第1話ハバネロ先生

この深い森に来て3日目、俺は相変わらず森の中を彷徨っていた。

 彷徨いながら色々試してみたぜ、もう食うもん無くて彷徨い続けてやっと見つけたもんがきのことか、さすがに生で食うのは怖いから食わなかったけど。

 だが試した結果マヨネーズが出てきた。

 マヨネーズありゃそこら辺の草でもマヨネーズ掛けて食えるだろうと思って早速試してみた。

 

もちろんいきなり食べて毒草だったら不味いから、口に入れてよく噛んでしたがピリピリしてこないもんだけ食った。

 出せる物も増えたけど、出し方にも工夫した。

 手の平下にしてだと飲みずらいし顔に掛かるから、手酌の格好にしてその手の中にだけ出る様に考えたら手酌から零れない程度に出せるようになった。


そんなことをしながら人が居る所を探して歩き回った。

 お前森ん中3日も歩き回って、動物や魔物に会わなかったのかって?

 がっつり会いましたよ、2日目の夜に野生動物怖くてぶっとい木の枝に上って落ちない様にしながら休んでたら、いきなりすごい振動が起きて何だと思って下見たら。

 こめかみから捻じれた角を2本生やした熊が、俺の寝てた木を揺さぶってやがった。

 マジで怖かった、落ちたら死ぬって思って必死で落ちない様に捕まってたんだけど、全然あきらめないから上からハバネロエキスたっぷり顔目掛けて掛けてやったらスゲー叫び声上げて逃げてった。

 

それからはなんか野生動物や魔物に会ったら、とりあえずハバネロエキス撒いて逃げたぜ。

 ハバネロエキスなんて手で直接触れたら手がビリビリしそうなもんだけど、俺が作り出した液体は俺には害がないらしい。

 おかげさまで何とか生きてるよ、でも森で迷子は変わらないとだな~せめて人に会いたい。


俺はそんなことを考えながらひたすら歩く。

 歩き続けてそろそろ寝る場所を探さないとと考えながら大きな木を探す。

 

「クッソ、デカい木ってなかなか生えてないな、俺の体重を支えられる枝が生えてれば良いんだが、中々無いな・・・」


独り言を呟きながら歩いていると大分暗くなってきていて、森の中のせいでかなり暗くなってきていた。

 辺りが暗くなった所で俺は何とか俺の体重を支えれそうな木を見つけた。

 おっやっと見つけたぜ今日の寝床、下で寝るのは流石に怖すぎるからな。


俺は一生懸命、木をよじ登りある程度登った所で一息ついた。

 一日歩きづめで俺は直ぐにウトウトとし始めた。


深夜俺は瞼に感じる光で目が覚めた。

 欠伸をしながら目を開け辺りを確認する、相変わらず空には月が浮かび星の光が夜空を彩ていた。

 だがそれだけでは無く、木と空の境目が赤い光に染まっていた。

 

何だ?火事か?火事なら早く消さないと森の中に居たら焼け死んじまう。

 でもおかしいなあれだけ光ってるのに煙がこちらに流れてこないぞ、こっちが風上なのか?

 ならちょうどいいボヤ程度なら俺の水で消せるだろ、消せなかったら自分に水掛けて逃げるとするか。

 取り敢えず調べにいかんと始まらんな。


俺は自問して行動を決めると明るくなってる方に向かって走り出す。

 火の光に向かって走り出すと、光が近づくほどに密集していた木がどんどん少なくなっていく。

 

そして何が燃えているのか火の光に照らされて輪郭が見えてきた。

 お、家だ平屋の家が燃えてる!え、マジか山火事じゃなくて人が住んでるとこが燃えてんじゃねーか。

 これでもし住人が焼け死んだりしたら、初めての第一村人が死んじまう。

 

俺は走って近づくにつれ、悲鳴と叫び声が聞こえてくる。

 火の手と煙が立ち上り人影が動き回ってるのが見える、それに馬に乗った人の影も見えて来る。

 うん?明らかに人が馬に乗った人から逃げてる様に見えるな。

 それになんか馬に乗ってる奴、剣みたいな長い物を振り回して人を追いかけてるみたいだ。

 

これはただの火事じゃねえな、どうしようこのまま突っ込んで、剣振り回す人間を相手に大立ち回りなんて出来るのか?

 自慢じゃないが格闘技の経験なんて学校の授業以外ないぞ!

 でも無力化するだけなら俺にはハバネロが有る、あれ目に入れば下手したら失明するかもだけど、剣で人襲ってる時点で犯罪者だし少しぐらい痛い目に遭っても大丈夫だよな。

 動けなくしたら直ぐ洗ってやれば大丈夫だろ、襲っていいのは襲われる覚悟の有る奴だけだってね。


俺は走って平屋の立っているたぶん村だろうと思う方に向かう。

 するとあちらから女性と子供が必死で走って来るのが見えた。

 ついでにそれを追いかけて馬に乗った男が来る。


「た、助けてください!」


俺に気付いた女性が子供の手を引きながら走って来る。

 女性に手を引かれながら子供は転ばない様に走るのがやっとで、泣きながら必死で走っていた。

 後ろを追いかけていた馬に乗った男は、逆光でも分かる口の端を吊り上げた嗤いを顔に張り付けて、親子をいたぶるように追い詰めていく。

 

俺はそれを見た瞬間頭に血が上るのを感じた。

 クズが人様を虐めて楽しんでんじゃねーぞ!!こんな奴らに手加減なんて必要ねーな!

 ハバネロ先生漬けにしてやる!苦しんでも水で洗ってやらんからな!!


俺は怒りに任せて馬に乗った男に手の平を向けた。

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