それは命の泉沸く

渡海

マルクス村

プロローグ

俺は清水泉しみず せん。下水処理施設で働く30代のおっさんだ。


 身長も170と平均的だし顔も平均的だ、けして不細工じゃないがモテるほどイケメンでもない。


 毎日毎日施設が正常に稼働しているか見周りしたり、制御室で画面を見る毎日。


 施設が止まったら上司にどやされるから真面目には働いてるが定期的な見周りがキツイ。


 匂いが鼻だけじゃ無く目にも来る!臭いだけじゃなく痛い、最初のころは吐きまくった。




この仕事長続きする奴がいないためいつも人手不足だ、だから毎日交代で日勤と夜勤をヘビロテで繰り返す。


 正直眠くてたまらない、夜勤は何時も寝不足で見周りをしてる。




今日も夜勤で眠い目を擦りながら見周りをしてた。




「ふぁっ、ねみー、毎日設備点検のためとはいえ見周りするのもキツイな、ふぁ・・・」




俺はそんな独り言を言いながら見周りをしていた時、俺は何かに躓いて倒れ込みそうになった。


 咄嗟に汚水プールを囲んでる柵に手を掛けた時、バキンとすごい音がして俺が寄り掛かった柵が壊れて俺は汚水プールに真っ逆さまに落ちていった。




ああ、俺の人生つまらん人生だったな、趣味らしい物もほとんどない、暇つぶしでスマホでゲームや小説、動画サイトを見るぐらいしかないような人生だった。




暗い水に沈んでいく身体を動かす気力も無く、俺は沈んでいく。


 沈んで沈んで、本来なら底に着いてもおかしくない距離沈んでいるような気もするが、俺はそれを気にする気力も無くただ眠気に襲われるまま目を閉じた。




目が覚めると俺は森の中で一人で寝転がっていた。


 見上げる空は果てしなく澄み渡っていて俺はしばらく見とれてしまった。


 思えば仕事が忙しすぎて空なんてずっと見て無かったことを思い出し、ふと笑いが込み上げてきた。




一頻笑った俺は身体を起こして辺りを見回す、俺の目の届く限りは森だった。


 あれ、俺汚水プールに落ちたはずだよな?なんでこんな所にいるんだ?


 俺は不思議に思いながら自分の身体の調子を確認する。


 服装は仕事着である青いツナギのままだ、しっかりヘルメットもしている。




俺の近くには落ちるときに持っていたライトとポケットに入っていたスマホと財布、後は点検のための資料とクリップボード、胸のポケットには赤と黒のボールペンが1本ずつ刺さっているだけだった。


 それにしてもここはどこだ?あまりにも俺がいた下水処理施設とは違いすぎる、まるでどこかの山の中だ。




う~んこれはもしかしてあれか?小説とかであった異世界転生って奴か?でも身長は成人した時の俺の身長と変わってないし、異世界転移の方かな?ならどっちでもスキルって超能力みたいなのが手に入ってるはずだろ?


 確か小説だとスキルを調べるときなんて言ってたかな、確か。




「ステータス」




俺は記憶をたどり呟く、すると目の前に半透明なスクリーンが表示された。




「うお!びっくりしたマジで出るんか、出ると思ってなかったんだけどな、でもこれが出るってことはここ異世界なんか?」




俺は半透明のスクリーンをまじまじと見ながら呟く、出てきたスクリーンを見ると大まかに俺の名前なんかが書いてあった。




名前 清水泉 


年齢 31


レベル 1


戦力 10


スキル 液体生成






これだけか?戦力10って強いんか?液体生成って、水が出せるんか?こんな森ん中でいつ水場が見つかるかわからんから正直助かるっちゃあ助かるが。


 水か~前世で汚水処理場で働いてたせいかな?取り敢えず出してみるか。




「水、出てこい!」




俺は声に出して言うと手の平から水が滝の様に流れ出し始めた。


 う~んこれなんか手汗が大量に出てるみたいで余り飲みたくないな。


 でも飲めるかどうか確認しておかないと後々困るよな。




俺は自分の手の平から出て来る水を蛇口から流れ落ちる水を飲むように頭を横にして飲む、口に入った水は冷えていてまるで湧き水でも飲んだみたいに美味かった。


 美味い!まさか自分の手の平から出る水が冷たいなんて思わなかった。


 これで水には困らないな、後は人里を探さないとな。




俺はそう考えて取り敢えず歩き始めた。


 最初は水さえあればなんとかなるとか考えてたよ!でも方向も分からない状態で歩き回るのはやっぱり堪える。


 取り敢えず日が傾いて行く方に歩いて行ってるけど、正直正しいのか解らんこんなことならキャンプの知識とか覚えておくんだった。




暇だから歩きながら水の出せる場所を手の平以外でも出来ないかと試してみた。


 その訓練のお陰で指先からも出せる様になった。


 しかも温度まで変えられることが分かった、顔が洗いたくてお湯が欲しくて。




「お湯出てこい」って言ったら本当にお湯が出てきた。




最初お湯出て来いって言った時、出てきたのは湯気がもうもうと立つ熱湯だった。


 だから適温のお湯を考えたら、ちょうどいいお湯が出てきたくれた。


 本当に便利だぜこのスキル、でもこのスキル液体生成なんだよなってことは他にも色々出せるのかもしれないな。




そんな実験してる間に2日がたっちまったよ腹が減って死にそうだ。


 液体が生成出来るってことで何とか生きてられるけどそろそろ本気で固形物が恋しい。


 肉、マジ肉食いってー!俺の今の主食は牛乳だよ!赤ん坊に戻った気分だ、牛乳しか飲めない生活とか考えて無かった。

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