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バブル10 七瀬のうろこ

「これにて一件落着ってことで、すりすりさせて。ね、マスター」

 まりえがそう言っておねだりしてくる。俺はYESともNOともとれないような曖昧な返事をする。枕も使わずにさり気なく意思表示なんて真似は俺にはできない。


 それに、今は七瀬が一緒にいる。すりすりなんかさせてあげようものなら、七瀬に何をされるか分からない。ここは慎重に行動しないと。あくまでも、まりえのため。俺はしかたなく応じたまでだと印象付けないといけない。


 ところが、意外にも七瀬は目を輝かせた。衝動に駆られたようだ。


「すりすりって、あれのこと?」

「そうだよ。両胸びれの間の下辺りにすりすりする、あれのことだよ」

「私、やってみたい。ねぇ、まりえちゃん、いいでしょう」

「当たり前だよーっ! 七瀬もやろうよ!」

「そうね。どうすればいい?」

 不安気な七瀬に対して、まりえは手を腰にあて、どや顔になる。胸を張ったときに重みでバウンドするのがよく見える。見えてしまう……。その動きに見惚れていると、誰かの冷たい視線を感じる。しれっと目を逸らしておく。


 七瀬が俺の代わりにまりえのすりすりパートナーになってくれれば、それに越したことはない。あれは、刺激が強過ぎる。ありがとう、七瀬。


「じゃあ、まずは服を脱いでごらん!」

 まりえ、それは多分違うぞ。七瀬はすりすりさせてもらいたいのではなく、させてあげたいんだと思う。だから、七瀬まで服を脱ぐ必要はないはずだ。そんなこと俺がわざわざ言わなくても、七瀬だって気付くと思う。


 七瀬に服を脱げだなんて、命知らずにも程がある。ぐーぱんで済めば御の字。最悪、目潰しまではある。ずっと目のやり場に困っていた俺は、そっと七瀬に視線を移す。服を着ている七瀬は1番安全に目を休められる場所だったりする。


 見ろ、まりえ。七瀬もさすがに困惑してい……ない……ようだ。既にボタンを上から2つも外し終えている。荒々しく鼻息を吐いて、続けて3つ目に手をかけた。お、俺の目の休息の場がなくなってしまう。まずい、まずい、まずーいっ!


「こ、こうでいいの?」

「うーん。もっとこう、バーンッて脱がないと」

「じゃあ、こう?」

 おいおいおい。七瀬、本当に脱いでしまうのか! いよいよ目のやり場に困り果ててしまうではないか。興奮が抑えきれなくなってしまう。どーしよう、どーしよう、どーしよーっ!


 けど、俺以上に興奮して七瀬を見ていたのがゆうき達。身を乗り出して、俺の視界を塞ぐような位置に立ち、じっと七瀬を見ている。そのせいで、俺からは七瀬が見えない。


 七瀬の裸って、どうなの? 見えないとなると、見たくなってしまう。いつも服を着ているから定かではないが、おそらく大きい。よくクラスの女子に背後から揉まれていたほど。


 見てしまったら何をされるか分かったもんじゃない。ぐーぱんなら連打は覚悟しないと。けど、見てなくても何をされるか分かったもんじゃない。見ても見なくても同じかも。まずい、まずい、まずーいっ!


 いや、だったら見たいって誰だって思うだろう。俺だって!


 けど、間にあって俺の視野を埋めているのは、4つの女体。しかも裸体。数時間前までは金魚だった存在。大切な俺のペットだ。


 ゆうきが肩を震わせている。豊満な胸のサイドが背後からはみ出して見える。

 まことが前のめりになる。突き出したお尻がかわいい。

 斜に構えることの多いしいかでさえ、正面を向いてガン見している。

 まりえに至っては七瀬にどんどん近付いていく。吸い寄せられているようだ。


 そんなだから、俺からは七瀬が全く見えない。4人とも、退くんだ。見えないじゃないか! 


「お、おかわいいーっ! 七瀬、すごーくおかわいいーっ!」

 えーっ? おかわいいの? それは意外。


「本当です。とてもかわいいですね」

 ゆうきが言うんじゃ本当だろう。そっか、そっかーっ! 七瀬、お前もおかわいいんだ。仲間じゃん!


「はい。見事なうろこっす!」

 え、うろこ? まさか、まさか。ゆうき達なら分かるけど、七瀬はずっと人間。物心ついたときから一緒にいる幼馴染。うろこなんかあるはずがない。もしあったら、小学生のときに気付いているはず。


「そうね。人間にしては、いいセンスしてるわ。でも、2つしかないの?」

 2つしかないだって? どんなうろこだろう。

 俺はまず、うろこの形状を思い浮かべた。金魚の場合は円鱗。質感は滑らかで、外側の端部や縁まで均一に丸みがある。何かを包んで守ってくれそうだ!


 では、何を包んで守っているというのだろう。その謎に迫るには、七瀬のボディーについて考える必要がある。七瀬は女子だ。七瀬は人間だ。七瀬は痩せ型ででいて、あるところはある。女性的なメリハリのきいた身体付きと言っていい。


 以上のことから、俺はある結論に達した。そして、気付いたときには……。




「ブラジャー!」




 と、叫んでいた。これは、まずい……。

____________

 ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

 何がまずいのでしょうね?

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