 呆れたような声で返事をする明里がおかしくて笑い出すと、廊下の方で誰かが倒れる音と、番長の「うおおおお!」という悲鳴が聞こえてくる。


 誰かが近付いてくる気配がしたので慌てて起き上がると、生徒会長がにこやかな顔をして入ってきた。

 その後ろには廊下にうつ伏せに倒れた番長がこちらに手を伸ばしてますがそのまま力尽きたようでした。


 たぶん、誰か来てもいち早く知らせる事が出来るように入り口付近で立っていたところを会長に襲撃されたんでしょう。


 会長は背後を気にすること無く続けます。


「ごきげんよう、八街君、東君。仲睦まじい君達の会話に、?」


 その時、力尽きたはずの番長がよろよろと立ち上がります。そして、会長に敵意丸出しの目を向けて言いました。


「姉貴、今なんつった?」

「ふふ、そういえば貴様はこの言葉が何よりも嫌いだったな。『君達の間に割り込ませてくれないか』と言ったんだ」


 その言葉に対して番長はもっと怒ったようで、両手を力一杯握り込みます。


「てめぇ……そこまで分かって言ってるなら俺が次に何を言うか分かるよな?」

「勘弁してくださいお姉さま、だろう?」

「違う!決闘だ決闘!ガキの頃から何度もやって来ただろうが!」

「そして何度やっても僕に勝てなかった、が後ろから抜けているようだが?」

「今回だけは必ず勝つ……!そんで二人の仲は守って見せる」


 こうして、二人の壮絶な姉弟喧嘩決闘が一週間後に行われることになりました。

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