姉と寄生

 失踪していた姉さんが帰ってきて数週間になる。姉さんは旅をしている間に出会ってしまったのだという寄生生命体に少しずつ身体を乗っ取られていた。今、姉さんは本を読んでいる俺の肩にもたれてゲームをしていた。彼女の眼球を覗き込むとその裏側にはもぞもぞと動く“彼ら”の気配がある。姉さんは中身が全て変わってしまっても、姉さんのままなんだろうか。「ねえ」姉さんは眠たそうな声をあげた。「君、誰だっけ」彼らに全てを食い尽くされて、俺のことを忘れてしまっても、姉さんは姉さんのままなんだろうか。



Toshiya Kameiさんによる本作品の翻訳がアンソロジー「Home: An anthology of dark microfiction」に掲載されました。

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