第4話 情報収集
辺りを見渡す。近くに人はいない。少し先に市場のようなものがあるのが見える。しかし、市場との距離はそこまで離れていないのだが、この塀の周辺には全く人の気配がなく、市場は大いに賑わっている。
俺もそそくさと市場へ行き、道の真ん中にあるうちの一つの椅子に座る。服装は周囲に溶け込んでおり、誰も俺のことは気にしていない。よしよし、順調だな。
丁度食事時で、結構な人が席に座ってご飯を食べている。情報収集を始めよう。
「いや〜聞いたか?なんでも国王様が今日、勇者召喚の儀式をしたらしいんだ。今日の所はスキル確認しかしてないらしいが、誰もが上位のスキルを持ってたんだとか。」
「らしいなぁ。勇者様達が魔王を倒してくれるといいんだが、それはそれでなんか部外者に丸投げしてるみたいで申し訳ねぇよなぁ。」
「そだなぁ。でも、アルフレッドさんが率いる騎士団の人達もそれなりに魔王に対抗できるだけの力は持ってるはずだぜ。それに各国の冒険者を集めりゃぁ、倒せる気もするんだがなぁ。安全を取ってなのか、なんなのか。」
日本語つかってる!?しかしなるほど、色々といいことが聞けたな。まず、魔王がいると。そしてそいつを倒すために俺含むあいつらがこの世界に呼ばれたのか。他にも、冒険者があるのは嬉しいな。
というか、お腹空いたな。チラリと屋台の方に目を向けると、串焼きを買っていた。銅色のコインを1枚か。今俺は銀色のコインを2枚と銅色のコインが5枚。ぱっと見は同じデザインだから、あれを買おっかな。
「おっちゃん、それ1個頂戴。」
「あいよー。銅貨1枚な。」
「ほい。」
「はい、毎度あり〜。」
なんかこの人、人が良さそうだな。
「なぁ、おっちゃん、ちょっと聞きたいことがあるんだけど、いいか?」
「どうした?」
「俺何歳に見える?」
「うーん、13歳あたりか?まだ体も華奢だし…。とにかく線が細いから、まだ学校に行って訓練も受けてなさそうだしな。まぁ、学校に行くのは14歳になってからだから、これから鍛えてきばいいだろ。あんまり気にすんなよ。」
「あははは…。おっちゃんありがと、頑張って鍛えるわ。」
そう言い、まだ暖かい串焼きを持って席に戻った。
どうやらだいぶ小さく見られたようだ。それにしてもここは情報の聖地だな。14歳から学校に行くのか。おっちゃんの言い方からしてほとんどの人が通うのだろう。学校かあ。いい思い出はないからな。やっぱり冒険者の方が楽そうだな。しかし、ここの人たちから見ると俺は13歳に見えるのか。これは痛いな。冒険者登録をしようにも、何歳からできるのかわからないし、小さく見られる分だけ舐められる。もう少し情報を集めて、暗くなる前に宿屋を見つけたいな。2徹ぐらいできるから、それだけあればある程度情報集めて、宿屋ぐらい見つけれるだろう。問題は金だが…。まぁ、なんとかなる…と思いたい。
そしてしばらく市場付近で情報を集めて、城とは反対方向に歩いていく。しばらく歩くといかにも宿屋って感じの旗が目に入った。入り口の上に看板がある。市場でもそうだったのだが、この世界の字が読めない。困ったな。しかし、数字は同じだと思う。不思議だ。この看板を見て推測するに、1泊銀貨1枚、10泊銀貨8枚、だろう。合ってるといいのだが。
カランカラン。
意を決して中に入った。食事処でもあるようで、それなりに賑わっている。正面にある受付に進むが、誰もいない。しばらく待っていると、後ろから声をかけられた。
「あら、待たせちゃったかしら。ごめんなさいね。それで、宿泊かしら?」
「はい。一泊泊まりたいのですが、空き部屋はありますか?」
「あるわよ。205号室ね」
と言いながら、カウンターの中へ移動し、札と袋を渡された。
「ありがとうございます。」
この袋は何に使えば?しかし、不用意に聞くと、変に疑われる可能性があるからな。
「あんたは冒険者になるのかい?」
「はい。そのつもりです。」
「ギルドからも言われると思うけど、最初は薬草集めとかにしときなよ。学校いく前から討伐依頼なんかやってると死んじまうからね。用心しなよ。」
「ありがとうございます。肝に銘じて起きます。それでは、僕はこれで。おやすみなさい。」
「あぁ、ゆっくり休みな。」
俺はそのまま205号室へ向かう。扉に手をかけるが、開かない。さっき貰った札をそれらしき穴に差し込むと開いた。どういう仕組みだ?と疑問を抱きつつも、鍵を抜いて部屋に入る。中からは自由に開けれるらしい。この札を中に忘れたら大変なことになるな。気をつけよう。
部屋の中にはベットと机と水場だけだが、今のところは十分だ。早速風呂に入ろうと思ったが、この世界に風呂ってあるのか?やばいな、今日の風呂どうしよう。とりあえず今日は体を拭くだけにしよう。服を洗い、体を拭き、ベットにダイブした。いくらラノベ好きでこういう世界に憧れてるとしても、大変だな。明日はギルドに行って冒険者登録をしよう。田舎から出てきた13歳で通せるかなぁ。あとは、知らぬ存ぜぬでゴリ押すしかないか。
緊張が少し溶けたのか、一気に眠気が襲ってきた。そして深い眠りについた。
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