第9話 巨大ゴブリンが、あらわれた!(2)
私にとってはこれが初仕事になるということで、まったく緊張していないわけではなかった。しかし、それを口に出してしまうと、ハナを
「うへ〜、いよいよやるのね」
ハナは気が気でない様子。そうだろうな。彼女が何か
「ソラ、
「今のところはね。怖がる理由が見つからない、と言えばいいかな」
「私、メチャクチャ見つけてるんだけど!? ……なんで? なんでそんな平然としていられるの? もしかして、何か良い
策かぁ……。特に考えていなかったな。
「別に何も」
「んがっ」
ハナは、私が顔色ひとつ変えない理由を知りたがっているのかもしれない。先程の格上発言は、多分この様子からして信じていない。
とりあえず、巨大ゴブリンは見たので、ハナと青年には
「ねぇねぇ、やっつけてほしいゴブリンって、アレ1匹だけよね?」
「そうだよ。他のゴブリンには、薬はやっていないって、あのお兄さん言ってたからね」
「よかった〜。2匹も3匹もいたら、それこそソッコーおさらば案件よ。ソラは何て言うか知んないけど」
ん? 私?
「そうねー。実際にそれくらいいたとしても、やっぱり私は逃げずに戦っちゃうかなー。初めは簡単な仕事で、自分の実力を確かめてみたいからね」
「いや、これ簡単じゃないから。
「今日は大丈夫。私が一緒だからね……と。ちょうどいいところで会ったねー」
私たちから見て右側から現れた、1匹の魔物。その姿かたち──まさしく、今回のターゲット!
「ひいッ、出たぁ!」
ハナが、私の肩にしがみつく。本当はササッと
見上げてみると、確かに山のように大きい。体格もガッチリしている。薬のせいとはいえ、一般的なゴブリンとは明らかに違う。これと戦えと言われたら、なるほど、常人なら逃げたくなるかも。しかし私は、これを倒すと決めていた。
まずは──
「えーとぉ……こんにちは」
ズッコケるハナ。私の(敵に対する)第一声がこれだなんて、想定外もいいところだと思っているんだろうな。
「ななッ、なに
もし、そこにツッコミ用のハリセンでもあったならば、ハナは迷うことなく私に1発ぶちかましていたかもしれない。
「いやー、やっぱりね、誰かに会ったらコレ基本だろうってコトで」
「相手が魔物でも?
すると、その巨漢の口が
「なんだ? お前たちは」
人間の言葉でやりとりができるから、ありがたい。こちらの用件をスムーズに相手に伝えられる。私は奴と目が合うように、見上げてこう言った。
「アナタを
「……あん?」
「聞こえなかった? もう1回言おうか?」
「……オレ様の聞き間違いでなければ、お前たちがオレ様に排除──つまりは倒されに、わざわざ出向いてやったと……?」
違う違う、と私は小さく否定してから、こう続けた。
「逆よ逆。倒されるのはそっち。なんで私たちが負けるコトになってるのよ」
この言葉に、ゴブリンは怒るどころか、
「フン、この姿を見ても、オレ様をただのゴブリンだと思っているんじゃないだろうな? ナメてかかると必ず後悔するぞ。オレ様はなぁ……力、守り、スピード……あらゆる面で、他の奴らより
得意げに、自分の特徴を話してくれている。が、後半は違うでしょ。お前が畑を好き勝手に荒らしているんだろうが(あぁ、つい言い方が……)。
「それは結構なコトで。でもね、こっちがそれ聞いたからって、何もせずに退散……なんてするワケないし。大きくなっちゃおうが何だろうが、
「ちょっとちょっと、あまり変なコト言って怒らせちゃったりでもしたら、やばいんじゃないの?」
挑発する私を案じたのか、ハナが止めに入った。私は『心配しないで』という意味でウインクをした。
それでも、ハナの不安は消えない。仕方なしに少しの間だけ、2人で小声で話していると、
「なにコソコソしてるんだ? オレ様に聞かれちゃマズいことでも話しているのかぁ? おい、そこの赤髪、教えろ」
「いっ!? いや、別に、何ってほどのことでも……」
こいつ……ハナじゃなく私に言えよ、まったく。
「どうした?
ゴブリンが、指をポキポキ鳴らす。戦闘の準備か。
「オレ様に隠し事は無しだ。どうしても教えられないというのなら、まずはお前から
ゴブリンの視線は、あくまでもハナに。これはいけない。なんで彼女に目をつけるかなぁ?
「そ、そんな──」
「それはないわね」
ハナは
「
全員を取り巻く空気の質が変わった。
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