第4話 いいものを見せてもらいました!
ゴオオ……と燃える音に混じって、敵の苦痛を
次でとどめを刺したいと思ったハルカさんが、レンさんと代わるように地竜と向き合った。
奴は
太陽を隠していた雲が、風に
「さっきと同じ光線か来なきゃいいんだがな」
ガイさんが不安を
「そうしたら、あんな至近距離からでは、
レンさんも心配を隠せなかった。ハルカさんは聞こえないフリをしたらしい。
いきなり正面からというのはやめた方が、とガイさんは提案したが、ハルカさんはそれは受け入れなかった。
地竜は、そんな彼女を排除するつもりで、まずは顔を少し震わせた。光線を撃つための準備の動作だったのではないかと、ハルカさんは思っていた。
3人プラス1体の、周囲の空気の流れが変化した。できれば高エネルギーの光が見え始める前に、弱点の部分をひと突きしたかったハルカさんだったが、そこは間に合わなかった。地竜の口内で、白い光がジワジワと集まり大きくなっていった。
ハルカさんは回避行動をとらなかった。余計なことは考えたくなかったんだとか。傷は隠れてしまったものの、場所は正確に把握していた。やることはただ1つ。それを果たすために、強い思いを剣に
「おい、マジで危ねーって!」
「いや、もう何を言っても遅いでしょう。……ともかく、ハルカを信じましょう」
地竜が力を
そこそこ
「ゴガアアアアァァッ!!」
地竜はその日一番の大声を上げた。結局、外に放たれなかった光は、奴の口の中でスゥーッと収縮していき、やがて消えた。
ハルカさんが剣をズボッと抜くと、古い傷の上に新たな刺し傷ができていた。
巨体は倒れ
「……やったのか?」
ガイさんが
「そのように見えますが……油断は禁物です。演技かもしれませんからね。
「やぁね、慎重になりすぎなんじゃない? レンったら。もうすぐ日が暮れることだし、早く帰りましょ。取るもの取って」
言ってハルカさんは、
そっと角に
緊張はした。1度、コクリと息を飲み、
相手は絶命しているとはいえ、(ハルカさんの)技術的な意味で手こずるだろうかと一行は思っていたが、意外とあっさり、それは頭部から離された。
ハルカさんはようやく剣を
「おおー、やったぜ、おい!」
「完全に、我々の勝利ですね」
3人は、喜びを分かち合った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「……というわけでありまして」
と、ハルカさん。
私は想像力をフルに働かせて、彼女たちの戦いを頭上に思い描いていた。そのうち、その世界から抜け出せなくなっていた。
「ソラ!」
──ハッ!
我に返ったのは、ハナが気持ち大きめに私の名前を呼んだ時だった。
「あぁ……ゴメン」
「もう、なに岩みたいに固まってんのよ。ここまでの話、ちゃんと聞いてた?」
「聞いてましたよ、それも全力で集中して! 私に
「あっ、そうよね」
私とハナは、ハルカさんの方に向き直した。
「うん、やっぱりハルカさんたちは
私は身を乗り出しつつ
「もちろんよ。あの人、たいそうビックリしてたわ。本当にあの竜を倒す人が出てくるなんてとか、普通の冒険者とは違うんだろうなとか。私は、自分たちのことは
ハルカさんが話しているのをよそに、そわそわするハナ。何かを考えている? 言いにくいことなのかな? 私は『あること』に期待しているのだけれど、私とハナが同じことを考えているのかどうかはわからない。とりあえず、私から言ってみようかな──と思っていた時だった。
「それで、その人はね、業界の中では変わり者なんて言われているらしいんだけど、腕は確かよ。一晩かけて、結構良いものを作ってくれたわ。……見る?」
キターーーー!
これだよ、これ! 私が期待していたことというのは! ハナも、口元を手で押さえて「え、マジ?」と小声で言っている。彼女もやはり同じことを……! ハルカさん、実は私たちの心の中を察していたのかな?
私たちの返事はもちろん、
「見る!」
「見たい!」
こうして私とハナは、ハルカさんの新しい武器を見せてもらうこととなった。
鞘に収まった状態のそれを手に取るために、私はずっと持っていたトレイをテーブルの上に置いた。
大きさは、一般的なロングソードほど。やはり、
持ち主の許可を得て、鞘から出してみる。見慣れない黒い刀身は実にスタイリッシュで、まるで鏡のような光沢をも持ち合わせている。決して派手すぎず、ハルカさんという人物が扱うにふさわしい、
これが『
「……かっこいい」
先に、ハナが率直な感想を言った。
「コレ作ってもらったとか、
値段をつけるとしたらいくらになるのか。この世界で主に流通しているのは銅貨と銀貨だが、もしかしたら金貨の出番が来るかもしれない。私はそんなもの持っていないが。
そういったものを見せてもらったからといって、私もハナも、変にキャーキャー
私たちは屋内にいるので、剣を借りて振り回すことはできない。まぁ、外にいたとしても、なんとなく遠慮してしまうんだろうな。かと言って、街を囲む壁の外側で、適当な魔物で試し斬りをしたい、あるいはハルカさんにしてほしい──とも頼みづらい。この辺には
そもそも、このギルドで最も有名な冒険者であるハルカさんから(彼女たちの)経験談を聞けるなんてことが、一種の
私もハナも、これ以上は望みを口にしなかった。黒いといっても
私はお礼の言葉を
「苦労して手に入れたんだから、長く使いたいものね。もっとも、私は物を大切にする方だから、その自信はあるけど」
ハルカさんはそう言いつつカップのお茶を飲み干し、「さて──」と気持ちを切り替えて立ち上がった。
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