第4話 ボッチ論

 後地球時代――つまり太陽系を後にし、オリオンの腕を抜け出し、複数の銀河にまで到達するようになった時代。この飛躍的な生存圏の拡大に寄与した重要な技術の一つが、KCQTという超光速FTL航法だ。正式名称はKsanabhanga Continuously Quantum Teleportation(刹那滅式連続量子テレポート)。

 確率論的な変動を操作し、素粒子数個分か、あるいは素粒子1個分未満の短距離をワープさせる。それを連続的に短時間で。それこそ1プランク時間内に何度も繰り返すことで、見かけ上、物体は通常空間を光速の何倍もの速さで移動する。アニメのコマ送りのようなものだ。

 この技術により天の川は気軽に渡れる距離となり、銀河の端と端に立った者同士がリアルタイム通信を行うことができるようになった。

 さて、このKCQTという技術、速さを規定する物は3つだ。

 すなわち、1回あたりのワープ距離、量子テレポートを行うにあたっての演算を行う計算機の性能、そして演算対象となる飛行物体――宇宙船の量子の総数。

 宇宙船がどれくらいの数の原子でできているかに、ワープ演算の複雑さは影響される。

 KCQT航法による移動速度は、1回あたりのワープ距離と1単位時間あたりのワープ回数の積で求められる。ワープ回数は演算器の性能に比例して増大し、逆にワープ式の複雑さに反比例する。そしてワープ式の複雑さは演算対象――つまり宇宙船を構成する量子の数に従い、指数関数的に悪化するのだ。

 故に惑星間航行において巨大な船は遅い。また同時に、複数の船が艦隊を組んで航行したり、あるいは近くをすれ違う様な込み合った航路は、相互に演算式が干渉するために負荷が増大し、やはり遅くなる。

 軍部が戦艦アマンダモルゴに追いつくのにギリギリになりそうなのも、最新鋭戦艦であるアマンダモルゴを抑えるのに必要な船団ともなると、相互干渉にてその航行速度が遅くなるからだ。

 では逆に、今まさに国境を越えようとするアマンダモルゴに、帝国のほぼ中央にある惑星アマツの蒼京そうきょうから追いつくにはどうすればいいか?


 答えは単純。圧倒的な速さ、つまり軽さを持つ機体を使って追いかければいい。




 軌道エレベーターを昇って、その果て。ナノカーボンによって惑星から“吊り下げられた”宇宙港。その発着所に、一隻の朱塗りの船が止まっていた。

 レベッカの単身用クルーザー。帝国の誇る最新鋭快速クリッパー“百舌鳥”のカスタム機だ。その大きさは軽自動車よりさらに一回り小さい。運転席を全天型のカバーで囲んだ、ウォーターバイク程度の大きさだ。

 武装は最小限、防御装置は出力任せの反物質、反重力シールド一つ。構造のほとんどが推進機関。生命維持装置すら詰んでおらず、搭乗者は宇宙船の装着が必須。

 これが極限まで無駄を省き軽さと速度を求めた、複合素材の駿馬。それがクリッパー級であり“百舌鳥”だ。

 ただし現在、その赤い外装のさらに外側には、いかにも緊急で増設した、という風な鈍く光る鉄色の構造物が取り付けられている。

 そのコックピットでレベッカは仕様の最終確認をしていた。通信相手はハラフィ。


『本体のKCQT機関は取り外し、代わりに通常推進としてイオンプラズマスラスターを組み込んだ。KCQT機関は外部の増設ユニットに搭載している。燃料は使い切りの反物質燃料。通常空間戦闘になったら切り離すこと』

「片道分だけ?帰るための分は?」

『こちらで回収船カーゴを出す。こっちの出発は遅れて15分後、到着は5時間ほど後になる計算だ』

目標アマンダモルゴへの突入が不可能と判断、離脱を必要とした場合は?」

『潔く宇宙の塵になりたまえ。その覚悟がないなら降りることだ』

「ハッ!了解よクソメカニック。第四室のエース、嘗めんな」

『了解した。まあ、例の装置と君の後ろに座っているバカがいれば、突入までは何とかなる。あとは君とそいつ次第だ。頑張りたまえ』

『うぃッス、こちら松田。メカの方の解説終わったッスね?

