第11話醤油
べリアラ婆さんが俺の言葉を聞いて笑い、一頻笑い終わったら真剣な顔をして頭を下げた。
「ありがとう、盗賊から助けてくれただけじゃなく村のことまで考えてくれて本当に助かるよ。
盗賊の件が片付くまでここで住んでくれて構わないからね、食料の話も村の連中と話し合って極力渡せるようにするさね」
べリアラ婆さんが了承してくれたので俺は微笑みながら頷いた。
そして話が終わるとべリアラ婆さんは村の皆と話しをする為出掛けると言うので俺も一緒に出掛けることにした。
外に出ると広場の中央には盗賊たちが縛られたまま座らされていた。
その盗賊たちを剣を持った村人が見張りをしていた。
「お疲れじゃな、すまんが交代で頑張てくれ、今日町に馬を走らせて騎士団よんでもらうからねぇ」
べリアラ婆さんが声を掛けると村人は気合が入った声を上げて答えていた。
見張りをしてくれているんだから労いも兼ねて酒でも配るか見張り中に飲んでもらうと困るけど、帰って飲むぐらいはいいよな。
俺は今考えついたことをべリアラ婆さんに提案するため声を掛けた。
「婆さん、もしよかったら見張りしてくれた人に俺からプレゼントが有るんだけど良いかな?」
俺が提案するとべリアラ婆さんは片眉を上げて不思議そうに見つめて来る。
そんなべリアラ婆さんに俺は酒の提案をすることにした。
「もしよかったら見張りをしてくれた人に酒を振る舞いたいんだけど大きな甕は有るかな?」
俺がべリアラ婆さんに提案すると見張りをしている人が嬉しさで声を上げる。
べリアラ婆さんは少し呆れながらも微笑み頷いてくれた。
「分かったよじゃあ村で一番の樽を持って来て貰うよ、後は塩が足りない家にショウユを出してくれるとありがたいねぇ」
べリアラ婆さんの話を聞き、俺は頷き樽が来るのを待つ。
べリアラ婆さんは村人たちに話しをして各家を回って声を掛けてもらう。
少し待つと村人たちが集まって来る、その手には様々な大きさの甕や樽を持っていた。
「それじゃあ、今から醤油をお配りします列になって並んでください」
俺が声を掛けると村人たちは顔を綻ばせて並ぶが、俺が甕に醤油を入れ始めると心配そうな顔をし始めた。
「すいません旦那、このショウユってのは飲んでも大丈夫なんですか?
真っ黒いじゃないですか、腐ってたりするんじゃないですか?」
俺が注ぐ醤油が黒かったせいで村人は不安そうに聞いて来る。
俺はそんな村人に笑いかけながら。
「発酵させてるから腐ってると勘違いされるけど、飲んで害は無いから大丈夫だよ」
俺は心配そうにしている村人に話しかけ安心してくれるように説明する。
村人も何となく納得して甕をもっていった。
それから俺はその樽や甕に醤油を入れていく、すると女の子連れの親子が甕を持って来たので、俺は女の子にサービスするためと液体操作をやってみようと考えた。
「お母さんのお手伝いか偉いね、偉い子には良い物をあげよう」
俺は女の子に話しかけると女の子の目の前に黄色い液体と透明な液体、そして褐色の液体を玉状にして浮かせた。
おお!上手くいった。俺の考えた液体を水玉状にして空中に浮かせる。
何で浮くのかとか全然わからないけど、実際出来るんだから活用しないわけに行かない。
俺は女の子の前にその三つの水玉を差し出した。
「偉い子にはこの中のどれかをお嬢ちゃんの持ってる甕に入れてあげるよ、どれがいい?もちろん味見してもいいよ、舐めて見て」
俺が女の子に目線を合わせながら笑いかける、女の子は自分の前に浮かぶ水玉に恐る恐る指を突き入れて掬い取る。
女の子が最初に選んだのは黄色い水玉、ハチミツだった。
「あま~い、おいしいよこれ、ハチミツかな、おいしいよおかあさん」
女の子は掬い取ったハチミツを口に入れた瞬間、頬を蕩けさせ母親にも掬い取った指を突き出し話しかける。
母親は娘の突き出した指を舐めて甘さに驚き目を見開いた後、娘の頭を撫でながら笑い。
「おいしいね、ハチミツ貰っていく?」
母親がそう言うと女の子は元気に「うん!」と答えていた。
あ~ハチミツか一番無難な所に行ったなできれば他のも味見してほしいな~。
「ハチミツだけじゃなくて他のも美味しいよ」
俺は折角だから進めてみた。女の子は俺の言葉にハチミツの残った指を咥えながら悩みだす。
そんな娘の様子を見て母親は微笑み、俺も微笑んでいた。
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