夜九時に私はステーキを食べた
隅田 天美
料理の素人がエッセーなどに出てきた料理を再現してみた その5
池波正太郎のエッセーが好きだ。
小説も好きだけど、最近はエッセーや短編を読むことのほうが多い。
その中で、常々、疑問に思っていたことがある。
池波先生、ステーキを鉄板で出されることに意見があったようだ。
私が子供の頃。
とは言っても、親に連れて行ってもらったのは一回ぐらいしかない。
ステーキと言えば厚切りに切った牛肉を楕円形の鉄板で焼かれたもので、子供心にわくわくした。
しかし、ちゃんとしたステーキは鉄板ではなく温めた皿に出てくるらしい。
「皿のほうが肉汁とかでないだろう」
というのが池波先生の意見。
で、作ってみた。
というか、最近、冴えないので自分に気合を入れるためにも夕方のスーパーでステーキ肉を買った。
約三百グラム、千四百円のお買い物。
あと、ステーキ用ナイフとフォークも買った。
まずは、室温に戻すため台所に放置。
別のところで公開する小説を書いたり洗濯物をする。
頃合いを見計らい、フライパンを出し牛脂を入れ弱火で脂を溶かす。
その間に手早く胡椒と塩をミルで挽いて味をつける。
フライパンに入れて弱火から中火で五分焼く。
時間が来たら箸でひっくり返す。
実にいい焼き色が付いた。
思い返せば、我が家、と言うか母親は生肉が嫌いである。
魚でも鮪はいいがしめ鯖やサーモンは好まない人で、私は小学校に上がる前は刺身を生で食べさせてもらえなかった。
今でこそ、しめ鯖や鰯など好きな人間だが小学校上がってから寿司屋刺身が食べられないことは辛かった。
当然、ステーキを食べに行ったときも「完璧に中まで火を通してください」という。
父が「肉汁とか……」というが無視。
さて、完成されたステーキを皿に乗せてナイフを入れてみる。
あふれる肉汁。
中はレアだ。
流石三百グラム。
片面五分焼いても中まで火が通らない。
――もしかして、池波先生ってレア派?
そんなことを考えながら一口に切り食べる。
美味しい。
塩と胡椒のシンプルな味付けながら肉のうま味が十二分に味わえる。
でも、途中で宮のたれ(北関東にチェーン展開するステーキ屋のソース。万能のたれ)をかけた。
さすが、宮のたれである。
これも美味しい。
明日から仕事である。
無理せず、頑張ろう。
あと、来月には町内会班長もある。
心と体のスタミナが切られたら、また、ステーキを食べよう。
夜九時に私はステーキを食べた 隅田 天美 @sumida-amami
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