 んじゃあ次はお待ちかね、敵の背後関係や戦力についてッス』


 続いて松田の声が通信に乗る。


『まず重要な部分から言うと、船にいるのはレムスの特殊部隊だけ。ユニオンの直接的支援なし。ユニオンの能力者ドライバーも兵力支援もなしッス』

「朗報ね。けどそうなると、完全にレムスの独断ってことよね?何があったかつかめた?」

『王太子が廃嫡されそうになって一発当てようと思った、ってことらしいッス』

「―――詳しく」

『今の王太子は現国王の長男なんスけど、軍部につながりが強く頭がアレってことでちょっと噂になってるらしいっす。

 けどまあ、補佐さえつければ大丈夫だろう、まだ若いし年を取ればもうちょい『物を考える』っていう習慣も付くだろう、って感じで王太子やってたんスけど―――

 そいつ、自分の誕生日パーティーで公爵家の婚約者との婚約破棄を宣言した挙句、平民出身の女と結婚するって言いだして……』

「ハァ?」


 流石に意味不明すぎて首をかしげるレベッカ。後ろでは、アマンダモルゴの図面を確認していた角一も思わず顔を上げる。


「スゲエな、まるで地球時代のなろうカクヨム期の小説みたいだ。

 ひょっとしてその公爵家の令嬢相手の断罪もセット?」

『ッス。その平民女をイジメてた云々ってことらしいスけど、詳細は不明。っていうか調べる意味も感じなかったんで、そっち方面は調査終了したっス。

 で、とにかくそれで廃嫡されそうになったところで、タカ派の将校が今回の企画を持ち込んで、ってことらしいッス』

「アホくさ。王位なんて捨ててその女としっぽりやってりゃいいじゃない」

『レベッカさんはダイナミック婚約破棄自体にはお咎めなしッスか?』

「政治的にはアレってのは理解できるわ。けど男と女の関係ってそれで割り切れるもんじゃないじゃない。客観なんて意味なくて主観が全てよ。そうしなきゃなんないような関係がそいつらにはあった、ってことでしょ?そのこと自体に咎める気はないわ。

 ――その結果で王位とか失いそうになって、それに固執するって時点で、男として見れば私は願い下げだし、こっち巻き込んだことに関して言えば絶対赦さないけど」

『そんなもんスかねえ?っていうか、失敗したら最悪宇宙レベルで破滅っていうチキンレースなんて、どうしてするつもりになれるんスかね、こういう人達。理に適わないって思うんスけど』

「それは発想が逆だってまっつん。失敗したらどうせ身の破滅なんだから、その余波で世界が滅んだところでどうでもいい、ってことなんだよ。理に適う話じゃん?」

『――それを理にかなってる、って言っちゃえる割り切り振り、尊敬するッスよセンパイ。

 まあ、そんなのがレムス側の理由。それを受けたユニオン側はしっぽ切りって構えッスね』

「成否に関係なくってこと?」

『ッス。平和下での鞘当てにしては、最新鋭戦艦の強奪はヤンチャが過ぎた話ッス。

 宗主国としてそれを認めたら、他の属国も真似しかねない。持ち帰れたらデータとった上でレムス王国を叩いて責任取らせて帝国に詫びる。失敗したら普通にレムス王国を叩いて詫びる、っていう流れになるみたいッス』

「あらら気の毒に」


 いかにもどうでもよいといった風につぶやく角一。


「OK、レムス側の事情は大体わかったわ。で、こっちのハゲについて、何か分かった?」

『マークス・オリバム博士の事ッスか?

