第9話朝だよ

朝だぜ、田舎の朝は早い、けど俺もこの3日森の中で歩き回ってた時は日が出たら起きて日が落ちたら寝てた。

 俺はベットから降りると身体を伸ばす、そして窓から差し込んでくる陽射しを見て目を細めた。

 

「おはようございます」


俺は部屋から出ると挨拶をする。

 テーブルの有る部屋にはもうべリアラ婆さんいて、朝ご飯の用意をしているみたいだった。


「おはよう、セン、昨日はしっかり眠れたかい?」


べリアラ婆さんはかまどに掛かった鍋を掻きまわしながらこちらに振り向きもせず聞いて来る。

 俺はべリアラ婆さんが鍋を掻きまわす姿を見つめながら、魔女が魔法の薬作ってる時みたいだと考えていた。

 

「はい、眠れました。寝床貸してくれてありがとうございます」


俺が返事をしながらお礼を言うとべリアラ婆さんは「どうってこと無いよ」と答えた。  

 俺は「顔洗ってきます」と言いながら扉から出て行こうとする。

 べリアラ婆さんが「早く帰ってきな、朝飯にするからねぇ」と答えてくれた。


俺はべリアラ婆さんの家を出ると裏手に周り、自分の手から水を出しながら顔を洗う。

 液体操作を使える様になったからか、手の平から適量の水が顔を洗ってる間常に出る様にして顔を擦る、それだけで顔を洗い終わってしまった。


俺がべリアラ婆さんの家に戻るとべリアラ婆さんはスープを木の深皿に注いでいる所だった。

 

「もう戻ったのかい?早かったね。朝ご飯できたから、センも座りな」


べリアラ婆さんがスープが入った皿を持ってテーブルへ歩いて行く、俺も釣られてそちらに歩いてべリアラ婆さんの前の席に付いた。

 テーブルの上には顔ぐらいの大きさの黒いパンが籠の中にあり、スープが入った皿が有るだけだった。

 手前には木製のスプーンが置いてあり、まな板と包丁も置いてあった。


俺が席に付くとべリアラ婆さんが、パンをまな板の上に置き包丁で薄くスライスしてくれる。

 

「いただきます」


俺は手を合わせ声に出して言う、べリアラ婆さんは不思議そうに俺のことを見てきた。


「何だいその祈りは?あんたの信じる神は祈りの言葉はそれだけでいいのかい?」


べリアラ婆さんがそんなことを聞いて来たので俺は首を傾け。


「今のは祈りと言うか、食べる食材に感謝を込めていう言葉なんだ。俺神様ってイマイチわからないから」


俺はそう説明する、俺って無神論者だから神様ってイマイチわからないんだよな~、まあでももし神様がいるなら家に帰してくれって言うだろうけどな。

 俺がそう言うとべリアラ婆さんは「そうかい」と言うだけでそれ以上は聞いてこなかった。

 

べリアラ婆さんは話をし終わると切ったパンを3切れほど渡してきた。


「もっと欲しい時は自分で切りな」


べリアラ婆さんはそう言い自分の分も切り終わると食べ始めた。

 俺はべリアラ婆さんが食べるのを見てからパンを口に入れる。

 う~んパサパサする、麦の香りが口いっぱいに広がって美味いんだけど食感はパサパサしてて若干硬い、日本のパンが柔らかすぎるって言われればそれまでだけどね。

 牛乳欲しくなるな口の中が渇く、あ、だからスープが有るのか。

 

俺はスープをスプーンで掬い口に流し込む。

 うん塩味のスープだ肉がほとんど入っていない野菜の少し入ったスープだった。

 食べさせて貰ってるんだから文句言うなって、まあ確かにそうだよな。

 少ない食料の中から俺に分けてくれてるんだ文句なんかいったら罰が当たるな。

 俺がスープについて考えこんでいるとべリアラ婆さんが話しかけてきた。


「具が少なくて悪いね、家で作れるのはこんなもんが精々なのさ、この村は町から遠くてね今息子夫婦が町に塩を買いに行ってるから余り塩を多く使えないのさ。

 それに近くの森は魔物も多い、魔物も強くて村の者じゃ狩れなくて肉も手に入らん、唯一野菜と麦は何とか手に入るが税で持ってかれちまって手元にはほとんど残らんのさ」


べリアラ婆さんが村の現状を話してくれる、俺が考えていたより村の生活って辛いんだな。

 なら色々と使える液体を出して渡してあげよう、先ずはこれからかな。

 

「べリアラ婆さんコップとかかめって用意できますか?」


俺がそう言うとべリアラ婆さんは流し台の近くに置いてあった食器の中からコップを持って来てくれる。


「ハイよ、コップなんて何に使うんだいって、あんた水が出せるんだったね、水が欲しかったんかい?」


べリアラ婆さんは不思議そうに聞いて来るので俺は笑いながら。


「それは見てのお楽しみだ」

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