第8話 翼をください-8
裕美さんへ
突然のことで、ご挨拶もできませんで申し訳ありません。
私はアメリカに行くことになりました。
手術に行くのです。
以前から、勧められていたのですが、勇気がなくて(それと、アメリカに行くこともこわかったので)、なかなか決心がつかなかったのです。
最近ではずいぶん簡単に直るとのことでしたが、それでも手術はしなければならなく、日本では順番があるので遅くなってしまうのです。
これ以上遅くなると、受験にも影響するということで、どうしてもいま行かなければならなかったのです。
それでも、決心がつかなかった私は、わがままを言って、緑ヶ丘学園に転校してきたのです。
お兄ちゃんもお姉ちゃんも通った(通っている)学校に行きたいと、わがままを言ったのです。
少しだけ通えば、絶対手術を受けると、半分嘘をついて転校してきたのです。
この学校は、私が想像していた以上にすてきな学校でした。
男の子がいることが、楽しく思えた理由だったかもしれません。
でも、裕美さんに会えて、私は本当に変わったと思います。
裕美さんは、こんな言い方をすると怒られるかもしれませんが、頼りがいのある人で、魅力的な人でした。
一人で立っている、という印象がすてきでした。
私も自分の足で立ちたいと思ったのです。
でも、いままでの私は過保護の中で育ったので、何もできそうもありませんでした。
だから、手術を受けにいくことにしたのです。
きっといまなら飛べると思います。
きっと裕美さんのようになれると思います。
努力します、裕美さんに恥ずかしくないように。
帰ってきたら、またお話相手になって下さい。
また、叱ってください。
きっと、元気になって帰ってきます。
由美子
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