 こっちのはもっと単純ッス。一言で言うと『俺と相棒が作ったアマンダモルゴは最強なんだぁ!』ってことッス』

「―――ハゲの相棒、死んだの?」

『ッス。アマンダモルゴの完成間近に事故で』

「そういうことね」

「え?どういう?」

「単に自分の作ったガラクタが、っていうか自分の才能が評価されなかった、っていうなら帝国で別の仕事をするなり、単身で亡命するなりして見返せばいいのよ。そっちのが遥かにリスクが少ないわ。

 けどあのハゲは、ガラクタを他所の国にもってくなんて危ない橋を渡ることにした」

「――ああ、その相棒さんの遺作ってわけか」


 すべては、死んだ相棒の評価のためだ。

 アマンダモルゴが、彼とその相方との合作が評価されなくてはならないのだ。仮にマークスだけが亡命し、そこで成果を上げたところでそれは『マークス・オリバムの成果』でしかない。『マークス・オリバムとその相棒』の成果ではないのだ。

 二人の作品が、マークスと死んだ“彼”または“彼女”の遺作が評価されなければ、“二人の評価”は得られないのだ。


「――まあ、だからって私の相棒とっ捕まえたことを許すつもりは全くないけどね」

『あ、そのレベッカさんの相棒のシェラザードさんについてッスけど、第四室の能力者ドライバーから 『まだ生きてる。けど反応が薄い。多分眠らされている』 だそうッス』

能力者ドライバーへの対応としては当然ね」

 能力発動ドライビングにはいろいろな条件がある。手をかざす、特定のポーズをとる、何かを言う等々。だがその中で一番多いのが 『発動するように念じると発動する』 というタイプだ。つまり両手両足を縛ろうと、思考がある限り能力者ドライバー能力ドライブを使える。それを防ぐには殺すか眠らせて意識を奪うかしかない。相棒が殺されていないのは


「帝国の能力覚醒、強化技術が狙いってことね」

『ッスね。正直、ユニオンとしては、今やそっちが本命って可能性もあるッス』


 ともあれ、相棒の無事が確保されるタイムリミットはユニオンに引き渡されるまでだろう。その後は、良くて瓶詰の脳みそだ。


『それと、その能力者から追伸もあるッスよ。

 『必ず二人で無事に帰ってきて』だそうッス』

「……サンキュって伝えておいて」

「ヒューッ!仲間たちの熱い友情!第四室はヌクモリティ高いなあ!

 ほぅら!俺の同僚達!大切な仲間が死地に向かおうとしているよ!なんかない!?」

『あと10分だ。装備の点検を怠るな』

『こっちからも特にないッス。んじゃ』


 それだけで通信は完全に切れた。


「いつものようなゴミみたいな扱い!平常心を忘れるなってことだな!おーけーおーけー!」


 妙にポジティブな男である。それだけ言うと角一は再び装備の点検やアマンダモルゴの内部構造の確認に戻る。

 微妙な沈黙が、機体内に降りる。


「―――ねぇ」


 3分ほどしてか、沈黙に耐えかねたかのように、レベッカが角一に声をかけた。


「アンタ、印象っていうか聞いてた話と、大分違うわね」

「うン?宇宙最強イケメンマンだって噂とか?」

「筋金入りのボッチ、って聞いてたわ」


 無双の能力者、賽河原角一。

 彼について語られることは、その戦績と、謎の多い能力と、そしてその人格や行動様式―――ボッチぶりだ。


「聞いてた噂といい、1人カラオケに1人外食してたことといい。

 いかにもおひとり様って感じなのに、ケッコー同僚とかと話せてるわよね。

 ボッチ、って噂、何かの情報操作?」

「いや、俺はボッチだよ、それも一流の」


 断言してから、角一は少し思案するようにしてから


「なあ、君のイメージするボッチって、つまりはあれ、カトレちゃんっぽい感じの奴だよね?」

「ええ、まあそうね」


 人目を気にし、目が合うと怯え、挙動不審になる。

 スクールに通ってた頃にも時々見た、典型的なボッチ、コミュ障の行動だ。

 だが――


「カトレちゃんも確かにボッチ気質だけど、あの子はボッチレベルが低い」

「またケッタイな単語ね、なによボッチレベルって」

「ボッチの重症度さ。いいかい?他人と話したり触れ合ったりしたくて、けれどそれが上手くできずに一人でいるのが三流のボッチ。他人といることにわずらわしさを感じて、心から独りでいたいって思うのが二流のボッチ。

