第5話盗賊の頭

俺は窓から顔をひょっこり出し両手を盗賊に突き出し叫ぶ。


「こっちだ三下!お前らも地獄の苦しみを受けろ!」


俺の叫び声に反応した盗賊たちがこちらを向く、それと同時に奴らの顔目掛けてハバネロ先生にご登場してもらった。

 

「ぎゃあーーーーー!目があーーーーー!」


「うぎゃーーーーー!げほがあ」


2人の盗賊が苦しみ出したので俺は窓から家の中に入りハバネロ先生を掛ける。

 だがその間に1人の盗賊がヒュウヒュウとなんだか危なそうな呼吸をしだした。

 あ、やべこの人辛い物苦手だったのかな、それともアレルギーとかマズイ早く洗い流さないと。


良い子の皆は辛い物が嫌いな子に無理やり辛い物を食べさせちゃいけないよ、意識失うだけならいいけど酷い時は障害が出たりもっと酷くなると死んじゃうからね。

 泉お兄さんとの約束だよ、現代で無理やり食べさせて死んだら殺人だからねってこの世界でも同じか。


俺は変な呼吸をしだした人に少しでも辛さが和らぐように、丹念に水で洗って口を開かせてハチミツ医師を流し込んだ。

 体に付いたハバネロ先生は洗い流して過呼吸の盗賊はやっと落ち着いた。

 まあ落ち着いてくれたので暴れられない様に縛って置く、死んでもらうと寝覚めが悪いから助けるけど暴れるようなら今度は放置する所存です。


「おい!今の叫び声はなんだ!返事しやがれ!」


最後に残った盗賊の頭かな?頭が広場で叫んでる。

 返事をしろと?ならば答えよう!

 俺は盗賊を縛り上げ終わるとその家の入り口から堂々と出て行く。


「こんばんは盗賊さん、俺は清水泉しがない下水処理場の職員だ短い間だけどよろしくな」


俺が片手を上げながら出て行く、盗賊の頭は一瞬呆けた顔で俺を見てから叫んだ。


「なんだテメーはこの村のもんじゃねーな、なんだその格好はどこの国の衣装だそりゃ?」


頭は俺の作業着やヘルメットを見て警戒しながら質問してくる。

 俺の格好そんなに変かな動きやすいし結構丈夫なんだぜこれ、ヘルメットなんて現場用だから安心安全の日本製、ハンマーで何度も殴られても少し罅が入る程度で済む優れものなのに。

 俺は自分の格好をもう一度見回す、現場で使っていたツナギにメット安全靴、軍手も有る。

 正直村人たちの服の方が俺は大丈夫かと聞きたくなる。

 盗賊の頭は革鎧来てるけど多分その革鎧じゃ防具にならねーんじゃねーか、革ジャンの方が防御力高そうだもんな。


俺が自分の格好を気にしていると頭の居る方から女性の悲鳴が聞こえてきた。

 俺は慌てて盗賊の頭を見ると頭は女性を引っ張り上げ首に剣を当てていた。


「動くな!動いたらこの女を殺すぞ!」


盗賊の頭は剣を首に当てたまま怯える女性の顔を舐める。

 あー俺のバカ!何で敵目の前にして自分の服装チェックなんてしてんだ。

 さっさとハバネロ先生ぶっ掛けておくんだった。


俺が悔しそうな顔をしているもんだから、頭はニヤリと嗤いさらに女性の服を襟元から無理やり引き裂いた。

 女性の豊満な白い胸が露わになる、女性は悲鳴を上げ両手で身体を隠そうとするが盗賊の頭がそれを許さなかった。

 

「動くな!」


盗賊の頭は女性に命令すると俺を睨みつけながら空いてる手で女性の胸を揉みしだく。

 俺は盗賊の頭の行動を見た瞬間何かが切れる音を幻聴した、頭に血が上るのを感じる、心臓が早鐘を撃つ。


あ、ああ、あんた生きてる価値無い人間か、そうかいくら悪党でも殺すのは寝覚めが悪いと思てたけど、生きてる価値無いクズは早く片付けないといけないよな。

 これ以上生かしといたらまたいつ同じことするか分からないもんな、そうかならあんた死んでくれ


俺は余りにも頭に血が上ってるせいでボウっと立ち尽くしていた。

 そんな俺が不気味に映ったのか盗賊の頭は声を張り上げ叫ぶ。


「何だもうあきらめたのか?ならそこで大人しくこの女が犯される所でも見てな!」


盗賊の頭は俺があきらめたと思ったのか今度は女性のスカートを手で捲り上げようとした。

 その行動を見た俺は盗賊の頭の頭を指さし話しかけた。


「なあ、あんたもう死んでくれ、あんた見てると俺は正気で居られそうにない」


俺はそう言い盗賊の頭の頭に風穴を開けた。

 頭に風穴を開けた盗賊の頭は足から崩れ落ちる様に倒れ込む、俺は盗賊の頭を指していた指を静かに下ろした。


いきなり盗賊の頭が倒れ込んだことに村人たちは驚いている。

 俺がやったことは至って簡単、でも普通は機械が無いと出来ないこと、指先から研磨剤の入った液体を高圧で発射した、ただそれだけだ。

 本来はスゲー高価な機材で超高圧にしないと出来ないんだけど、俺は指先からそれを出せるようになっていた。

 森を彷徨っていた時に思いついた手だ、殺しなんてしたく無かったけど俺にも許せないものがある。

 

俺は人を苦しめて楽しむクズが一番嫌いだ現代でも殺してやりたいほど嫌いだった。

 だけど俺にはこんな力は無くて職業も下水処理場の職員なんてしてるもんだから力は無かった。

 でもこの世界に来て力を手に入れた、昔、子供の頃に憧れたヒーローみたいなことができる。

 普通だったらそれも理性が邪魔をして出来ないはずだけど、盗賊の頭の行動は俺の堪忍袋の緒を切っちまった。

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