エピローグ

 あれから3年、私たちは今、ドイツにいる。

 シュヴァルツヴァルト、つまりドイツにある本物の「黒い森」を見たり、ビールを飲んだり(驚いたことにアリンは私より年下だった。今年になってやっと飲酒が出来るようになったみたいだ)と楽しく暮らしている。

 私はまだ世界が怖い。

 男か女か、世界では訊かれることがこんなにも多いとは思わなかった。そんなこと訊く必要あるのか、と思う場面で出くわすものだ。この手の質問は。私とテ・アリンがカップルなのか違うのか、見極めようとして眼鏡の下から覗いてくるような人もいた。

 でも私の横にはアリンがいる。胸を張って、いつも笑っているアリンがいる。

 叔母が言うほど人間は怖くは無かった。怖いけれど、怖くないなんて変だ。でも人間は、きちんと理解しようとしてくれる人だっている。傷つけるだけが人間じゃない。綺麗ごとってやつかもしれないけれど、私は綺麗なことだけを見ていたい。

 私が主人公の物語には、楽しいことしか要らない。必要ない。

 アリンとも上手くやっている。

 私たちは毎晩シャワーを浴びた後、ベッドで裸になる。

 そしてアリンは私の、私はアリンの胸やあそこに手を当てて、ことを確かめる。私たちが完全であること、私たちが世界で特別な体を持っていることを確認する。アリンのなめらかな体を、私は十の指と舌を使って、そこにあることを確かめていく。私たちは気持ち良くなることはできないけれど、満たされた気持ちで眠りに落ちる。


 私は、私の物語をつくっていくんだ。

 アリンと二人で。

 これは、どこにも属しない、自由な二人の人間の物語。

 A Tale of Independents、「無所属者たちの物語」。

 さよなら、またどこかで。




[A Tale of Independents 完]

 

 

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A Tale of Independents Yukari Kousaka @YKousaka

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