 そういう意味だとカトレちゃんは2.5流ってとこ」

「じゃあ、一流はなんなのよ」

「どうでもよくなるんだよ」


 一瞬、レベッカは得体のしれない恐怖を感じた。

宇宙服のバイザー。その奥にある角一の顔が見えない。その見えない艶消しのバイザーが、そこのしれない深い洞のように見えた。


「一流のボッチはね、隣に誰かがいるとか、いないとか、そういうのがどうでもよくなるんだ。三流ボッチのように誰かによく想われたいとも、嫌われたくないとも思わない。二流ボッチのように誰かに何かを想われることを苦にもしない。それによって直接的、物質的な被害を受けない限り、ね。

だから誰かがいてもいなくても、どうでもいい。なんと言っても他人の存在で心が動かないのだから、それは“いない”も同然だ。まさにかたわらに人のきがごとし。

愛別離苦誰かといたい怨憎会苦誰ともいたくないもない境地。それが一流のボッチって奴さ」


 だからこそ


「一流のボッチって、一見すれば普通にしゃべれるようになるよ?

 ボッチが喋れないのって、基本は人を前にしての苦手意識とかそういうのだし。

 他人のことを何とも思わないのなら、会話はもはや技術ノウハウ業務タスクだ。興味がないから個人にまつわるような深い話題は難しいけど、初対面の人とかと話すのに問題はない。仕事とかお題が決まってる場合、むしろ普通の人より話せるかもよ?

 というか、君みたいな一見さん、付き合いが短くなるような行きずりの相手の方が話しやすいまであるな。だって会話で何かトチっても、その後の人生に全く影響がないんだし。むしろ後々に影響が出るかもしれない同僚と話す方が、疲れるまであるかもね」


 まあ、知り合いだからって割と話そうとするあたり、まだまだ俺もボッチレベルが足らないなあ、と笑う角一。レベッカはバイザー越しに、表情の見えない角一をじっと見つめ、そして


「――少し、理解できたわ」

「お?ボッチ道について理解してくれたかな?」

「理屈の上では、ね。けど理解できたって言ったのは、それについてじゃないの。

 なんで、あんたのことがどうしても気に食わないのかって理由よ。

 あんた―――私に、他人にあんまり興味、ないでしょ?」


 一瞬、角一は呆けたような間をおいて


「ハハハッ!その表現良いね!他人に興味がない!なるほど!今度ボッチ道の説明をする時、そのフレーズ使わせてもらってもいい?」

「別にいいわよ、どーでもね」


 レベッカは肩をすくめて前を向き直す。そちらがこちらに価値を認めないならば、こちらも価値を認めてやる義理はない。もはや話す価値もない、といった態度。拒絶の態度だ。

 ただ、一言だけ言ってやりたいことが口から出た。


「一流のボッチ様からしてみれば、相棒のことで必死になる私も、あのクソハゲ博士もくだらないことで騒いでるように見えるんでしょうね」

「いや、そうは思わないよ。むしろ羨ましいとすら思えるけどね」


 意外な、予想だにしていなかった言葉に、レベッカは再び振り返る。


「なに?それもいわゆる会話って業務タスク技術ノウハウ?」

「掛け値なしに本音だよ。ほれ、アレ見てみ」


 そう言って、角一はハンガーの上方の壁を指す。壁にはどのハンガーにもかけられている、陰陽双帝国のエンブレムが描かれていた。そこには、モットーが刻まれている。


『我らは独りにあらず、ふたつにて一つなり』


 これが、陰陽双帝国のモットーだ。


 遥か昔、人がまだ宇宙で生活する技術を確立できていなかった頃。生命はたやすく失われるものだった。しかし人員の喪失による社会活動の遅滞停止は許されなかった。宇宙に進出した人類を取り巻く環境は全て人の造物であり、それらは人の手によって運営されている。それらの一つが一日、いや一時でも動かなければコミュニティ全体の致命的な損失になる。

