第13話練習

べリアラ婆さんの忠告を聞いて俺も気を引き締める。

 そんな中村人たちに醤油や甘味、酒を配っていく。醤油を配り終わった後は甘味と酒を貰いに来る人が多かった。

 でも朝っぱらから飲んでて大丈夫か?あんまり飲みすぎんなよ。

 俺はそんなことを考えながらみんなに振る舞う。


「おじちゃん甘いのくれよ!」


男の子がニカリと笑って甕を差し出す、俺はそれに液体を入れてやると急いで家に戻っていった。

 いやね良いよ30だしおっさんだけど、やっぱ面と向かって言われるとちょっとショックだよな、でも他に言いようがないもんな仕方ない仕方ないんだ・・・。

 俺は自分に言い聞かせながら配っていく、子供と母親で何度も来る家庭も有った。


俺が子供達に甘味を配ってる間、婆さんと男達は真剣な顔を少し赤らめながら議論を白熱させていた。


「なに言ってんだいこのニホンシュって酒の上品な甘みと喉越し、そして香りが分からないって言うんかい!」


婆さんはどうも日本酒が気に入ってくれたみたいだ、大樽に入れる酒に日本酒を押している。

 男衆はどちらかと言うとウィスキーを押している人が多い、まあウィスキーは他の酒に比べると辛口だからな。

 男性には人気が有るかな。


俺はそんなことを考えながら広場を見渡すと盗賊の見張りをしている村人が物欲しそうに見ていた。

 そうだよな昼間から美味そうな酒飲んでいれば混ざりたいよな。

 俺は訳知り顔でうんうんと頷くと見張りに近づき話掛けた。


「ご苦労様です、よかったら夜まで変わりますよ、もちろん酒も出します。

 ただし夜には変わってくださいね」


俺が笑顔で話しかけると見張りをしていた村人が両手を上げて喜んだ。

 そして自分の家に走り出してしまった。

 ハハ、余程飲みたかったんだな、まあ仕方ないか自分が仕事してる時に隣で酒飲み始めたら誰だって飲みたくなるよな~。

 俺は見張りをしていた村人を苦笑いをして見送ると縛られて座り込んでいた盗賊から声を掛けられた。


「お゛い、お゛っざん、お゛でたじにも、ざけくれよ゛」


口が腫れ上がって良く聞き取りずらい声で俺に話しかけて来る。

 あ゛、今この盗賊俺のことおっさんっつたか?子供に言われるのは分かる、だがテメーらに言われるのは勘弁ならん!

 

俺は眉間に青筋を立てながら俺のことをおっさんって言った盗賊に近づき話しかけた。


「なあまだ懲りてないのか?まだハバネロ先生被り足りない?」


俺が声を低くしながら赤い液体を作り出すと盗賊は震えながら言い訳を始めた。


「ち゛、違うの゛どががわいでるんだ」


なるほど喉が渇いてるのか、なら水をくれっていや良いのに、俺は一度ため息をついて水玉を作り盗賊の顔に近づけた。


「ほら水だ、口開けな入れてやるから」


俺が言うと盗賊は恐る恐る口を開けたので水玉を入れてやる。

 その様子を見てた他の盗賊も声を上げ始めたので水玉を作って口に入れてやる。

 全員に水をやった所で最初に話しかけてきた盗賊が笑いながら俺に声を掛けてきた。


「助かったあんただろ俺達捕まえたの、あの辛い水のせいで喉が張り付くみたいに痛かったんだ。それで酒はくれないのか?」


この野郎喉が潤ったからか良くしゃべるな、まあ条件次第じゃあ飲ませてやっても構わないんだけどな泥酔させておけば捕まえやすいしな。

 反抗されても楽に捕まえられるだろ。


「良いぞ、反抗しないって言うなら飲ませてやっても、ただし酔っぱらって反抗したらこの辛い水頭から掛けるからな」


俺は先ほどから浮かせている赤い水玉を指さし忠告する。

 盗賊たちはその赤い水玉を見て、顔を引き攣らせながら大きく何度も頷いたので、俺は酒を飲ませてやることにした。


「よしなら口開けな、さっき水やったみたいにやるからな」


俺がそう言うとよっぽど酒が欲しかったのか、雛鳥の様に盗賊たちは口を開けて待機し始めた。俺はそんな盗賊たちの口に酒を放り込む。


「うめーなんだこりゃホントに酒か!ドワーフの火酒よりうめー、もっと旦那もっとくれ!」


盗賊たちは酒を飲み込むと口々に要求してくる。

 まったく仕方ない奴らだな、囚われの身だって分かってるのか?まあこの機会に液体操作を訓練がてら盗賊たちの口を的にして練習しよう。

 俺はどんどん酒玉を造って盗賊の口に放り込んでいく、その光景を見て新しい遊びと思ったのか子供が近付いて来た。


「おっちゃんおいらにもやってよ」


男の子はそう言うと口を大きく開けて待機する。

 遊んでたわけじゃ無いんだけど仕方ない、こうなったら子供の分もやってやる。

 子供に酒飲ますわけに行かないからしっかり注意して、作った水玉が酒か甘味か選別して打ち出さないと、これはこれで練習になるな水玉の種類を分ける練習になる。


俺が調子に乗って水玉を飛ばしていると村の子供達が全員集合していた。

 みんな口を開けて雛鳥の様になっている、だけどメープルシロップは最初の方は作らなかった。

 色がウィスキーやブランデーと似てるもんだから、間違えて盗賊の口に飛ばしてしまってメープルシロップ飛ばした盗賊に文句を言われた。


だからなんでお前ら文句言ってくるの、囚われてること自覚してくれよ。

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