第6話村人迎えに行く

盗賊の頭が倒れたことで捕まっていた女性は恐怖からその場に座り込んでしまった。

 俺は大きく息を吐くと辺りを見回す、すると村人たち全員と目が合った。

 どうも俺が盗賊の頭を倒したけど、味方なのか敵なのか分からなくて困惑してるみたいだ。


「村の外れで親子が助けを求めてきたので助けに来ました。今ロープを外しますね、少し待っててください」


俺は村人たちに敵でないことを話しながら一番近くにいた人のロープを外してあげる。

 ロープが外れた村人たちは感謝し、まだ捕まってる人のロープ解いていく。

 俺は村の外れに待たせてある村人のことを思い出して呼びに行くことにした。


「すいません、俺が助けた村人が村の端に居るので迎えに行って来ますここはお願いしても大丈夫ですか?」


俺がそう声を掛けると村人の中から背の曲がった老婆が進み出てきた。

 俺がその人に視線を向ける、老婆はその長い眉の間から鋭い眼差しを向けて来る。

 皺だらけの顔と鷲鼻が魔女の様だった、実際魔女の格好させたら違和感なくなりそうだ。


「分かったよ、ここは任せな儂が責任をもって皆を落ち着かせておくよ」


お婆さんが断言してくれたので俺は一度お辞儀をすると村の端で待ってる人たちを呼びに行った。

 村の端では俺の助けた人たちが固まって不安そうにしていた。

 

俺が村の端まで来ると皆顔を綻ばせて走り寄って来た。


「旦那!無事でしたか、途中で旦那の怒声が響いて来たんで俺達も村に行こうかと思ったんですが、旦那に言ってもらったことを思い出して踏みとどまってました。

 それで村の方はどうですか?村のみんなと盗賊たちは?」


俺がここを離れるときに話した若い旦那さんが心配するように話しかけてきて、他の村人たちもその話を不安そうに聞いていた。


「ああ、盗賊は全て倒したよ、村人は何人か倒れてるのを見つけた。・・・助け切れずに済まない」


俺はみんなに村が安全であることを言うと途端に顔が明るくなったが、俺が盗賊にやられた人が居たことを言うと村人たちは神妙な顔になった。

 そんな中若い旦那さんが頭を上げ俺に向かって笑顔を向けてきた。


「旦那が謝ることじゃないですよ、盗賊を倒してくれたことだけでも感謝してもしきれないのに、誰も責めたりしませんよ、俺達が生きてんのは紛れもなくあんたのお陰だ!」


若い旦那さんは笑顔でそう言うと俺の肩を叩いた。

 俺はその言葉を聞いて気分を切り替えた。

 そうだな今は取り敢えず火を消さないと、他の家に広がったら被害が増える。

 

「とりあえず村の人たちが集まってる所に行きましょう、それからどうするか決めましょう」


俺が村人たちに話すとみんな頷いてくれて一緒に固まって村の中央広場まで歩いていった。

 もちろん盗賊も連れて行く、最初の盗賊はもう目を覚ましているようだったけど腫れた瞼を少し持ち上げて、タラコの様な唇で何かふがふが言っていたけど無視しておいた。

 だってどうせ恨み言かなんかでしょ?そんなの聞く気無いに決まってるじゃ無いか、前にも言っただろ襲っていいのは襲われる覚悟が有る奴だけだって。


俺達は縛られた盗賊を馬の背に乗せ中央広場まで移動する、途中まだ倒れたままになっている村人を見かけた時、一番最初に助けた親子が倒れている村人に走り寄った。


「お父さん!」「パパ!」


2人は倒れている村人に走り寄ると跪いて村人に触れた。

 その時冷たくなっている村人の身体に触れたからか一度触れた手を引き、空いている手で口元を押さえ母親は死体に縋りつくと泣き始めてしまった。

 子供も最初は何が起きたのか分からなかったみたいだが、揺すっても起きない自分の父親と泣き崩れる母親の姿を見て察してしまったらしい、大きな声を上げて泣き始めてしまった。


そんな親子を前にしていたたまれない気持ちになっていたが、俺が俯いているのを見て若い旦那さんが声を掛けてきた。


「今はそっとしとこう、あんたは最善を尽くしたと思う、悔やんでも人が生き返るわけじゃない時間が解決してくれることを祈ろう」


若い旦那さんの言葉に俺は頷くことしかできなかった。

 落ち着くまで若い旦那さんの家族が一緒に付いてくれると言うので、俺は他の人たちと一緒に中央広場に向かった。


中央広場に付くと俺が倒した2人の盗賊が中央広場に連れてこられていた。

 1人はまだ気を失っていたがもう一人は気が付いていた。

 たぶん気が付いてる方は過呼吸になったほうだな、他の盗賊より顔の腫れが少ない、目もしっかり開いてるし唇もタラコじゃない。


俺が村人を連れて戻ると中央広場に集まっていた村人たちが一斉に顔をこちらに向けて来る。

 その中からあのお婆さんが出てきて俺の前に立ち止まった。


「お前さんかいお前さんが出てきた家から盗賊引き摺り出してきたよ、他にも居たと思うがどうしたね」


お婆さんの言葉に俺は思い出し、空いていた家に放り込んだことを言うと、男性陣が俺の言った場所へ走っていった。

 さて俺はどうするかな、出来れば疲れたから泊めて貰いたいけど、お願いしても大丈夫かな?

 俺が緊張で疲れてぼおっとしていると、お婆さんがテキパキと指示を出していた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る