バブル12 臨時の服


 誰かの声に、俺は反応してしまった。思わず声のする方をみると、そこにいたのは飛鳥だった。手にしていたのは……。




「ブラジャー!」




 思わず言った。淡い色のやつが4つ。無造作に握られている。けど……。

 まずいまずい、まずーいっ! ずいずい髄液が出てきそうな恐怖を覚えた。七瀬に聞かれたら大変。万事休すと思ったが、別の声にかき消されていた。




「うろこー!」




 声の主はまりえ。まだ勘違いしているようだ。七瀬もよろこんでいる。


「さすがは飛鳥! タオルといい、用意が早いわ!」

 タオルというのは、俺の腰に巻かれているやつ。『短小剣・エクスカリバ- 』の文字が風になびく。用意したのは飛鳥だったか。何で七瀬が知ってる? そんなことはどうでもいい。


 七瀬と飛鳥が女体にブラジャーをつけはじめる。あんな風に前屈みになるのか。ブラの装着を生で見るのははじめてだったから、目からうろこだった。

 ブラをつけたら、服の布が胸に擦れることはなくなったようで、女体達は気持ちよく服を着てくれた。


 こうして、俺はついに女体に服を着せることに成功した。1人をのぞいて。


「ホック、引っかからない」

 ゆうきにブラをつけようとしているのは飛鳥。衣類のことは飛鳥に任せればいい。飛鳥派は繊維業に偏っている。飛鳥が持ってきたのは麻衣のブラ。麻衣の胸は大きいと思っていたけど、ゆうきには小さ過ぎたようだ。


 責任感の強いゆうきが項垂れる。


「マスター、申し訳ありません……」

「ゆうきが謝ることじゃないよ」

「麻衣姉のブラでもダメとなると、もうお手上げね」

 七瀬が肩をすくめて言う。そういう意味ではなかったんだけど、素直なゆうきは、言葉通りに受け取り両手をあげる。


「こ、こうですか? 七瀬さん……」

 と、ゆうきの胸のふくらみがバンザイをして縦長になった分、胸まわりの長さが短くなり、ホックがぎりぎり引っかかる。


「できた!」

「やりました! 七瀬さん、ありがとう! マスター、見てください」

 両手を上げたまま歓喜のゆうきが俺を見る。無邪気ににっこり笑う。


「そういう意味で言ったんじゃなかったんだけど……」

 と、七瀬は照れ笑い。俺も照れ笑い。


「よかったな、ゆうき」

「はい!」

 ところが、ゆうきが手を下ろすと……イヤな音が聞こえてきた。


 ビリッ。


「や、破けました……」

 見れば分かる。それよりも、ぽろったことをレポートするべきでは。


「ゆうき、しばらくバンザイしていようか」

 いささか手遅れ感はある。ぽろっていたのでは俺の目のやり場はないままだ。


「はい。マスターの言う通りにします」

 従順なゆうきがまた項垂れる。なんとかしてあげたい。


「飛鳥、もう1回だけお願い」

「ムリ。麻衣が怖い」

 飛鳥の言う通りだ。これ以上、麻衣のブラを破ったら怒られてしまう。それは避けねばならない。麻衣を怒らせたら大変だ。


「他に手はないの?」

「大きいのを買えばいい」

「どうやって? ゆうきは服を着ていないのに」

 お店に行けない!


「通販」

「それはだめ。品が届くまでの数日も待ってらんない」

 俺の体がもたない。目のやり場のない生活はイヤだ。


「臨時の服を着せる」

 臨時の服なんて、ゆうきは着てくれるのか? それにそんな服、あるはずがない。いや、あるぞ! 1つだけあるじゃないか。


「さらし!」

 さっきは無視されたけど、もう1度試そう。飛鳥がコクリと頷く。


「短時間なら、それもありね」

「マスターのおっしゃる通りにします」

 ゆうきの承諾も得て、俺はゆうきにさらしを巻いた。

 そのあとは、4人に合う服を飛鳥がチョイス、お披露目となる。飼い主である俺が言うのも何だけど、4人ともとってもかわいい。


「とってもかわいいわ。特にゆうき、装束が似合ってるわ」

「そんな、七瀬さんほどではないですよ」

「そういうのはいいって。かわいいものはかわいいんだから」

「ほ、本当にそう思うんです」

 必死に弁明するゆうき。七瀬は相手にしない。先輩美少女の余裕か。


「はいはい。けど、私なら『ありがとう』って言うかなぁ」

「さすがっす。泣く子も黙る美少女の三枝三姉妹だけあるっす」

 まことが言うように、七瀬はかわいいって言われ慣れている。これから先は、4人も慣れていくのだろう。

 そんなとき、周囲の反感を買わない受け応えは心得ておくべきだ。三枝三姉妹が好意的でよかった。美少女の先輩として指導してくれれば心強い。


「よし! 早速、お買い物にレッツゴー!」

 威勢よく七瀬が言う。これで全てが上手くいく。そう思った。


「いやーっ! 正直言うと、4人が女体化したときは本当にビビったよ……」

 俺はつい、ほっとしてしまい、そう言ったんだ。


「……でも、三枝三姉妹がいてくれて助かったよ!」

「マスター、今、何て言ったの?」

「それ、言っちゃだめなやつ……」

「えっ?」

 フラグというやつだ!

 しまった。俺はつい安心してしまい、口走ってしまった……。

 まずい、まずい。まずーいっ!


 直後、麻衣が血相を変えて現れた。


「大変よ! おばあちゃんが怒っちゃって!」

「お梅おばあちゃんが?」

「それはイヤな予感しかしないわ……」

「どうしてお梅さんが怒るんだよ」

 俺と七瀬と飛鳥とで麻衣を取り囲む。

 その外側でゆうき達が不安そうにしている。


「マスター、今朝、ブログ書いてないでしょう!」

 そ、そこぉ!

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 ここまでお読みいただきありがとうございます。

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超絶美少女の共演なんて、金魚の混泳よりは易しいですから。 世界三大〇〇 @yuutakunn0031

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