 だから人は、陰陽双帝国の祖らは一つの工夫をした。多くの、特に重要な役職には二人の人間をつけること。どちらかの人員が不意に失われても遅滞なくその業務を引き継ぎ、運行しつづけることができるようにという工夫だ。その伝統は宇宙での生活技術が確立し、テラフォーミング技術や惑星探査により半天然の住環境を得られるようになってからも、伝統として残っている。

 帝国の重要な役職にはかならずほぼ同等の権限を持つ副官や秘書が配置される。三権を担う公的組織も行政府ならば帝室諮問機関と帝国内閣があり、立法府は帝国二重議会が存在し、司法府は帝国高等裁判府、帝立法学院がそれぞれ独立した権限を持ち、相互に補完と牽制を行っている。そしてなにより、帝国の最高権威者である皇帝、双帝自体が、歴代二人で一組だ。ある時は夫婦、ある時は兄弟、ある時は親子や祖父孫。関係性は違えど、皇帝は常に二人一組を維持してこの帝国を回してきた。


「つまりさ、この国では誰かと誰かは一緒にいて、そうあることを望むのが普通なんだよ。

 そして帝国ほど極端じゃないにせよ、人間はそもそも群れを作る生き物だ。それも昆虫や魚みたいにただ群れるんじゃなくて、お互いをお互いと認識して、何を想ってるのか考えて、相互に意識し合って群れを作ってる。

 それが人として正しいことで、つまり、他人に対して興味を持たない、興味を持てない俺達一流のボッチは、生物“人間”として間違ってるのさ。多分ね」


 まるで他人事のように角一は言う。いや、きっと他人事なのだろう。なにせ彼が語るのは、そこにあるのは主観である感覚的な物ではなく、歴史や生物学、社会学的な見地に基づく、客観的たにんごとな正誤善悪の話なのだ。


「あんたは―――それで寂しくないの」

「それすら感じないのが一流なのさ。ただ、それを感じられない自分を不足で不便な存在だと思うし、感じられる他人をちょっと羨ましくは思う。相棒を助けるため、とか、その名誉を守るため、とかいうのにはちょっとリスペクトを感じはする。それはきっと、人として間違ってる俺にはできない美徳なのだから」

「そう」


 沈黙が下りる。

 話が終わったと認識した角一は、また装備の確認や情報整理に戻る。まるで何事もなかったかのように。

 しばらくして


「ねぇ、あんたの事気に食わないっての、取り消すわ」

「うん?じゃあどうなんの?」

「ちょっと哀れね、同情するわ」

「それ気に食わないよりひどくない?上から目線過ぎない?なんかしてくれんの?オッパイでも揉ませてくれんの?」

「無事に相棒助けてくれたら乳とは言わず一発くらいヤラせてあげるわよ、クソ童貞」

「どどどどど童貞ちゃうわ!」


 本当に童貞なのかただのジョークか。

 突っ込む前に管制官より発進許可が下りる。

 いくつかの定型的なやり取りの後


『レベッカ・マージン機、コールサインOTE2611005820、航行計画71002121415AS。

 発進』


 まずは原始的な電気動力のカタパルトで速度を得て、次にイオンスラスターでさらに加速。所定の加速航路に入り、増設パーツ内で演算が始まる。連続した超短距離の量子テレポートが始まる。

 周囲から質量物がなくなるほどに、演算式は軽くなり、演算回数は増え、


「航路に乗った!さあ、急ぐわよ!」


 5分後、恒星圏を抜けた頃にはレベッカが駆るクルーザーは、光速の数千万倍の速さを得ていた。

 一路、Tk-g11へ。天の川銀河を数十時間で横断できる速度で、レベッカ達の乗ったクルーザーは、アマンダモルゴを追ったのだった。

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