1本のネジ

 ロケットは見事発射に成功した。久々の宇宙に胸を高鳴らせながら歩いていると、足元から何かが軋む音がする。よく見ると床板を固定していた大きなネジが一つない。このままでは無重力空間に放りだされてしまう。最近のロケットはより多くの人を送り出すために大型化し続けていて、近くに人はいない。緊急ボタンを探すが近くには見当たらない。床が外れることを思うと離れて人を呼びに行くわけにもいかない。私は必死で床を抑えている。床板は軋む音を大きくしていく。もう駄目だ、早く誰か来てくれ、誰か。


Toshiya Kameiさんによる本作品の翻訳がアンソロジー「Cosmos: An anthology of dark microfiction」に掲載されました。

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