第10話 戦闘開始!
ここで私は、
これは親から
構えてすぐに動くのではなく、相手の出方を見る。後ろには
ゴブリンはニヤリと笑う。
「生意気な人間が。よほど死にたいと見た!」
それから、1度
こんなもの、と心の中で言いつつ、私は攻撃をヒョイと難なくかわす。
その後も、むさ苦しい声を
「ええい、虫ケラごときがちょこまかと!」
虫……。なぜ、こんな奴にそこまで言われなければならんのか。自慢(なのかな?)の
「よーしよしよし、いい感じ」
ハナの言葉が聞こえた。ハッキリとではなく、ゴブリン側からは聞き取りづらいだろう小さな声だった。狙われないための工夫かな。
その彼女の方をチラリと見ると、両方の拳をグッと強く握っている。表情は天気に例えれば、曇りから晴れに切り替わるところというのが適切か。
ゴブリンよ、申し訳ないのだが、今度は私が
私が最初にどこを斬るかは、適当に──ではよくないな。私も腹部を狙ってみよう。
「うおっと!」
ゴブリンはこちらのスピードに驚きはしたものの、後退が間一髪間に合って、刃を受けなかった。自分もノロマではないぞと言わんばかりの顔をする。
「……ふぅ、ヒヤッとしたぜ」
本音は
この攻撃が外れたからといって、私の気持ちに変化があったかといえば、そのようなことは決してなかった。至って冷静。だからこそ、そこからほんの数秒後に、こっそりと次の斬撃──奴にダメージを与えることに成功したのである。
「ぬうッ!?」
ゴブリンが、痛みを感じた部位に目をやる。
左のふくらはぎに斬られたような跡ができており、赤い血も流れ出ている。
いつの間に、とでも思っているのかな。これも、一瞬でも見せた気の
傷は浅めなので、奴は通常通り立っていられた。それでなのかわからないが、急に態度が大きくなった(あ、それは元々か)。
「……なんてな。その程度か小娘。いいかよく聞け。オレ様はな、間抜けな人間のおかげで、最上位種であるゴブリンキングをも
一旦手を止めた私に対して、緑色の巨体はこれでもかと挑発してくる。私も先程したから、お互い様か。
このようなことを言われたら、怒りのボルテージが上がる人もいるだろう。だが私は違う。そもそも、そういった感情が
「他に、ねぇ……」
私はしばし思案してみる。
ハナがブツブツと何か言っているが、こちらからは解析が困難である。ただ、明るい内容ではないことはわかった。あれが私の通常攻撃だと思っているのなら、それは勘違いである。私はわざと力を抜いたのだ。真面目と違う? いえいえ、あの時は当てるだけで充分だった。これくらい力を入れたらどの程度のダメージとなるか、という実験みたいなものだったのだ。
結果、倒せない相手ではないことが判明した。
これからの状況だが、こちらが有利になるか不利になるかは、私次第。奴が言ったように手の内を明かすと、もしかしたらビビってくれるかもしれない。でも大技は使いたくない。なんで、たかがゴブリンごときに……。できれば、いかにもな技というものは抜きにして、この害悪モンスターを倒したい。それならば──
「う~ん、あるにはあるんだけど……」
「何? 何? 早く言ってお願いーー!」
ハナが、早く私の言葉の続きを知りたがっている。周囲の木々も、まるで意思を持っているがごとく、サワサワと音を立てる。
「実戦でやったコトないから、その時になってうまくいくかどうか……」
「やっぱ何かあるのね!? えっ、どんなの? 確実なやっつけ方とかあるの!?」
ハナが問うが、私はすぐには答えない。
「なんだ? 『とっておき』とかいうやつか? まぁ、そんなものがあったとしても、オレ様には鉄壁の守りがあるからな。通用せんと思った方がいいぞ。やりたければやるがいい。どうせ無駄だがな」
なにが『鉄壁の守り』だ。だったらその
「あぁ、ココでそんなの使うつもりはないんで。あの『力』を使うなんて……実に、あまりにも
「無駄遣いって……そーなの!? つまりソラにとってそいつは、そこまでする価値のある奴じゃないってこと? 普通に斬ったり刺したりで充分、という解釈で間違いないのよね!?」
「うん」
今までオロオロしていた親友の周りに、いくつもの花が咲いたような
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