第15話失敗
樽を運び終わった俺は一度盗賊たちの所に戻ることにした。
俺が物置から戻ると広場が何か騒がしかった。
俺が近付くと村人たちは少し困惑した顔で俺を見てきて、その中心に泣いている男の子がいた。
「どうしたんだ?何か有ったんですか?」
俺が質問すると男の子に付き添っていた父親が、済まなそうに俺に経緯を話し始めた。
「いや俺の息子があんたの作ったあの半球状の水の壁を舐めたらしいんだ。
それで余りの辛さに泣いちまってな、まったく盗賊捕まえとく物だって分かりそうな物なんだが。
さっきまで旦那が甘い物を子供に上げてたから、アレも甘いと勘違いしたらしい、済まねえ旦那。
旦那、あの水の塊は毒じゃないんだよな?息子は大丈夫だよな?」
父親が謝りながら毒じゃ無いかしきりに聞いて来る。
いや良かった毒じゃなくて、濃硫酸とかだったら不味い事になってたな。
俺は内心焦りながら父親に安心するように笑いかけ。
「ああ、毒ではないよ、ただしものすごく辛いけど、一舐めしただけで汗が出てくるくらい辛い。
手に着くとヒリヒリして火傷したような痛みが続くと思う、舐めた子はちゃんと手を洗ってこれを飲ませると辛さが和らぐと思います」
俺は子供に近付き手を出してもらい水を掛ける。
そうして手を洗った後はヨーグルトとハチミツを混ぜた物を玉にして子供の口に入れた。
子供の観察をしていると辛さが和らいだのか泣き止んでくれた。
その様子を見ていた周りの人も一息つき胸を撫で下ろし、笑顔で喜んでいた。
父親は息子の頭を押さえ下げさせながら話しかけてきた。
「済まねえ、手間を掛けさせて」
父親が謝って来るけどこれはどう見ても俺が悪いよな、子供の手の届く所に危険物を置いてはいけませんって親から習っただろ?
それなのに対策もせずにほったらかしにしていたんだ、怒られるのが当たり前で、謝られるのは俺自身が許せない。
「こちらこそ申し訳ない、危険物を子供の手の届く所に置いてしまってもっと注意するべきだった」
俺は親子に深く頭を下げた誠心誠意謝る、俺の様子にまた謝ろうとした父親を俺は手で制して声を掛けた。
「お詫びにこれが毒でないことを証明するために昼にスープを作ろうと思う、食べてみてくれますか?」
俺が親子に声を掛けると親子はお互い顔を見合わせてから頷いてくれた。
俺は親子の言葉を聞いて笑いながら早速準備をすることにした。
もちろん盗賊を囲っていた水牢は新しい物にして置く、また興味本位で舐めたら困るからな。
俺は婆さんを探し回りを見回す、俺と目が有った婆さんはやれやれと言いたげに肩を落として俺に話しかけてきた。
「それで何が欲しいんだい?言って見な、あったら持って来てやるよ」
婆さんは口の端を上げ笑うと胸を張る、そんな婆さんの態度に俺は心強さを感じながら頼むことにした。
「じゃあ鍋と根野菜と肉は少ないんだったな、じゃあ鍋と根野菜だけでもお願いできますか?」
俺が必要な物を言うと婆さんはフンと鼻を鳴らし。
「包丁も必要だろう慌てんじゃないよ、肉は無理だけど他は揃えてやるよ。
ほらあんたらもぼっとしてんじゃないよ、手伝いな」
婆さんは近くにいた村人に声を掛けながらその場を離れていく。
その間に俺はアレの配合を考える、ハバネロ先生を入れすぎない様に注意して辛さを調整。
日本人が好きな辛い料理って言えばあれだよね、俺は毎度お馴染み一人暮らしの強い味方、レトルトさんを思い出してそれに辛みとしてハバネロ先生を調合する。
レトルトってしょっぱいけど辛みって少ないよな、俺はレトルトで辛み足すとき良くハバネロ先生のお世話になっております。
まあここまで言えば俺が何を出そうとしているか分かるよね、みんな大好きカレー大使ですよ!
子供にはハバネロ先生入れると辛くなりそうだけど、そこは量作ることで薄めて調整するつもりだ。
俺が考え事をしている間に婆さんが村人たちを伴って食材と調理器具それにテーブルを持って来てくれた。
「ありがとう、じゃあちょっと料理するから待ててください」
俺はみんなに声を掛けると用意を始めた。
先ず始めに火を付けなきゃな、俺が薪を組んで持って来て貰った火打ち石で火を付けようと頑張るが全然つかない。
俺がもたもたとしているのを見かねて婆さんが俺から火打石を取り上げてしまった。
「何をもたもたしてんだい、貸して見な」
婆さんは俺から火打石を取り上げるとさっさと薪に火をつけてしまう。
おースゲーな、俺なんかライターで火を付けるしかしたこと無いから、火打石とか使ったこと無かったんだよな。
婆さんに火をつけて貰ってその上に鍋を掛けるための棒を渡した。
もちろん一人じゃ出来ないから手伝ってもらったよ。
俺ってアウトドア全然できなかったんだな、そりゃそうかキャンプなんて子供の頃にやったっきりだもんな。
火のつけ方はマスターしよう、出来ないとなんかこの世界で生きていけない気がする。
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