第12話酒

俺は女の子の答えに「入れ物を持って来てくれたら上げるよ」と言うと走り出して家に向かおうとする。

 それを母親が止めていた、そんな女の子の持っていた甕にハチミツを入れて一度帰って貰った。

 後で入れ物持ってまた来るだろうなと考えながら他の村人に醤油を甕に入れていった。

 

女の子の一件の後も子供連れが多かったので3種類の甘い液体も水玉にして浮かせて置いて好きな物を子供の持っていた甕や壺に入れていく。

 そうしている間に遠くでも分かる大きな樽を持った2人の男性が俺の前までやって来た。

 それと一緒にべリアラ婆さんも歩いて来る。


「待たせたねぇ、この樽に酒入れとくれ」


べリアラ婆さんは樽を腹を叩きながら俺に声を掛けて来る。

 俺は頷いてからどれを入れようかと考え始めた。


やっぱ樽だからウィスキーかブランデーかな?俺は日本酒進めたいんだけどビールは冷たくないと余り美味しく無いから、樽で保管するんだったらワインとか。

 ラムやジンもいいな、どれ入れようか?俺が選ぶよりはべリアラ婆さんに決めて貰おう。


「婆さん済まない、酒も色々種類が有るから飲んで決めて見てくれないか?」


俺が提案するとべリアラ婆さんはニヤリと笑い。


「そうさね不味い酒入れられても処分に困るるからねぇ、味はしっかり確認しないとねぇ」


べリアラ婆さんは嬉しそうにふぇっふぇっふぇと笑いながら自分の家に入って行きコップを持ってくる。

 それを見ていた樽を持って来た男達や周りに居た男たちが自分の家に走っていく。

 そんな村人を眺めていた俺に婆さんがコップを突き出した。


「量は入れず少しずつ味を確かめて名前を憶えてください、その後好きなのを入れます、良いですか?」


俺が婆さんに確認すると婆さんは「分かったから早くおしよ」と催促してきたので先ずはウィスキーを入れた。

 樽酒ならこれかブランデーが有名だよな、樽に匂いも移って次入れる酒に移りそうだけどこの樽にはこれだけを入れる様にすれば大丈夫だろ。


「先ずはウィスキーです樽で保管するのに合っていますし、醸造した樽の香りだ移っていて味わい深いお酒です」


俺は簡単な説明をしながら婆さんのコップにウィスキーを一口分注ぐ、婆さんはコップを傾けて光に当ててウィスキーの色を確認してから鼻に近づけ匂いを嗅ぐ。

 俺の注いだウィスキーは木の香りを楽しめるバーボンウィスキー、他のものも出せはするけどウィスキーはバニラの様な香りのするのが好きで良く飲んでいた。

 

婆さんは匂いを嗅ぐと目を見開いて驚いていた。

 そして口に入れ、また驚いていた。

 そうだよね口に入れると甘い香りが鼻へ抜ける感覚がたまらないんだよね。

 俺が婆さんの様子を見ていると婆さんは俺をジロリと睨み、口元を緩めて話し始めた。


「美味いねぇ、こんな美味い酒飲んだの初めてだよ口振りからすると他にも美味い酒が有るんだろ?早くお寄こし」


婆さんは言うが早いかコップを突き出してきた。

 俺はそんな婆さんの様子に苦笑しながら次の酒を注ぐ、お次はブランデーだ。

 俺の注いだブランデーはりんごの香りと味わいが特徴的なブランデーだ。


婆さんは香りを嗅いで目を細め笑い口の中に入れてまた微笑んだ。


「今度のはさっきのより甘いんだねぇ、女にゃこっちの方が好みかもしれないね」


婆さんはブランデーの感想を言うと直ぐにコップを突き出してくる。

 思ったよりペースが速いが大丈夫か?まあまだ2杯目だし注いでる量は少ないから大丈夫だと信じたい。

 俺が考えている間も婆さんがコップを突き付けて来るので、俺は肩を竦めて次を注いだ。


次は日本酒にしよう日本酒は好みが分かれる人もいるけど余りアルコール臭くない物にする。

 俺が飲んだことのある物の中で一番いい甘味の有る日本酒だ、バナナの香りに近い日本酒で俺は飲んだ時バナナリキュール頼んだのかな?って思ったほどいい匂いのする日本酒だ。

 口当たりもスッキリしていて飲みやすいから女性にもおすすめ、これ飲んだ後ワンカップとか飲めなくなったからな。


「これも美味いねぇ、それに他のよりスッキリしていて飲みやすい」


婆さんは日本酒を飲んだ後考え込んでしまった。

 樽で保管するってなるとちょっと日本酒は早く飲んで欲しいけど他のなら問題ないだろ。

 それにしても、こんな所で仕事から帰って来てからの晩酌が身を結ぶとは思わなかったよ。

 

俺が晩酌のことを考えていると婆さんが改まった顔で切り出してきた。

 

「センあんた余りその力吹聴しない方がいいよ、砂糖や塩は国によっては外交の要になるって聞くからねぇ、それにこんなに美味い酒を出せるなんて貴族に見つかったら。監禁させて二度と出して貰えなくなるかもしれないよ。

 あんたが村の恩人じゃなきゃ村で囲って逃がさないんだけどねぇ、どうだい今からでも村で暮らす気は無いかい嫁なら見繕ってやるよ」


婆さんがすごい勢いで詰め寄って来る。

 確かに色々出せる俺は権力者には喉から手が出るほど欲しい人材なのかもしれない、でも俺は自由に生きたい

からな、これから戦うときはハバネロ先生に任せてそれ以外は水だけ出せることにしよう。

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