奇跡の共演
バブル07 元の体勢
で、現在。おさらいすると……。
俺の下でソファーに仰向けに寝そべってるのがまりえ。すやすやと無邪気な寝息を立てている。熟睡というよりがん寝。
その上に俺が腹這いになっている。
少し前までアゴを突き出してまりえのお気に入りのすりすりポイントを的確にとらえていた。視界は真っ暗で頬はやわらかいものに圧迫されていた。
今はちょっとだけマシで、視界は確保できているし、息苦しさはない。
多少の圧迫感があるのは、俺の背にゆうきが乗っているから。背中は重いが、やわらかい。気持ちいい。まりえ同様に熟睡しているようで、寝息に合わせて円形の刺激部分の半径が微妙に変化しているのが分かる。
右にしいか、左にまことが、サイドからがっつりと俺の腕に巻き付いている。
いつのまにか眠ってしまった俺だけど、直接的な温もりを感じて目覚めた。息苦しさにまりえの谷間から脱出。開けた視界の先に三枝三姉妹を発見。
はじめは混乱していた俺だけど、三姉妹の長女の麻衣との会話の途中、麻衣が合鍵を手にしているのを見て、妙に納得した。
体勢もそうだけど、女体が裸体なのがまずい。唯一の良心、パジャマなんて、焼け石に水な気もする。要するに、ピンチなのだ。
女体によるサウナ効果か、俺は尋常でないほどの汗をかいている。それが潤滑油のようになって、女体の肌の感触がヌルッと伝わってくる。あれっ? 違和感を覚えつつも放置。今考えても仕方ないから。
それより、麻衣に続けて七瀬がはなしはじめたので、こちらは無視できない。
「休むのは勝手だけど、正門は開けといてほしかったわ」
「そうよ。おばあちゃんを連れてくるのも大変なんだから」
「……」
慌てて時計を見る。7時12分を過ぎている。開門時刻は7時ちょうど。宮司になる前からの俺の仕事。お梅さんと三枝三姉妹が1番乗りというのが恒例。少しでも遅れようものなら、4人は血相を変えて激怒する。それも、週に1回くらいの恒例。
「あはははは。もうこんな時間なんだ。おかしいな、5時に起きたのに」
3人とも、怒った表情をしているが、いつもほどではない。怒っている場合ではないということか。
一方で、ゆうき達のことには全く触れない。見えていないとは思えないけど。俺の方からはなしを持ち出すのも変な気もするし、しばらくは三枝三姉妹のペースに合わせることにしよう。
「今日の巫女当番は……」
「私よ。お昼は飛鳥。麻衣姉分かってて聞いているでしょう」
「……」
これもいつもの会話とそう違いはない。巫女当番というのは、巫女としてこの神社に残る当番。三枝三姉妹は基本、この神社が好き。祈祷中だろうが掃除中だろうが、お構いなしに巫女装束を纏ってここで過ごす。
ただし、3人が揃うのは朝晩の1時間ずつのみ。
「あははは。七瀬が今日の巫女だなんて、うれしいったらないな」
そう言っておかないと、後でうれしくないことが起こるのを俺は知っている。
「じゃあ、あとは若いのに任せて、私はお暇するよ」
麻衣がそう言いながら部屋を出た。これはまずい。七瀬と2人きりになったら、何をされるか分からない。今のところ、飛鳥がいるから安心だけど。
七瀬は麻衣の退室を見届けてから、ものすごい圧で口撃してきた。
「で、どうしてゆうき達が女体化しているわけ?」
ど直球、ど真ん中だ。今まで誰も触れなかったのが不思議といえば不思議。いざ、そこをつかれると、どうしたものだろう……。
俺は何て言えばいいんだーっ!
「そ、それはよく分からないんだよ、あはははは」
と、正直に言う。七瀬がどうやって『金魚が女体化した』という認識に至ったのかは謎だけど、そこに疑問がない方が、はなしが早い。
「で、早速たぶらかしたってわけ?」
そんなつもりはない。俺はそこまで手をつけるのが早いわけじゃない。むしろ奥手で知られているのを、七瀬だって知ってるだろうに。
「たぶらかしただなんて、そんな……」
金魚をたぶらかしたって何の得にもならない。そもそも俺だって服を着せたいんだ! けど女体がそれを拒否するだけ。
七瀬の口撃は続く。
「どうして、そんな格好なのよ?」
当然の疑問。
「そんな格好って?」
はぐらかすしかない。
「裸!」
ですよね。だが、俺には唯一の良心がある!
「着てますって!」
「裸でしょう! どう見たって5人とも裸よ!」
いやいや、そんなはず。俺は唯一の良心を身に纏っている。青いパジャマ。
「俺は……」
着てるって! と、続けるつもりだった。飛鳥が手に抱えているものが見えるまでは。それは……。
パジャマ!
唯一の良心と同じデザイン。同じ色。
というより、唯一の良心そのものだ。どどど、どういうこと? 俺はいつの間に脱ぎ捨てていたんだろう。
飛鳥の目は「洗濯してくる。あとは若い2人に任せるから」と言っているようだった。とことこと歩いて出て行った。これで、ここにいるのは俺と4つの女体と、七瀬だけ……。気まずい。
俺は、言い訳がましく続けた。
「……俺は……はめられたんだ……」
「バカッ! はめられたのはどっちよ!」
誤解されてる。絶対に誤解されてる。俺は、はめてないのに……。
けど冷静に考えて、誤解されてもしかたのない状況であり、体勢をしている。それでも、やましいことのない以上、俺は訴えるしかない。
「分かってくれ、七瀬。俺を信じてくれ」
「信じられる状況じゃないわよ!」
で、ですよね……。そもそも今日は厄日のようだ。金魚はいつの間にか女体化するし、三姉妹はいつの間にか上がり込んでいるし、パジャマはいつの間にか脱がされている。女体といつの間にかいたしていたとしても不思議はない。
と、ゆうき達が目を覚ました。そして口々に訴えてきた。
「マスター、どうしよう……」
「ゆうきも? まりえも、お腹がしくしくするーっ」
「私も。ねぇ、まこと……私たち、どうなってしまうの……」
「つまりその、産まれるっす……」
なっ!
____________
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます