第8話 情報交換
気づくと俺は豪華な天井を眺めていた。
「おぉ、ゆーた。目覚ましたか?」
とても聞き覚えのある声だった。まだ頭はクラクラするが、そこまで酷くはない。
「あ、あぁ。たっくんか?」
おうよ。と答えた。起きあがろうとしたが、全身の痛みがそれを拒み、再びベットに倒れる。
「なぜ俺はここにいる?」
「すまなかった。俺がしっかり大智たちを見ていれば、ゆーたをあんな見せ物になんてさせなかった。」
「いや、大智の軽い挑発に乗った俺自身の責任だ。たっくんが気にやむことはないぞ。それで、俺が倒れた後どうなった?」
「俺があの騒ぎに気付いてあそこについた時にはすでにゆーたは大智に蹴られた後だった。そのあと急いでゆーたを城の医療班のところに連れてって、治療してもらった。って感じだな。」
たっくんはだいぶ省いたところはあるけど。と付け足す。
「なぁ。今、戦えない俺と3人のクラスメイト西山、岡野、山田で、商売をやろうってなってるんだけど、ゆーたも一緒にどうだ?」
たっくんのスキルは戦いに向いてないのか?運動神経抜群なのに?まぁ、いいか。
「たっくん含め4人しか商売いないのか?もっと戦えないやついそうだが…。」
「みんな大智について行った。しかも、例外なくこの世界にきてから圧倒的な力を身につけてるしな。地球ではすごくひ弱だったやつでも、その辺のオーガなら、無傷で倒せるぜ。その中でも俺らは特に戦いに向いてないってわけだ。どうだ?」
「うーん。悪いが俺は商売って柄じゃねぇからな。
悪い。」
「おう。わかった。」
「ところで、4人以外はやっぱり魔王討伐か?」
「あぁ。当たりだ。流石ゆーた。もうある程度の情報を集めたのか?」
「あぁ、俺に抜かりはないぜ。だが、今からちょっとばかし情報交換をしないか?」
「いいな。じゃあ、俺から。」
「ちょっと待て。」
そう言って俺は起き上がり、ドアに耳をつけ、周囲に人がいないかどうか確認する。ちなみにこの時は気づかなかったが、すでに痛みは消えていた。
「誰もいないな。いいぞ。」
「やっぱりゆーたはどこに行ってもゆーただな。
思い出話はこの辺にしておいて…。ゆーたも知ってるかも知れないが、一応説明しとくぞ。
ここは異世界で、俺らは魔王を倒すためにここに送られた。俺らはそれぞれスキルを持っている。そして、この世界の言葉は話せるが、文字は読めない。そんなところだな。」
「ちょっと質問。たっくんは地球からここに来るまで意識はあったか?」
「?ないぞ?気づいたらこの城の中にいた。」
「そうか」
じゃあ、あのババァも知らないわけか。そこから説明だな。
「俺はここに来るまで意識があった。体感時間で1日ちょっと。そのあと、俺らは俺ら自身でスキルを選んだんだと思う。俺は運悪くスキルを選べなかったが…。」
「え?スキルを選ぶ?全く覚えてないな。いや、それよりも、ゆーたはスキルを選べなかったのか?じゃあ、スキルを持ってないのか?」
「御法度だぞ。内緒だ。」
「あぁ、悪い。」
「一応言っておくが、スキルは持ってるぞ。安心しろ!
話を戻すぞ。そのあと俺はちょうどあそこだ。あの池の中に落ちた。」
窓から見えた池はあの時と同じように濁っていた。
「うわぁ。本当運ないな…。」
「いや、運の問題じゃね。ババァに嫌われたからあそこに落とされた。で、バレないように外に出て、市場で情報収集。ギルドに登録して情報収集。って感じだな。集めた情報の中で特にこれといったものはなかったが、強いて言うなら、この世界には、大昔、7人の賢者が作ったダンジョンがあるらしいな。俺はとりあえずそこの攻略を目指す。」
「ゆーたらしいや。俺もついて行きたいが、俺は王様の目があるから、あんまり自由には動けないんだよな。悪いが、ついていけそうにない。」
「大丈夫だ。もともと俺はソロプレイだからな。」
その後しばらく2人で雑談に花を咲かせていると、18時の鐘が鳴った。夕食は食堂で18時の鐘が鳴ってから2時間しかやっていないため、その時間の内に必ず行かないと晩御飯にありつけない。俺の存在は国王様には報告していないらしいが、1人増えたぐらいでは誰も気づかないと言うので、お言葉に甘えて食堂を利用することにした。
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