第6話 はじまりの日(1)
「そういやソラってさ、帰ってきてから今日で何日
ハナが話題を変えてきた。
「ん? えっと……」
私は指を折り数えてみる。すると、
「あっ、8日も経ってる!?」
「なぬッ、約束の期間、過ぎてるんやないかーい!」
1日オーバーしていたことに、
何をかというと、私がギルド
何かやらかしたが
私は剣術の修行のため、11歳の時に家を出た。それから帰ってくるまでの3年間で両親が私のことを思い出さない日はなかった──と、帰郷後に何度も聞かされた。特に、お母さんは態度や行動がわかりやすく、食事をうっかり3人分用意してしまったこともたびたびあったとか。部屋の換気をしたり
そのお母さんはというと、私が帰ってくると我先にと駆け寄り、成長した私のことを強く抱きしめてくれた。このままどこへも行かせないという気持ちが伝わってきたのだが、そうはいかないのだ。
3年ぶりに自室で寝て、次の日。私としては、もうどこかへ出かけたかったのだが、お母さんに
お父さんが、私の名前が入った冒険者用身分証明カードを作ってくれた。それから、お母さんの気持ちも少しは察してやってほしいと言われた。私はカードを受け取りはしたが、なんだか動きづらくなっていた。仕方ないので、しばらくの間は家にいてあげると言った。するとお母さんは、まるで子供のように喜んだ。
引きこもり生活は
それから時が経ち、今日。数えてみたら、7日間どころか8日間働いていたことが判明したのだ。
「あー、1日
思わず脱力。
「マスターに言ってきなよ。多分忘れてるよ。ソラが早めに動けば、今日にも冒険者デビューできるかもしれないんだからさ」
そうだ。だら〜んとしている場合ではない。
「私はね、ソラと一緒に冒険できるのをずっと楽しみにしていたわけよ。2人でいろんな所を旅して、
ハナはそこまでで発言をやめたが、その先はなんとなく想像できた。さて、どこまでなら現実的と言えるか……。落ち込ませてはいけないので、私は否定的な言葉は口に出さない。
「私と行きたいだなんて、
「よく言った! ならばマスターと話をしてくるがよいぞ! 私はここで待ってるからね⭐」
「よーし……」
どうか、冒険の許可が
3分後。私は
「やったー! 今日からソラと一緒だー!」
ハナは両手を上げて喜んだ。
「うんうん。思えばこのために、3年も
「えらーい! メチャクチャ強くなってたらもっとえらーい!」
ハナったら、私以上にゴキゲンになってないか?
「どうだろうね。……あ、そういえば」
「ムムッ、何か問題発生?」
「問題っていうか……。冒険者になった以上、自分のごはん代は基本、自分の力で
「そりゃまぁ……そうね」
中には軍資金としてくれる人もいるかもしれないが、私はできれば甘えたくはない。その私の
「私、お金持ってないんだわ。
「そういや私も、お
そしてハナは立ち上がった。私を見て、プラス一言。
「ソラも一緒にね」
私たちは掲示板をチェックしに行った。他の冒険者も見に来ていた。
「簡単なのはラクな分、報酬がショボいからねー。だいたい、そういうのを取っちゃうと初心者が泣くから下手に選べないし。かと言ってコレはねー。なんか
私は首を縦に振った。
「だからね、初心者と中級の間の私はこの辺の……ほら、これなんか銀貨20枚。こういうのを
依頼書は数多くあれど、必ず自分に見合ったものを選ぶ。これが基本だとハナは言った。
今回は、ハナが私たちに適したものを選んでくれるという。ある程度経験を積んでいる彼女に、ゼロからスタートの私が加わったので、報酬が安めのやつにするそうな。腕試しに良さそうなのを見つけてくれるようだ。
ハナ……というより、私に合わせて? だったら、決定権は私にもある……よね? 何か……何か私にピッタリな仕事は、この中にないだろうか?
と思っていたら、あった。
「コレに決めた!」
私はその紙をハナに見せた。
「ほうほう、これはこれは良いのを見つけましたなぁ……って、待って待って。そりゃさ、報酬はオイシイよこれ。けどねアナタ、さっきもちょろっと言ったけど、よーく読んでみなって! こんなの、ベテランさんじゃなきゃ無理でしょー! 私はまだ全然そういう
ハナは、それはもう
『王都から東にある森で、巨大化
「う〜ん、私にはちょうど良さげに見えるんだけどなぁ。300枚よ? それだけ貰えたら、もうひもじい思いなんてしなくていいだろうし」
「誰も、普段からひもじいとは言ってませんって」
私はハナに、巨大化したゴブリンとやらを見てみたくはないのか
「……どうよ? 私は
「わ、私は……まぁ、どちらかといえば、見たい……かなぁ。見るだけならねッ! それ以上のことは
では、決定ということで──
「それじゃ、私の初仕事はコレでいこう」
手続きをするために、私は受付カウンターの方へと
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