第2話 憧れの人から話を聞けたよ!(2)
地竜の視界に3人がバッチリ入っても、
ガイさんはその
当てるだけなら簡単だった。が、そこから先の段階には相変わらず進めなかった。
彼は3人の中で、最も腕力がある。その点を活かして、そのまま勢いを緩めずに長い刃を押し込み、敵の身体に浅くてもいいからと傷をつけようと頑張ってみた。
結果、鱗に深さ2ミリメートルほどの
「おいおい、結構力入れたつもりなんだがな……」
「まるで何事もなかったかのような顔をしているわね。とりあえず、私たちの存在には気づいてもらえたようだけど」
その時、もう1つの人影が動いた。
「僕の出番ですね」
紺色のサラサラ髪で
「貴方たちのなまくら刀では何かと時間がかかって、効率的にも良くないでしょうから……ここは僕が、できうる限りの火力をもって、奴を仕留めてみせましょう」
いらぬことを言われて、ハルカさんは、やはり自分もガイさんと一緒に武器を買い換えた方がよかったかしらと、やや後悔したそうで。
「俺のはなまくらじゃねーぞ」
ガイさんは文句を言ったが、それに対しての返事は来なかった。
魔術士──
「ここ最近は敵の質がイマイチで、物足りなさを感じていたのですが……このような歯ごたえのある奴が相手とならば、
今すぐにでも大きな力がその身に降りかかってくるかもしれないという時に、地竜は金色の瞳で人間たちを見
「よーし、やっちまえ!」
「期待してるわよ」
レンさんの魔力は
「では、その角……折らせてもらいます」
魔法陣から放出された、眩しさをも伴う激しい稲妻が、猛烈なスピードで地竜めがけて宙を
全身を貫くような衝撃が、休むことなく巨体にまとわりついた。奴はこの時、悲鳴は上げなかったらしい。我慢強いのか、それとも効いているというのはレンさんたちの思い込みで、実際には……だったのかなぁ?
私はこのことについて、ハルカさんに
レンさんの攻撃が止まない中、ハルカさんはハッとして彼に注意の言葉を投げかけた。
「ちょっとレン、あまりやりすぎて、例のモノを台無しにしないようにね!」
あぁ、そうだよね──
地竜を倒したとしても、肝心のものが粉々に──など持ち帰れない状態になってしまっては、それまでの努力が無駄になってしまうのは確かだ。誰もが恐れをなす暗黒地竜と
「わかってますよ。僕はそこまで
1分以上が経過して、ようやくレンさんは手を下ろした。
雷が消え、敵の顔面に目をやると、瞳は閉じられていた。巨体はピクリとも動かない。
「あら……おしまいかしら? こうしてみると、思っていたほどではなかったわね」
「なーんだ、俺らの圧勝じゃねーか。噂は所詮、噂にすぎねーんだな。ハハハハハ」
レンさんは軽くひと呼吸ついてから、ハルカさんにこう言った。
「角のサイズからして、あまり大ぶりな武器は作れない。あの
「いいぜ。真っ黒な剣ってのは、俺にはどうもなぁ……って思ってるからよ」
へぇ。さすがガイさん、心が広い。
「それはそうと、角の根元を見てください。良い具合にヒビが入っているでしょう? ここまでくれば……あとはわかりますね?」
レンさんとガイさんは、そこで退がった。
あれ? 角はレンさんが折るんじゃなかった? 私が言ったらハルカさんは、「“レンが”折るとまでは言ってないわよ」なんて返してきた。主語を抜くなー。てっきり、雷の術でポキッといったのかと思ってしまったではないか。
そういうわけで男性2人は、ハルカさんに角を折る役を与えたのだ。
「私がやっていいのかしら?」
「ええ、もちろん」
「いいよ、スパッとやっちまいな」
仲間たちがせっかくそう言ってくれたので、ハルカさんは改めて剣を握り直し、倒れている魔物に近づいていった。どうか目を開けないでと願いながら。
後ろに立つ者たちが見守る中、勝利の証をいただこうとしたその時。
ギロリ。
大きな金色の瞳が、ハルカさんを睨みつけた。
「!」
彼女は
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「そ、それって、まだ生きてたってコトですかぁ!?」
水色のローブの少女──
「そう。実は全然ピンピンしてたのよ。あの時は心臓が
ハルカさんは、すっかりぬるくなったお茶を一口。
「国一番の魔術士って言われている、あのレンさんの術をくらってもなんともないって……めんどくさっ」
私も、何かを言わずにはいられなかった。
「本当、
ハルカさんによると、あの暗黒地竜という魔物は、ただ格別に硬いだけの存在ではなかった。
移動速度は意外と速く、
攻撃力も無視はできない程だとか。太い前足から繰り出される爪で大地を
「そんなのに、よく勝てましたね……」
ハナが、驚きの表情を
「うむむ……逆にいい言葉が出てこない」
私も、今は笑顔は作れなかった。
「長い戦いだったわ。今でこそ笑って話せるけどね」
ハルカさんの話は、もう少し続く。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
3人は
地竜にまともなダメージを与えたくとも、強固な鱗が
その場所に来たばかりの時は、太陽は真南にあったらしい。が、それもだいぶ西へと
日没までに決着をつければ……とはいったものの、その時は目の前の敵の倒し方が根本的にわからなかった。ハルカさんは男性陣に、まだ戦えそうか
「おう、まだまだ
「右に同じです」
良い返事を得られたので、ハルカさんは2人に指示した。ガイさんには尻尾を狙うようにと。レンさんには再度、できる限り強力な術の用意をと。
「よっしゃ任せろ! うおおおおッ! 今度こそ!」
闘気を
勝機を見つけたかのようだったが、気を
「ぐぬぬぬぬ……」
尻尾はとらえていた。刃が幾分か沈んだ。
「いけそうな……気がする……!」
ガイさんの
押して押して、押しまくる。
ズブリ。グリッ。
更なる手応えが。
「いや、『気がする』んじゃねぇ。いくんだ! 俺が……やってやるんだ──!」
そして──
「グオオオォォッ!!」
地竜が悲鳴を上げた。尻尾が──切断されたのだ。
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