第3話 俺の能力
そっと足を忍ばせ、池に近づく。あの麻袋は欲しい。まだ中身の確認をしてないし、この世界のお金とか、服とか武器が入ってるかもしれないからなぁ。でも、この池の中には入りたくない。
ダメ元で池の中に手を突っ込む。手に何かが触れた。慌ててそれを掴み、水の上に引き摺り出す。
藻かよ。なんとなくそんな気はしていたが…。こういうのは運良く掴めるもんだろ…。悪態つきながら複雑に絡み合った藻を巻き上げていく。これだけ巻きついていれば、麻袋が引っかかってる可能性は高い。池自体はそこまで広くないため、こうしていればいつか水面から顔を出すかもしれない。
巻き上げること5分。周りに注意しながらも、黙々と藻を引き上げる。そしてついにその時はきた。藻の終わりが見てた。結果はまぁ。予想通り。何も引っかかってなかった。
はぁ………。こんなことばっかり続くと、俺の精神力もたないぞ…。くそっ!藻を池の中へ蹴り飛ばす。その時藻と同時に、足を滑らせ盛大に転ける。本当についてない。倒れたまま空を見上げる。木の葉の影から差し込む光が眩しい。ん?……。
あった。麻袋。あのババァ。やりやがって。くそ。
すぐに木を登って麻袋を掴む。早速中身を確認しよう。おぉ!服が入ってる。ボロボロな気がするのだが、現地人っぽい服装に満足した。現地人を見たことないけど…。それでも、この濡れた服とおさらばできるのは嬉しい。
あとは、コインが入っていた。これはおそらくこの世界のお金だろう。何故ババァは俺のこと嫌ってるのにこんな手解きをするんだ?ま、考えても仕方がないか。再び岩の影に隠れ、コインを袋に戻して服を着替える。脱いだ服はある程度水気を取ってから袋に入れた。それにしてもこれからどうしていこうかな。もうちょい情報が欲しいところだが、こればっかりは自分で調べるしかないかぁ。言葉が通じればいいのだが…。とりあえずここから出たいな。多少危険があるかもしれないが、ここが王の城とかだったら後々面倒なことになるかもしれないし、洗脳魔法とか食らったら、せっかくの異世界が堪能できないし…。よし。とりあえずここから逃げよう。そうと決まれば早速この塀を越えなければならないんだが…。どう考えても登れる高さじゃない。10mぐらいありそうだ。白く、滑らかな表面。クライミングとかもできない。この塀をつたって行けば、門があるだろうが、門番がいるだろうかもしれないし、なんなら門が閉まってるかもしれない。打つ手なしか。
いや、そういえばまだスキル使ってなかったな。頭の中でステータスと呟く。
名前 黒沢雄太
年齢 16
レベル 1
体力 10
魔力 1000
攻撃力 10
防御力 10
素早さ 10
スキル
質量交換
称号
不運を呼ぶ者
ここで質量交換に触れてみる。
質量交換:自分が触れた物と物の質量を交換する。
消費魔力/5
継続時間/2秒
クールタイム/10秒
おぉ、詳しい説明が出てきた。消費魔力は5だから、200回も使える。これは異世界でチートできてしまうのでは?そんな冗談は置いといて、やってみよう。その辺にあった石を右手と木の葉を左手に持つ。
スキル、質量交換発動。と呟く。すると、木の葉にずしんとした重みが加わり、逆に石が軽くなった。2秒経つと元に戻った。説明通りだ。もしかするとこれは色々と応用が効くのでは?と思い、塀を乗り越えるための使い方を思索する。
そして、今度は木の葉と塀の質量を交換して、強度の変化を見てみることにした。
スキル、質量交換発動。
ーー熟練度が足りません。よって、スキル、質量交換は発動できませんでした。
まぁ、薄々そんな気はしていた。そりゃなんでも交換できたらチートだもんね。俺は物語の主人公でもなんでもないただのモブだから、わかってた。俺はチートじゃないって。強度の変化を見るだけなら石と葉っぱでいいからな。とりあえずやってみるか。そして今度は石と葉っぱで質量交換をして葉っぱを破いた。普通の葉っぱと、遜色なく破ることができたため、強度は変わらないと見ていいだろう。塀を越える糸口が見えたと思ったのだが、また振り出しに戻ってしまった。あそこまでジャンプできればな…。あ、できるかもしれない。
ドスッ!
「……痛い。」
と言っても実際10mの高さから落ちた衝撃ではない。そう、俺は塀を越えることができたのだ。すでに日は傾いており、淡いオレンジの光が俺を照らす。
時は少し遡る。自分と物の体重を変えれるかどうか実験してみたところ、石と俺の体重は変わった。そこで木の天辺まで登り、塀に向かって飛んですぐに石と俺の体重を交換した。幸いにも風が強めに吹いていたため、そのまま塀を超えて地面に落下した。2秒しかないので、塀の上に登るのが精一杯だと思ったのだが、6mほど落ちてから体重が戻った。しかし、当然痛い。後のことを考えて行動しないといけないな。
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