第14話水牢

俺は盗賊と子供達に酒と甘味を水玉にして口に放り込むという行動をしていた。

 少しすると子供達はお腹いっぱいになったみたいで別の遊びをし始め、俺は盗賊に専念し始める。

 しばらくすると盗賊たちも酔いが回ったらしく寝始める者が出始めた。

 

「大盤振る舞いじゃ無いかい、儂の忠告聞いてたかい?」


べリアラ婆さんが俺を睨みつけながら声を掛けて来る。

 俺は婆さんの言葉にため息をつきながら。


「いやまあそうなんだけど、取り敢えずこの村にいる間は、もう俺の力も知れ渡ってるから隠しても意味無いかなと思ってね」


俺が言い訳をし始める、婆さんは俺を睨みつけた後、肩を落としてため息をついた。


「まあ儂もあんたの力を使ってショウユやら酒を出して貰ってるんだから、センを攻めるのはお門違いなのは解ってるんじゃが、どうもあんたは危なっかしいからねぇ」


婆さんはため息をつきながら首を振る。

 そんな婆さんの様子を見ながら俺は苦笑いをしていた。

 

「そうじゃ、説教しに来ただけじゃないんじゃ、樽に入れる酒が決まったから呼びに来たんじゃ」


婆さんが俺の所に来た理由を言われ、俺は一旦盗賊たちの前から離れる。

 盗賊も完全に酔っぱらってるから逃げれないだろ、逃げようとしたらハバネロ先生が待ってるからな、そうだ!

 俺は離れる前に考えついたことを実行してみる。

 

俺はハバネロ先生を大量に出し盗賊たちを覆っていく、半円状に包み込みてっぺんだけは空気穴を作って置く。

 うんうまく水牢ができたんじゃないか?こうしとけば逃げ出そうとしてもハバネロ先生に突っ込まなきゃいけなくなる。

 今の盗賊たちにそれは多分出来ない、ハバネロ先生の恐怖が完全に心に沁み込んでいるはずだから。

 

それに一気に通り抜け出来ない様に水飴ぐらいの粘度にしてある。

 あの中に入ったら体中にべったりついてなかなか取れないはず、取れるまで体に絡みついたハバネロ先生が体中をビリビリとヒリ付かせて、かなり痛い思いをすることになると思う。

 下手したら今度こそ失明してもおかしくないと思う。

 

流石にあの中に突っ込む無謀は犯さないと思いたい、本当に無茶はするなよ。

 俺は自分で作った水牢を不安な視線を向けた後、婆さんに着いて行く。

 

大樽の前には村人たちが集まっていた。

 婆さんは樽の前で立ち止まると俺に向き直り。


「それじゃ樽にニホンシュを入れとくれ、甘すぎず辛すぎないからねぇ丁度良いんだよ」


婆さんはそう言うので、俺は樽に掛けられた梯子を上り日本酒を注ぎ始める。

 しばらくドボドボと水が流れ続ける音が響き、いっぱいにするまでかなり時間が掛かった。

 俺は樽に日本酒を入れ終わると樽の蓋を渡され口を閉めた。


作業を終わらせて梯子を下りると婆さんが笑いながら近づいてきて俺の背中を叩く。


「ご苦労さん、これだけ酒がありゃ祭りや祝いの席で使っても無くなりゃしないだろありがたいねぇ」


婆さんは嬉しそうに言うと樽を持っていくように村人たちに声を掛けた。

 でも水の入った樽はかなりの重量になっていたらしくなかなか持ち上がってはくれなかった。

 そうだよな俺もうっかりしてた、水って思ったより重いもんな。

 

村人たちは必死で持ち上げようとしているが持ち上がらないでいた。

 俺は見兼ねて声を掛ける。


「俺が中の酒を浮かせれるかやってみるから、せーので持ち上げてくれ!せーの!」


俺は掛け声を上げながら樽の中の酒が受け上がるイメージを想像する。

 村人たちは少し戸惑いながらも俺の掛け声に合わせて樽を持ち上げる。

 樽は今度は簡単に持ち上がり、そのまま保管する場所へ持っていかれた。

 

酒を補完する場所はかなり広い物置の様な所だった。

 俺達が持って来た樽の他にも農具や甕、木を切る為の斧なんかが置かれていた。

 村人たちはその物置の端まで行くと樽を下ろしたので俺も水玉を下ろす様に想像する。

 

「ふう、これで酒は良いんだよな」


俺が誰に話すでもなく呟くと樽を運んでいた村人が答えてくれた。


「はい、樽はここで保管されることになってます。お疲れ様、酒まで貰て何かお返しが出来れば良いんだけど悪いね、この村貧乏だから大したもんは渡せそうにない・・・」


村人はそう言いながら頭を下げる、俺は別に金が欲しくて色々しているわけじゃ無いからな。

 金が欲しいなら町に出てから稼ぐさ、態々お金のない所から取ろうとは思わんよ。

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