Just a sec. #2
〈殺伐感情戦線 第4回【凶悪】〉
※同性間の暴力描写があります
観覧車が見える大きな歩道橋で私が今付き合っている人と結婚するのと軽い気持ちで言ってみたらこの子は急に狂ったみたいに私の手を掴んで走り始めて、風を顔中に感じて息ができなくて、それなのにこの子が向かっている先がホテルなんだと気づいたとき馬鹿みたいに笑えてきて、笑えてきた後にああ私死ぬんだなって何故か思った、動物の勘みたいなやつだけど動物の勘みたいなやつが人間の理性みたいなやつより強いことなんて両手の指じゃ足りないくらいある、この子は憤ったままホテルに入って憤ったまま私の全部を剥ぎ取ろうとする、彼氏に会うために選んだ、街に出れば必ず誰かが着ていそうな流行りの花柄のワンピースも、全部、私はこの子になすが儘にされてでもなんだか笑えてくるのは収まらなくってブラを取られるときに何となく被害者面してみるのも楽しいかもしれないとか思って、いやだ、って言ってみた瞬間この子が興奮したのが分かってもっと笑えてきてしまった、私に見せつけるみたいにして私の唾がついたペットボトルのミネラルウォーターをぺちゃぺちゃと音を立ててなめとるように飲むのもああ私この子に嫉妬されてんだな幸せだなって思えるだけで、私馬鹿みたい、馬鹿なんだけどさ、この子がずっと私を見ているのを知っていてこの子に最後の最後まで黙って結婚のことを進めた私、私の事しか見ていないこの子を私のすべてをもって無茶苦茶にしてみたかったから、この子は私の首に手をかける首に手をかけて全体重をゆっくりとかけていく、私はまだ息ができる酸素の回っている脳でこの子が私にしてくれたことを思い出しながら存在感の強い馬蹄型のネックレスのことを思い出していた、彼氏にもらった馬蹄型のネックレスがこの子の手で押し込まれて私の首筋に跡をつけていく、この跡は多分すぐ消えるのにこの子が私を殺した跡はいつまでだって残ってこの子は捕まって私のせいで人生が無茶苦茶になるんだなと思ったらもうこの子が愛おしくて愛おしくて泣けてきた、泣けてきたし別に死んでもいいやと思っていたのに首を絞めていく君の手を外そうと藻掻いてしまう、凶悪なのは君じゃない、私だよ、知っているよ、私は君のことを見ていなくて君は私の事だけを見ていたね、可愛いね、ごめんね、私はこの世界で一番最低な私が死んでいくのが嬉しくて最後の私が吐く息を聴いていたかったけれどその前に意識が飛んだ、ばいばい。
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